乳がんに対する乳房温存療法 vs. 乳房切除術

Vasilyeva E et al. Ann Surg Oncol. 2023. PMID: 37358683

・乳がんに対する乳房温存療法(BCT) vs. 乳房切除術(MST)

<背景と目的>
・ランダム化比較試験結果では、乳房切除術(MST)と乳房温存手術+放射線治療の併用による乳房温存療法(BCT)の生存成績は同等であることが示されている。
・病理学的な病期による後ろ向き研究では、乳房切除術(MST)と比較して、乳房温存療法(BCT)後の生存成績が良好であることが報告されている。
・しかしながら、手術前には病理学的な情報は得られない。
・実際の手術の意思決定を模倣するように、今回の研究では臨床的なリンパ節の評価を基に治療成績を比較した。

<対象と方法>
・カナダの地方の前向き登録データベースを用いて、2006-2016年の期間に、T1-3N0-3乳がんに対して乳房温存療法(BCT)または乳房切除術(MST)が行われた18-69歳の女性を同定した。
・患者を臨床的リンパ節転移陽性群(cN+)とリンパ節転移陰性群(cN0)の2群に分けた。
・多変量ロジスティック回帰分析により、局所治療法の全生存(OS)、乳がん特異的生存(BCSS)、局所領域再発(LRR)に与える影響を評価した。

<結果>
・13,914例の患者のうち、8,228例に対して乳房温存療法(BCT)、5,686例に対し乳房切除術(MST)が行われていた。
・乳房切除術(MST)が行われた患者でより高リスクの臨床病理学的因子を有していた。
・大半の患者では、術後にアジュバント全身療法が行われていた。
・臨床的リンパ節転移陰性(cN0)の患者群において、7,743例に対して乳房温存療法(BCT)、4,794例に対して乳房切除術(MST)が行われていた。
・乳房切除術(MST)が行われた患者と比較して、乳房温存療法(BCT)が行われた患者の全生存(OS)(HR 1.37, p<0.001)、乳がん特異的生存(BCSS)(HR 1.32, p<0.001)が良好であった。
・局所領域再発(LRR)には有意差を認めなかった(HR 0.84, p=0.1)
・臨床的リンパ節転移陽性(cN+)の患者群において、485例に対して乳房温存療法(BCT)、892例に対して乳房切除術(MST)が行われていた。
・多変量解析において、乳房温存療法(BCT)と良好な全生存(OS)(HR 1.46, p=0.002)および乳がん特異的生存(HR 1.44, p=0.008)との関連を認めた。
・局所領域再発には違いはみられなかった(HR 0.89, p=0.7)

<結論>
・現代的な全身療法が行われる時代においては、乳房切除術(MST)と比較して乳房温存療法(BCT)語の生存成績が良好で、臨床的リンパ節転移陽性(cN+)および陰性(cN0)、いずれにおいても局所領域再発リスクの上昇はみられなかった。


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