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あおいけあの取り組みに学ぶ。

今日は、あおいけあの加藤忠相さんが登別市の隣の室蘭市で講演をされるという情報をキャッチし、急遽創業メンバーで受講する事にしました。

創業メンバーは今のところ僕を含めて三人なんですが、二人ともかつて僕の下でデイサービスやヘルパー事業所で仕事を一緒にしていた仲間で、その時から、あおいけあの取り組みについては学習資料で紹介したり、僕自身が札幌で行われた研修会で加藤さんの講演を聞いて、その内容を伝達したりしてきて、その取り組みに共感してきたメンバーだったので、改めて一緒に事業所を立ち上げる上で凄く良い機会と思いました。

ヘルパー事業といえども地域での役割を広げられるような取り組みや、地域社会とのつながりを作る役割など、ぼやっとしていたイメージは持っていたのですが、講演を聞いてイメージが少しずつ具体的になってきたようにも感じました。

僕たちは僕たちなりに、やれることを形にしていこうという思いを強くする事ができました。

あおいけあの取り組みについて記事を紹介します。
認知症ケアの実践など、本当は当たり前のことなんですけど、それをしっかりと実践されていて本当に参考になります。
僕自身も、宅老所の取り組みに憧れて小規模多機能型居宅介護事業の立ち上げから関わった事がありますが、本当に勉強になる取り組みと思います。

まずあおいけあでは、敷地を取り囲む壁を物理的な意味で本当に取り払いま
した。あおいけあの事業所がある敷地は、住宅地と国道に挟まれたエリア。(図のオレンジ色の部分の)壁を取り払うことで、今まで大きく迂回して街道に出ていた住宅地の子供やサラリーマンがショートカットとして敷地内を通るようになりました。

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あおいけあ

壁を取り払う発想はあったとしても中々実行できないですよね。
その上で敷地内を自由に往来できるようにして地域と事業所の”壁”まで取り払ってしまう発想は中々できない事と思います。
そういう発想があったから、そこから多種多様な取り組みや繋がりが生まれたとも言えるよな、とも思います。

事業所の入り口の脇には漫画棚があります。駄菓子屋もあります。子供たちは、朝の待ち合わせ時に漫画を読んで友達を待ちます。帰りには駄菓子屋でお菓子を買い、中に上がって高齢者の方々と会話を交わすことが日常になっています。

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社会とのつながりは大切なので、それを準備するのではなくて環境を変えて自然にそういう繋がりが生まれるような仕掛けづくりは凄いと思いますし、うまいと思います。

介護施設なんだけど、そこには普通の生活や社会とのつながりがあるというのは理想的だと思いますし、そういう取り組みや活動は僕たちもやってみたい内容です。

あおいけあでは、例えばお鍋を一緒に作る際に「一緒に料理しましょう」というような呼びかけはしません。「こんにゃくは切ったほうがいいのか、手でちぎったほうがいいのか」と相談をします。しまいには、「男が台所に立つもんじゃない」と職員を押しのけて包丁を持ち調理を始める始末です。

ほかにも、あおいけあでは利用されている方が車のタイヤ交換をしてくれます。木々の剪定もしてくれます。前述の駄菓子屋も、商品の選定から戸棚の配置まで高齢の番頭さんがすべて取り仕切っています。

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自立支援ってこういう事だと思うんですよね。
こういうやり取りとか普通に楽しいですし、本人だって楽しいはずです。

人生の主役は本人です。
僕ら介護職は脇役で、本人の人生の中で主役である本人をいかにさり気なく輝いてもらえるようにするのが本来あるべき役割と思います。

これは、今日の講義でも改めて感じましたし、一緒に参加した仲間も同様に実感してくれました。

あおいけあで剪定をやってくれている方は、実際に庭師だった方。駄菓子屋も、まさに駄菓子屋経営をしていた方が行っています。タイヤ交換も同様です。

「アセスメントの際に、その人の職歴や今までのことはきちんと聞いているはずです。それであれば、この人は何が出来るのか、何が得意なのかを理解するのは難しくないはずでしょう。」

加藤氏の取組は、事業所の敷地内に留まりません。サービスを利用されている方々は地域の清掃活動などにも参加しています。「地域の清掃活動を手伝ってください」とお願いすると、「しょうがないねえ」などといいながらも主体的に敷地外の活動に参加してくれるのです。

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アセスメントも本来はこう活用されるべきですよね。
アセスメントの視点も同様です。
書類が必要だからアセスメントをとっているという事ではやはりその時間がムダになると思うので、こうしてちゃんと活用できる目的意識をもってアセスメントする事が重要だと思っています。

「花は施設で植えればレクリエーションです。しかし、地域へ出て例えば公園で埋めれば、それだけでこれはボランティア活動になるんです。」と加藤氏は語ります。

公園で花を植える中で、そこに来ていた親子から高齢者が「ご苦労様です」と声をかけられるといったことが起きている。広がる地域との交流、主体性の発揮。

「そしてこのとき、お年寄りは被介護者から地域資源になるのです。」

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社会資源という視点もあるとは思いますが、僕自身はこういうのってあって当たり前の事だと思います。
お年寄りだから、認知症だからといってさせないのではなくて、出来る事があればしてもらうというのは普通の事だと思っていて、その延長やサポート役として介護職の役割があると思っています。

「介護保険の目的とは何だと思いますか?」加藤氏は参加者に呼びかけます。

「介護保険法の第二条第二項で、保険給付の目的は何だと謳われているかご存知ですか?
要介護状態等の『軽減または悪化の防止』、つまり自立支援なんですよ」と。

前項の保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。
(介護保険)第二条 第二項

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この内容は加藤さんの講演ではよく紹介される内容で、加藤さんが介護保険の理念をちゃんと実行している事業所が少ない事に大きな疑問を抱いている事がよくわかる内容です。

行政も運営指導で書類がそろっているか等は細かく見てきますが、こういう自立支援の内容やケアの実態を見る事はほとんどないのも現状です。

書類さえ整っていたらそれでいいのか?・・・という疑問は僕自身もずっと抱いていた疑問です。

加藤氏の投げかけは熱を帯び、舌鋒はますます鋭くなっていきます。
「措置(老人福祉法)時代は、療養上のお世話が目的でした。
それが2000年、介護保険法が出来て目的は自立支援になった。
更に2003年には尊厳を支えることが掲げられ、2010年から地域包括ケアへと流れが移ってきている。

にも拘らず、未だに療養上のお世話に留まっている事業者が非常に多い!」

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今日の講演でも同様に大きな疑問があるとおっしゃられていました。
自立支援をちゃんとやらないといけないんです。
それは、書類が揃っていたら出来る事ではないと思いますが、最低限書類が揃っていないと問題になるので、どうせ作る書類なのであれば、ちゃんと自立支援の根拠になる、役に立っている書類であるべきですよね。

この問題に加えて今日の講演では、人口減少が引き起こす今後の日本独自の課題についても突っ込んだ話をされていて、この部分は本当に共感が大きかったです。

避けられない労働人口の減少、それに伴う経済の停滞、これをちゃんと見据えた上で運営を考えないといけません。
現状で人手が足りないと嘆いているのでは、おそらく今後の情勢は乗り切れないのではないかと改めて思いました。

今までと同じ事が通用しない状況が必ず来ると思います。

できない部分をただ埋めてあげるのがケアではない。
自立支援を促していくのがケアする人の役割だ。
間違っても自分がされたくないことをやっていてはいけない。

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本当に基本的な事なんです。
だけど、これがとても重要だと伝えていかざるを得ない状況であるという現実も事実なんですよね。

スタートとは、自分の中で譲れないこと。価値基準。トップゴールとは、それによって実現したいこと。
加藤氏にとってのスタートは、「介護とは何をする仕事かという本質の追求」と「人にされたら嫌なことは人にしない」というもの。
そしてトップゴールは「よりよい人間関係の構築」、そして「QOLとQOD」だと語ります。

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あおいけあの実現したいことは、よりよい人間関係の構築との事です。
職員同士の連携でもここをしっかり重視しているような解説がありました

正しい事を言っていたとしても、人間関係がよくなければ伝わらないですよね、という言葉は共感しかなかったです。

職場環境づくりにもつながりますし、やはりこのポイントは非常に重要であると思いました。

価値観を浸透させ、効果的に機能させるためにはいくつかの重要な要素があります。

その最たるものは採用です。加藤氏は、スタートを同じく認識できる人を採用するよう心がけているとのこと。また求める人材は、専門性を最大限発揮しつつも「専門家の鎧を脱いで仕事ができる人」とのことです。

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目標や介護という仕事に対する価値観を同じにできる人を集める事は最重要のポイントですね。
専門家の鎧を脱いで仕事ができる人というのは面白い表現です。
個人的には、人間対人間としてやり取りできるかどうか、という事かと思っています。

次に必要となるのが、個々人の自律的な働きがトップゴールに向かうベクトルからずれたときの対応。つまり教育です。「もし目指す方向から外れた行動があれば、それは都度学びの中で改善していく。」

あおいけあでは、定期的に勉強会を実施しています。この勉強会は、外部の方でも誰でも参加することができます。毎回講師に、著名な実践家も呼んでいます。専門職としての見識を高めるためです。ただし、あおいけあの勉強会はそれだけに留まりません。
この勉強会では毎回必ず「従業員が発表を行う」場面が求められます。
聴衆として参加するだけでなく、自分の業務を自分で振り返り学びを得るため
そして自ら主体的な参加者として地域と関わっていくためです。

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定期的な集合学習が重要な事と、受動的なものではなくそこに主体的なアプローチを入れる工夫もあるのが良いと思います。
この取り組みは職場づくりでも大きな参考になりますよね。

あおいけあの取り組みを分かりやすく紹介している漫画ですので、もし興味があればご参照ください。

僕はこの漫画を学習資料として印刷して配って職員に読ませたりしています。

そんなわけで今日は改めての気づきや学びがあって本当によい講演の機会を得られてよかったです。

実際、元気も貰えました。


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