膠芽腫に対する術後化学放射線療法 ー 標的内同時ブースト(SIB)による線量増加は治療成績を改善するか? ー

Laprie A et al. Neuro Oncol. 2023. PMID: 37417948

<背景と目的>
・膠芽腫(GBM)では標準的な60Gyの化学放射線療法後に再発がみられることが多い。
・MRS (magnetic resonance spectroscopic imaging)により再発部位を予測できるため、新規に診断された膠芽腫(GBM)を対象としてMRS画像を基にした線量増加が全生存(OS)を改善できるかを解析した。

<対象と方法>
・多施設共同第3相試験(フランス)
・膠芽腫(GBM)に対して生検術または手術が行われた患者を、標準的な60Gyの化学放射線療法群(SD)と標準的な化学放射線療法60Gyに加えてMRS画像にて異常が認められる領域、腫瘍床および造影領域に対し標的ない同時ブースト(SIB)を用いた高線量(72Gy)照射群(HD)にランダム化を行った。
・テモゾロミドを放射線治療に同時併用し、化学放射線療法後に維持療法として6ヶ月間投与した。

<結果>
・2011年3月から2018年3月の期間に180例の患者が組み入れられた。
・経過観察期間の中央値 43.9ヶ月後、全生存期間(OS)の中央値は標準線量群(SD)22.6ヶ月(95% CI 18.3-27.8)、高線量照射群(HD)22.2ヶ月(95% CI 18.9-25.4)。
・無増悪生存期間の中央値は、標準線量群(SD)8.6ヶ月(95% CI 6.8-10.8)、高線量群(HD)7.8ヶ月(95% CI 6.3-8.6)。
・試験群において毒性発生率の上昇は認められなかった。
・偽増悪(pseudoprogression)は両群間で同様であった;標準線量群(SD)14.4%、高線量群(HD)16.7%。
・MGMTのメチル化が認められた患者群では、全生存期間(OS)の中央値は高線量群(HD)38ヶ月(95% CI 23.3-未到達)、標準線量群(SD)28.5ヶ月(95% CI 21.1-35.7)。

<結論>
・新規に診断された膠芽腫(GBM)患者において、MRS画像誘導下での72Gyまでの線量増加を行うことの忍容性は良好であったが、全生存の改善効果は認められなかった。

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