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【古器物のはなし①】古器物とは?


最初のテーマは、ずばり・・・「古器物」とはなにか?です。

「古」とはなにか?「器」とはなにか?紐解いてみたいと思います。

「古」とはなにか?

漢字の「古」には、「ふるい」こと、また「いにしえ」の意味があります。

角川『新字源』には、「神を象徴するかんむりの形にかたどる。神の意から、転じて『いにしえ』の意に用いる」という説明のほか、「十と口から成る会意で、十代も語り伝えるむかしのことの意」とあります。

後者は後漢時代の字書『説文解字』に、「故なり。十・口に従う。前言を識る者なり」と記されているのが根拠となっているでしょうか(?)

では、「古い」とはどのくらいでしょう?
感覚は人によって違いますし、ずいぶん前を「古い」ということもあれば、少し前を「古い」ということもあります。

もうすぐ新紙幣が発行されますが、すると今使っている紙幣は途端に「旧」紙幣と呼ばれるようになります。

それほど前のものごとでなくても「ふるい」と言われることはありそうです。
「新」があれば「古」があるわけですね。

さて、今問題としているのは、「古い」器物とはいつのものなのか、です。

宋代に編纂された『五礼新儀』に、「古器」という語が見られます。
宋の時代には、夏・殷・周の時代の器を蒐集し、伝統的な精神を学ぶ気運が高まりました。
宋の人たちからすれば、「古」とは夏・殷・周の三代を指したと知られます。

「器」とはなにか?

次に、「古器」の「器」とは何を指すかを考えてみましょう。

現在では、「器」は「容れ物」もしくは「キャパシティ」の意味で用いられるのが一般的です。
考古学や美術史の業界でも、「器」と言えば普通は容器です。

でも、「武器」や「楽器」など容器以外のものにもつくように、「器」にはもともと「道具」の意味があります。

『五礼新儀』と同時代に編纂された『博古図』という図譜には、「鼎」や「壺」などの容器や「鐘」のような楽器に加え、武器・銭・車馬具・鏡などが収録されています。

これらはすべて「器」であり、今でも「雑器」と総称されることが少なくありません。「器」だけで「器物」とほぼ同じ意味をもつんですね。

「古器物」とは・・

つまり「古器物」とは、「夏・殷・周の三代のあらゆる器物」を指す語であると考えられます。

ただし、これは宋代の人たちの言う狭義の意味であり、それ以降の王朝になれば、自分たちより前の時代の器物を広く「古器物」や「古器」と呼ぶことがありました。

このあたりの話は学史としてきちんとまとめた方がよいと思いますので、また次の機会にします。しばしお待ちを。


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