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膠芽腫に対する化学放射線療法 ー 寡分割照射 vs. 通常分割照射 ー

Childley P et al. J Neurooncol. 2022. PMID: 36355260

<背景と目的>
・膠芽腫(GBM, glioblastoma)患者において、通常分割照射(CF-RT, conventional fractionated radiation therapy)と比較して、寡分割照射(HF-RT, hypofractionated radiation therapy)では、放射線生物学的に有利で、患者の利便性や医療資源活用においてアドバンテージが存在する可能性がある。
・COVID-19 のパンデミック下に治療が行われた比較的若年で通常分割照射の適応のある膠芽腫患者(GBM)において、寡分割照射(HF-RT)と通常分割照射(CF-RT)後の治療成績を比較した。
・また、通常分割照射が適応可能な患者を対象とした寡分割照射(HF-RT)に関する報告のメタ解析を行った。


<対象と方法>
・2020年1月~2021年9月に治療が行われたIDH-wildtypeの膠芽腫(GBM)患者をレビューした。
・通常分割照射(CF-RT)は60 Gy/30回、寡分割照射(HF-RT)は50 Gy/20回の照射が行われた。
・2000年1月~2022年1月に報告されている文献を対象としてシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。


<結果>
・41例を対象に解析を行った(寡分割照射 15例、通常分割照射 26例)。
・年齢の中央値は58歳、80-90%の患者はECOG PS 0-1の患者であった。
・通常分割照射(CF-RT)群と比較して、寡分割照射(HF-RT)群にMGMTのメチル化を認める腫瘍の患者が多かった。
・全例に対してテモゾロミドを放射線治療に同時併用し、化学放射線療法後にアジュバント治療としてテモゾロミドの投与を行った。
・経過観察期間の中央値 19.2ヶ月時点で、全生存期間の中央値は、寡分割照射群(HF-RT) 19.8ヶ月、通常分割照射群(CF-RT)未到達(p=0.5)。
・無増悪生存期間の中央値は、寡分割照射群(HF-RT)7.7ヶ月、通常分割照射群(CF-RT)5.8ヶ月(p=0.8)。
・単変量解析にて、放射線治療の線量分割(寡分割 vs. 通常分割)による全生存や無増悪生存への影響は認められなかった。
・グレード3の放射線脳壊死の発生率は、寡分割照射群(HF-RT)6.7%、通常分割照射群(CF-RT)7.7%。
・1,135研究のうち15研究を組み入れメタ解析を行った。
・テモゾロミドの併用が行われた研究において、寡分割照射(HF-RT)後の全生存期間の中央値は17.5ヶ月、無増悪生存期間の中央値は9.9ヶ月であった。
・寡分割照射を用いた研究におけるグレード3の放射線脳壊死の発生率は0-2%と報告されていた。


<結論>
・比較的若年で通常分割照射が適応可能な膠芽腫(GBM)患者において、寡分割照射(HF-RT)後の生存成績は通常分割照射(CF-RT)と同等で、治療負担は少ないかもしれない。


<Key words>
・膠芽腫、寡分割照射、全生存、放射線治療、テモゾロミド

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