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「ニッポンの介護現場は、もう限界だ。かならずどこかで破綻する」 高齢者ビジネスの闇をえぐる社会派ミステリー!相場英雄『マンモスの抜け殻』インタビュー・・・という記事の紹介です。

マンモスの抜け殻は知らなかったので、今度本屋さんで探してみようかな・・・。

あぁ、しばらく本屋さんにも行ってないなぁ・・・
読もうと思って積んである本があるなぁ・・・なんて思いながら、介護現場について外からの目線で面白そうな内容だったので紹介します。

――介護問題を描こうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

相場 朝と夕方に犬の散歩をしていると、介護施設のミニバンをたくさん見かけるんです。そのほとんどが、車体の部分がボコボコにへこんでいる。施設の名前が書かれた車は、ある種の『看板』であるはずなのに、修理をせずに公道を走っている。この業界はどうなっているのか、と疑問を感じたんです。

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実際、洗車が行き届かない送迎車とか、修理が後回しになっている送迎車は結構ありますよね。

僕自身がデイの管理者や拠点の管理者をしていた時に凄く疑問に思ったのが、多すぎる公用車をぶつけたり傷つけたりする報告です。
中には報告ないけど傷ついたり凹んだりした事もあって本当に頭を悩ませました。

恐らくですけど、会社の車だし自腹が痛むわけでもないという状況なので、自分の車を運転するよりも乱暴・粗末に扱っていた結果なんだろうと思いますが、新車を納入した翌日に民家の壁に激突してラジエーターを含めて前面が全壊した事故が起こった時は流石にキレそうになりました。

高齢ドライバーさんだったんですが、社会的にも高齢者の運転については結構な問題になってきている状況で、高齢者を送迎するドライバーの高齢化も見逃せない課題で、リスクを考えた時に高齢ドライバーを送迎担当で雇うのではなく、現役の介護職が送迎も担当した方がリスクは回避できそうですが、結局現場から介護職がとられてしまうので、その他業務に支障が出たりするわけで、本当に複雑な課題であり解決困難な状況でした。

実際、一般的にはこうなんですよ・・・”ある種の『看板』であるはずなのに、修理をせずに公道を走っている。この業界はどうなっているのか”・・・だけど、実態はもうそこまで手が回らない状況なんです。洗車自体もなかなか出来ないんじゃないかなぁ。

――取材した結果、介護業界の現状はどうだったのでしょうか。

相場 新型コロナへの不安から介護サービスの利用控えが進み、2020年のこの業界の倒産件数は過去最多の水準でした。事業者の経営も厳しくなり、労働環境も悪化しています。過酷な労働条件のなかで、職員たちは疲れきって、車をぶつけることも多くなり、それを修理する余裕もないのだと。スタッフが追い詰められた介護施設に、果たして、自分の両親を任せられるだろうか、という不安をいだきました。

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まさにその通りというか、これが世間一般の意見だと思います。
経営も人材もギリギリ。
そして人材については、今後はどんどん減っていく見込みの方が強いわけです。

――そのうえ、この国は少子化が進んで、超高齢化社会へと突入しています。

相場 厚生労働省の推計によると、65歳以上の高齢者の数は、2040年度に3900万人と、ピークを迎え、約280万人の介護職員が必要となるそうです。約70万人の人材が不足するのです。介護職員の平均給与は、月給で約29万円と、全体の水準から6万円程度低いとされています。

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この問題も、ずっとずっと言われ続けられてきましたが、まったく解決のめどは立たずにどんどん深刻になっています。

特に不足する介護職の数について、本当にどうするんだろうと思います。
単純にお給料が上がったら介護職が増えるとも思えないんですよね、実際にお給料は増えてきましたが、減る一方です。

――一方で、親の介護をするために、仕事を辞めて、故郷へ戻る人も多いと聞きます。

相場 まさにその通りで、介護、デイサービスというのは、子供を保育園に預けるのと同じだと思うんです。介護が必要な親を、施設に預けられないと、仕事にも行けません。コロナ禍で、飲食業界の惨状だけが報じられてきましたが、介護業界もそうとう厳しいと実感しています。この国の最低限の暮らしを支える「社会保障の底」が抜けてしまった、と。

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介護離職やケアラー問題として最近は注目されています。
現状の介護保険制の根底に、親の介護は家族がするもの・・・という暗黙の了解があるので、ヘルパーでも家族がやるべき事なのでヘルパーでは出来ない支援が多くあります。その辺の考え方を今一度整理して変えていかないと本当にもう無理だろうなぁと思っています。

――新刊『マンモスの抜け殻』では、「都心の限界集落」というキャッチフレーズも、衝撃でした。本来は、極端な高齢化と人口減少が進んだ山間地の集落を指す言葉です。

相場 住まいの近くに古くからのマンモス団地がありまして、かつては夕方ともなると、子供たちの声が響き渡っていたんです。ところが今は、広場も静かで、団地の周辺道路には、介護施設の車が入れ替わり、立ち替わり停まっています。独居老人も多いため、孤独死の多発地帯でもあります。都心にある、かつてのマンモス団地が、そのころの活気を失って、抜け殻のようになっている。

都会で起きている現象は、数年遅れで地方にも波及する。つまりは、このマンモス団地の抜け殻は、ニッポンの縮図なんです。

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北海道の地方の地域では、マンションとかの老朽化で新しい集合住宅への住み替えが進んでいる所が多い印象ですね。

昔は商店なども沢山あったのに、今では近くに何もなくて、北海道という地域柄、どうしても移動距離が長くなるので車がないと不便で、そもそもそういう車ありきの公共交通の整備なのでバスや電車の本数も少ない上に、最近では廃線や縮小が進んでいて、高齢者にとって、車もつかえない、バスや電車も使えない、タクシーも減っている・・・という状況で、近隣にお店もなく出歩けない状況が増えてきていて、これはどんどん深刻化していくだろうと思っています。

――小説内では、介護業界で働く人が、「介護業界は、善意に溢れ、やる気に満ちた若者の心を監禁するんです」という言葉を発します。驚きました。

相場 介護問題に詳しい中村淳彦さんからうかがったフレーズです。介護職を志すのは、人のために働きたい、という真面目な人たちです。そこに付け込んで、善意あふれる、ふわふわした言葉で彼らを包みこんで、ある種、洗脳しているという状況もある、と。

政府も、「民間の力を有効に活用する」というキラキラとしたフレーズ、美辞麗句を並べたて、業界への参入障壁を低くして、実態は「民間に丸投げ」です。

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そもそもが、こういう社会保障制度を民間に任せて資本主義経済の中で競争させる事にした事自体が間違ってたんじゃなかろうかと思います。
だって、民間は利益追求するわけですから、それは経営的には悪くなくて当然なんですよ。だから誰かの為になりたいと思って介護現場に入って来た職員が搾取されやすくなるわけで、制度設計の段階でこの矛盾についてはもっと精査されておくべきだったと思います。

結局、利益率が高いから、という理由で介護報酬は引き下げられ続けてきたわけで、それは何でかというと、搾取しやすい制度設計にしたからじゃないかと思うんです。運営指導とかで色々現場の記録やマニュアルをチェックするのであれば、経営的な部分について、適切に介護職員へのお給料に配分されているか等も行政がチェックして指導してきていれば、ここまでの介護職不足や、介護報酬の削減にもなってなかったのかもしれませんしね。

記事で指摘されているとおり、国民生活で最も重要な社会保障制度を民間に丸投げしてきた結果、本当に様々な問題が出てきたのだろうと思います。

そこで、ある女性投資家を登場させました。有能な経営者の視点から言えば、老人が増え続けることが確実である以上、市場としては将来性がある、といえるのではないか、と。

この投資家は、介護業界への投資を決断します。周囲からは「無謀だ」と指摘されますが、彼女には「あるプラン」があるんです。小説の中の絵空事と言われるかもしれないですが、あり得ない話ではないと私は思っています。この業界にはまだ可能性がある、と。

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これは興味ありますね、早く読みたくなりました。

実際、僕自身もこれからの介護業界については多少なり未来があると思っていて、だからこそ起業したわけですけど、利益を追求するのではなく、利用者さんもそこで働く職員も生き生きと暮らせる生活の質を提供できる会社に育てたいと思っていて、それがこれからの社会に必要になっていくのだろうと勝手に思って始めた事なんですけど、そういう僕自身がこういう世界ならいいなぁと思えるモノが作れるように、いろいろ試行錯誤していきたいなと思っています。

しかし、本当にこれから先どうなるんだろう。

確実に今までよりも不便になるだろうし、欲しい物がすぐに手に入るような今のような状況ではなくなると思うので、そういう事が当たり前だった僕たちがこれからの新しい”常識”に順応できるかどうか・・・という事なんだろうと思います。

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