腎細胞がんに対する体幹部定位放射線治療 (SABR / SBRT)

Siva S et al. Lancet Oncol. 2022. PMID: 36400098



<背景>
・体幹部定位放射線治療(SABR, stereotactic ablative radiotherapy)は腎細胞がんに対する治療選択肢で、長期成績の結果が待たれている。
・今回の研究の目的は限局性腎細胞がんに対する体幹部定位放射線治療(SABR)の長期の有効性と安全性を報告すること。


<対象と方法>
・5カ国(オーストラリア、カナダ、ドイツ、日本、アメリカ)、12施設で治療された患者の individual patient dataを用いてメタ解析を行った。
・適格基準:2年以上の経過観察期間、18歳以上、全身状態は問わず、局所治療歴なし
・除外基準:転移性腎がん、上部尿路上皮がん
・体幹部定位放射線治療(SABR):1回線量 5 Gy以上で、単回 または 分割照射が行われたものと定義した。
・主要評価項目:局所再発(local failure)(RECIST ver 1.1)


<結果>
・2007年3月~2018年9月の期間に190例の腎細胞がん患者に対し体幹部定位放射線治療(SABR)が行われた。
・81例(43%)に対しては単回照射、109例(57%)に対しては分割照射が行われていた。
・経過観察期間の中央値:5.0年(IQR 3.4-6.8)。
・男性 139例(73%)、女性 51例(27%)。
・年齢の中央値:73.6歳(IQR 66.2-82.0)
・腫瘍径の中央値:4.0 cm (IQR 2.8-4.9)。
・手術適応が判明している128例のうち96例(75%)は泌尿器科医により手術不能と判断されていた。
・56/190例(29%)は片腎患者であった。
・体幹部定位放射線治療前のeGFRの中央値は60.0 mL/min per 1.73 m2 (IQR 42.0-76.0)。
・体幹部定位放射線治療(SABR)5年後までにeGFRの14.2 mL/min per 1.73 m2 (IQR 5.4-22.5)の低下がみられた。
・7例(4%)では体幹部定位放射線治療(SABR)後に透析が必要となった。
5年累積局所再発率:5.5% (95% CI 2.8-9.5)
・分割照射群と比較して単回照射群で局所再発が少なかった(Gray's p=0.020)
・急性期に十二指腸潰瘍(Grade 4)、晩期に胃炎(Grade 4)が1例に認められた。
・その他にはグレード3の治療関連毒性の発生を認めず、治療関連死もみられなかった。


<結論>
・原発性腎細胞がんに対する体幹部定位放射線治療(SABR)は長期的にも有効で安全な治療法であった。
・分割照射と比較して単回照射後に局所再発が少なかったが適切な線量分割の確立のためにはランダム化比較試験での評価が必要。
・今回の長期データから、手術を希望しない あるいは 手術適応のない原発性腎細胞がん患者では体幹部定位放射線治療(SABR)を治療選択肢とすることが支持される。




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