成人の軟部肉腫に対する緩和照射

Roeder F. Cancers (Basel). 2020. PMID 33153100
・成人の軟部組織肉腫に対する放射線治療、Review/Expert opinion
・緩和照射

・切除不能の局所進行性病変または転移を有する軟部組織肉腫(STS)に対する標準治療は組織に基づいた全身療法である。
・しかしながら、局所病変の進行が抑制できないため、疼痛や局所の合併症のために重篤な症状を呈することも多く、緩和的な放射線治療が適応となる。
・最近のオーストラリアの調査によると、局所進行性/転移性軟部組織肉腫(STS)患者の37%で(主に骨や肺、縦隔の症候性病変に対して)緩和的な放射線療法が行われていた(PMID 27403280)。
・軟部組織肉腫(STS)で緩和的な放射線療法(RT)が行われる患者の数は相当数存在すると推定されるが、軟部組織肉腫(STS)に特化した有効性や副作用に関する最適な線量分割スケジュールに関する文献の報告は非常に少ない。
・実際の軟部組織肉腫(STS)に対する緩和的な放射線療法においては、他のさまざまな腫瘍で確立された緩和照射のルールに基づいて行われているのが現状である。
・さまざまな線量分割が用いられているが、共通しているのは、少ない分割回数で、1回線量を多くし、総線量は少なめとしていることである。
・Tweenらより肉腫患者に対する緩和照射の大規模な報告がなされている(PMID 31635409
・この報告では105例の患者、137病変(軟部組織肉腫 114病変、骨肉腫 23病変)が解析されており、8~60Gy/1~28回の照射が行われていた(25の異なる線量分割レジメンが用いられていた)
・主な照射部位は脊椎病変(23%)で、主な症状は疼痛(70%)であった。
・主な線量分割は20Gy/5回(26%)であった。
・放射線療法3ヶ月後、軟部組織肉腫患者の70%、骨肉腫患者の55%で症状の改善が認められた。
・さまざまな線量分割レジメンの有効性を比較するため、α/β値を4として生物学的実効線量(BED)を計算したところ、低線量の領域では線量が増加するにしたがい症状の改善率が上昇し、BED 50Gyでプラトーとなっていた。
・20 Gy/5回(BED 40Gy)の照射が行われた患者の症状改善率は50%であったのに対し、コホート全体の症状緩和率は70%であった。
・Soyferらからは、高線量の寡分割照射の治療結果が報告されている(PMID 20224682)。
・彼らの報告では17例の患者に対して39Gy/13回(BED4 68Gy)の照射を行い、治療6ヶ月後時点で80%の患者に持続的な疼痛コントロールが得られおり、グレード1以上の毒性の発生はなかったと報告している。
・Jansenらは、軟部組織肉腫(STS)による脊髄圧迫に対する緩和照射(20Gy/5回 または 30Gy/10回)が行われた4例を報告している(PMID 27381619)。
・3例で疼痛の緩和が得られていたが、運動機能の改善は全く認められなかった。
・Merimskyらも軟部組織肉腫(STS)による脊髄圧迫に対する緩和照射を行った19例を報告している(PMID 15050325
・症状の緩和率:疼痛 87%、感覚障害 53%、運動障害 43%、括約筋障害 0%。
・まとめると、症候性病変を有する軟部組織肉腫(STS)の大部分では、緩和的な放射線治療により短期的な症状(特に疼痛)の制御ができる可能性があり、このような場合には考慮したほうがよいと思われる。
・これまでのデータに基づくと、若干長期のスケジュールを用いた中等度の線量増加により症状改善率を高め、持続的な症状コントロールができる可能性があり、患者選択を行ったうえで考慮してもよいと思われる。


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