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『スキップとローファー』がおもしろい

こんにちは、小清水志織です。
今年の春から、石川県を舞台にしたアニメがなんと二つも放送中ということで、県民の私にとってはとても喜ばしい日々が続いております。
ひとつは、七尾市の七尾高校をモデルにした『君は放課後インソムニア』。もうひとつが、珠洲市あたりがヒロインの故郷となっている『スキップとローファー』です。どちらも「理性が吹っ飛ぶ」くらい大好きな作品で、地域とアニメとの関係を感じられる内容になっています。せっかく地元のアニメが放送されているタイミングですので、これから回をわけて感想など気ままにお話し致します。

※なお、私はどちらのアニメも最初期の数回を観れなかったため、内容に関して抜けがあるとは思いますが、できるだけ丁寧に感想を書くよう気をつけて参ります。
※できるだけ内容的な秘密に触れないようにしますが、どうしても若干のネタバレを含む箇所もありますので、何も知らない状態で作品を楽しみたい方はご覧にならない方がよいかと存じます。

まず今回は、『スキップとローファー』についてです。

マンガの原作者は高松美咲さんで、講談社『月刊アフタヌーン』に連載中の作品です。この作品は、ヒロインの岩倉美津未(みつみ)の生まれ故郷が、珠洲市蛸島たこじま町がモデルと思われる「凧島町いかじまちょう」となっています。監督・シリーズ構成は数多くの監督や演出を担当されてきた出合小都美さんで、原作と監督がどちらも女性となっています。

みつみは、この地域の深刻な過疎の問題を解決するため、実家をはなれ東京の進学校へ進み、ゆくゆくは官僚を目指すという大きな夢をもっています。
しかし、すごく真面目で成績優秀な彼女なのですが、人との距離感がちょっとズレていたり、けっこうな方向オンチ、さらに緊張のあまり体調を崩してしまうなど、生活の面で大変苦労する傾向があります。でも、いっそ空回りしちゃうくらい色々なことに挑戦し、努力を惜しまない性格のために、その姿に周りのクラスメイトたちが感化されていくのです。

まっさきに私がおもしろいと感じたのは、みつみのキャラクターデザインでした。
公式サイトをご覧になればお分かりかと思いますが、みつみはいわゆる「ヒロイン系女子」とは異なる、おっとりとしたデザインになっています(本人に怒られるっ!?かもしれませんが)。むしろクラスメイトのミカや結月のほうが「ヒロイン系」に近い端正な容姿をしています。

マンガやアニメの文化が世界中にひろまり、国内でもプロ・アマ問わず膨大な作品が溢れている昨今、自然とキャラ概念というものは固定化されていきます。前述の「ヒロイン系」にしても、おめめパッチリ/カラフルな髪の毛/高めな声のトーン/肌の露出/スタイル抜群/おしゃれ……等々、様々な要素がありますが、いずれも万人がそうだと認めるデザインに偏りがちです。
大多数の人に受け容れられる作品に仕上げるのは制作側としては非常に大事なことですが、ともすればマンネリ化してしまい、良い作品になりにくいこともあります。
『スキップとローファー』は、そうした固定概念を根本のキャラデザインからして壊そうとしているのではないか、と思います。

第二に、この作品の眼目は「キャラクターのバックボーン」だと思っています。

学年イチのイケメン男子である志摩くんは、過去にある特別な仕事に関わっていた、ということがわかっています。しかし、周囲の期待に応えることに負担を感じてそれを辞めてしまい、その経歴すらも数人の仲間を除いて秘密にしていたのです。
だからこそ、地元を背負って上京したみつみを尊敬し、クラスの女の子というよりも一人の人間として良き友人になってくれます。
志摩くんのことを責任感がない人だとは思いません(授業はよくサボりますが笑)。彼とみつみとの大きなちがいは、背負っているものの大きさです。志摩くんはまだ、自分の世界の範疇で事足りる物事に取り組んでいる段階なので、頑張るのも諦めるのも結果はすべて自分だけに帰結します。対して、みつみは「凧島町」の人々すべての期待と、そして過疎に悩む地域の課題すべてを背負っているのです。相当なプレッシャーだと想像されますが、おそらくみつみは「負荷が大きいほど頑張れるタイプ」、そのバックボーンは「地域に育てられた」という環境に他なりません。
「凧島町」のシーンでは、ご近所と当たり前のように物々交換できる間柄や、ゆるやかな方言と励まし、そして大人数の家族などが描かれます。都市部では珍しくなってしまった光景がみつみの中に生きた記憶として根ざし、それが彼女の放っている特有の「空気」に繋がっているのではないでしょうか。

他にも、どこまでも物語を高校生の日常に徹するスタンス、ときおりメルヘンチックになる背景、髪の毛ボサボサの状態で登校してしまうみつみの大胆さなど、大なり小なりの工夫も相まって、観ているだけでほっと安心できる作品になっていると思いました。

簡単ではありますが、『スキップとローファー』の感想をこれで終わりたいと思います。まだまだ先が続きますので、今後ともぜひ追いかけて行こうと思います。

見逃し配信のTVerでも鑑賞できるので、興味があれば是非ご覧くださいね。

最後まで誠にありがとうございました。 
それではまた来週、お会いしましょう。

小清水志織



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