媒鳥

雨の止んだ世界とわたしが
水膨れのように大きく膿んでいく
その狭間で苦しみを演じながら
僕が僕であるために犠牲にすべきものは何か
僕が僕であるために洗脳すべきものは何か
ぷち、ぷちと
おさない脳の血管が切れていく

もう安心　もう安心　もう安心
もう安心　もう安心　もう安心
何回　唱えても震えている本心

日陰で汗を流している人に訪れる突然死
TVで偉そうにしている人に三三七拍子

ハンドメイドのマーメイドを愛妾として
慢性的ハートブレイクを美辞麗句で書き換える

ややもすれば
世界とわたしの軋轢に
気が狂ってしまうから
わたしは人工の鳥を媒なかだちとした

この心臓に咲く芥子けしの花が
地上を汚さぬように
大切なあなたを毒さぬように

つかまえた囮おとりの鳥よ　
異国の空へ　声を届けて
感情が真夏に溶け出す前に
わたしとあなたを繋いでおくれ

一斉に爆ぜた線香花火
囮の鳥は命に燃えない
そうか
君はわたしではないのだ

君は君でないもので支えることができる
命を命でないもので満たすことができる
安心を求めず　万全を期さず
君は君でないもので歩くことができる

つかまえた囮おとりの鳥よ　
異国の地へ　言葉を伝えて
誕生の運命を祝福して
わたしとあなたを繋いでおくれ