胸腺腫/胸腺がんに対する根治的放射線治療


Liu J et al. Clin Lung Cancer. 2022. PMID: 35941046


医学的に手術不能な胸腺がんに対する根治的放射線治療

・導入療法後に依然として切除不能な病変や医学的に手術が行えない患者に対しては(化学)放射線療法を行うことがある。
・これまでに2つの前向き臨床研究結果が報告されている(Loehrer 1997, Fan 2020)。
・1997年に報告されたLoehrerらの報告では、切除不能の胸腺腫患者23例に対して、シスプラチン/ドキソルビシン/シクロフォスファミドによる化学療法後に放射線治療が行われた。
・放射線治療は2D techniqueにより54Gy/30fr(1回線量 1.8Gy)の照射が行われた。
・客観的奏効率 70%、完全奏効率 23%。
・5年無再発生存率 67%、5年全生存率 70%。
・グレード3+毒性発生率は61%で、主な毒性は血液毒性と消化管毒性(嘔気/嘔吐)。
・Fanらの報告では、56例の切除不能胸腺腫/胸腺がんに対するシスプラチン/エトポシド併用化学放射線療法が行われた。
・放射線治療は強度変調放射線治療により60 Gy/30回(1回線量 2 Gy)の照射が行われた。
・客観的奏効率は86%の患者、完全奏効率 0%。
・5年無増悪生存率 30%、5年全生存率 56%。
・Fanらの成績はLoehrerらのものより不良であるが、Fanらの試験ではIV期の患者が多く(86% vs. 4%)、胸腺がんの患者が含まれていたことが影響している可能性がある。
・これらの2つの研究結果は、局所進行性の胸腺がんで手術が行えない場合には根治的化学放射線療法が安全で有効な治療法となることを示唆している。
・医学的に手術不能な胸腺がんに対しては、根治的化学放射線療法を支持する前向きエビデンスが存在する。
・ガイドラインでは医学的に手術が不能な胸腺がんに対して60-70 Gy(1回線量 1.8-2 Gy)の照射を行うよう推奨している。
・医学的に手術可能な患者で、導入化学放射線療法後に依然として切除不能な場合には、同じ治療体積に対して full dose の照射を行うことも考慮される。
ITMIGでは、毎日 kV imageによる画像誘導下放射線治療(IGRT)を行う場合には、肉眼的腫瘍体積(GTV)に5-10 mmのマージンを加え臨床的標的体積(CTV)を設定し、さらに5-10 mmのマージンを加え計画標的体積(PTV)を設定するよう推奨している。
・予防的リンパ節照射は一般的に不要。
・もしリンパ節領域や縦隔からの再発リスクが高いと考えられる場合には、これらの領域に対する予防照射を行ってもよい。


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