進行期肝細胞がんに対する免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用へ放射線治療を追加することは治療成績の改善につながるか?

Ning C et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2023. PMID: 37433375

<背景と目的>
・進行肝細胞がん(HCC)患者に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と血管新生阻害薬の併用の有効性には限界がある。
・全身療法と放射線治療(RT)を併用することによりこの問題を克服できる可能性がある。
・今回、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と血管新生阻害薬の併用が行われた進行肝細胞がん(HCC)患者を対象として、放射線治療の効果を調査した。

<対象と方法>
・後ろ向き観察研究(中国)
・2018年8月-2022年6月の期間に、Barcelona Clinic Liver Cancer stage Cの肝細胞がん(HCC)に対し初期治療として免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と血管新生阻害薬の併用が行われた194例のカルテを解析した。
・併用療法開始後8週以内に腫瘍栓または症候性の転移に対して放射線治療が行われた患者を放射線治療群(RT群)、行われなかった患者を非照射群(NRT群)に分けて比較を行った。
・選択バイアスを軽減するため傾向スコアマッチング(PSM)を用いた。
・主要評価項目:無増悪生存(PFS)および全生存(OS)。
・副次評価項目:局所無増悪生存(LPFS)、照射野外の無増悪生存(OutPFS)、治療関連有害事象(TRAEs)。

<結果>
・今回の研究に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と血管新生阻害薬の併用が行われた進行期肝細胞がん患者76例を組み入れた。
・放射線治療群 33例、非照射群 43例。
・傾向スコアマッチング後、29組のマッチしたペアを比較した。
・経過観察期間の中央値は15.5ヶ月。
・放射線治療が行われた主な部位は、腫瘍栓(55%)、肝外の転移巣(48%)。
・無増悪生存期間の中央値は、放射線治療群(RT群)8.3ヶ月、非照射群(NRT群)4.2ヶ月(p<0.001)。
・全生存期間の中央値は、放射線治療群(RT群)未到達、非照射群(NRT群)9.7ヶ月(95% CI 4.1-15.3)(p=0.002)。
・客観的奏効率:放射線治療群(RT群)75.9%(95% CI 56.5-89.7)、非照射群(NRT群)24.1%(95% CI 10.3-43.5)(p<0.001)。
・病勢制御率:放射線治療群(RT群)100%、非照射群(NRT群)75.9%(95% CI 56.5-89.7)(p=0.005)。
・局所無増悪生存期間の中央値:13.2ヶ月(95% CI 6.3-20.1)、照射野外の無増悪生存期間の中央値:10.8ヶ月(95% CI 7.0-14.7)。
・放射線治療(RT)は無増悪生存(HR 0.33, 95% CI 0.17-0.64; p<0.001)および全生存(HR 0.28, 95% CI 0.11-0.68, p=0.005)の有意な予後因子であった。
・治療関連有害事象(TRAEs)の発生率は両群で同様のものであった。

<結論>
・進行期肝細胞がん(HCC)患者において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と血管新生阻害薬の併用のみで治療された患者と比較して、放射線治療が行われた患者では病勢制御や生存成績が良好な結果であった。
・免疫チェックポイント阻害薬、血管新生阻害薬および放射線治療の併用の安全性プロファイルは満足できるものであった。


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