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【詩】ユートピア

誰よりも大好きな君と
ずっと永遠に話していたい
きょうも告げる放課後の空
まばらな生徒の声がもどかしい

やけに大きな正門の前で
君はまたねと僕の名を呼んだ
それだけなんだ たったそれだけで
僕は僕になれた気がした

嗚呼 わかってる わかってるんだよ
回る時計に 変わる虫の
君と新しいことばを交わすたび
僕が新しくなっていくたび
大人にならなくちゃいけないってこと

憎たらしいほど美しい
有限のユートピア だきしめて
いまだけの温かさを感じていたい
馬鹿らしいほど冴えわたる
幽玄のユートピア 信じたくて
わけもない涙となって零れていくよ

君とすこし離れて歩いて
冷たい三月の風を浴びていたら
僕が感じていたよりも
なんだ 独りぼっちだったのかい

君以外の仲間と遊ぶ時間も
そこそこ楽しめるようになったころ
朝の温もりを忘れた自分に気がついて
慌てて君にメールした

嗚呼 わかってる わかってるんだよ
選ぶ時間と にぎる人の
君と新しいうたをつくるたび
僕が新しくなっていっても
大人にならずに済んだはずのこと

憎たらしいほど美しい
有限のユートピア だきしめて
君の言葉を取りに帰るよ
馬鹿らしいほど冴えわたる
幽玄のユートピア 信じたのなら
きっと明日はいい天気


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