見出し画像

「呪術」が仕事のできない私を救う

ああ、毎日忙しい!
転職してからというもの、前職とはなにか種類の違う気忙しさに襲われています。
前職では営業職として法人営業を行っており、「アポ取らなきゃ仕事無いぞ、、、!!」という、私の存在価値を賭けた戦いを毎日しなければなりませんでした。
現職ではいらっしゃるお客様の対応なので完全に受け身ではあるものの、まあいらっしゃるお客様の多種多様なこと。立ち仕事というのもしくしくと体を蝕んでいます(でも概ね元気)。

そんな最近ですが、地味に職域が変わりました。店舗のマネージャーとして毎日悪戦苦闘しています。そのため新たな業務を急ピッチで覚えなければなりませんでした。
その割に上司から頂くフィードバックはすごく上の視点からのもので、私にとってはとても”立派な”ものです。「いや業務覚えるだけで精一杯なんだけど…そこまで考えられんわ…」といたたまれない気持ちになります。

他の人はゆるっと働いていて、私の指導は上手く伝わらず、難しいお小言を言われ、「成長」という言葉に脅され…「なんで私だけこんなに頑張らなくてはいけないのか?」と悲しくなってきます。

世の中には色々な自己啓発本があります。「私が”どうすれば”この窮地を抜けられるか」を教えてくれるものは多いと思いますが、「私が”なんで”こんな状態になってしまったのか」を教えてくれるものはありません。と言いますか、知らんがな、という話になってきます。

ふとその時に学生時代の文化人類学のお話を思い出し、改めて本を読んでみました。色々と思うことがあったのでまとめてみます(実は文化人類学の大学院を出ているのです)。

「呪術」が私たちに教えてくれるコト

最近この本を買いました。というか積読していて、最近読みました。

「呪術」ってご存じですか。最近よく聞きますよね。著者の方から言わせれば「人間を超えた力に働きかけ、望ましい結果を手に入れようとする作法や技術」のことです。
昔の人類学者エヴァンズ=プリチャードは呪術を意図があるかどうかで2つに分けました。意図をもって行われる呪術を邪術、意図をもって行われない呪術を妖術と呼びました。

呪術、私たちには馴染みのないものなのですが、どうにか理解しようとするのが文化人類学です。エヴァンズ=プリチャードは呪術がその人たちの特融な思考法として機能していることを明らかにしました。どういうことかというと、

彼が調査研究したアフリカのアザンデの人々は、暑い日中、穀物小屋の下でよく休憩をしています。穀物小屋は、長年のうちに柱をシロアリに食われて崩れることがしばしばあります。小屋がシロアリのせいで崩れるということは、アザンデの人たちもよく知っていることです。それにもかかわらず、人が休憩している時に穀物小屋が崩れて、下敷きになりケガをしたり、場合によっては死んだりすることがあったなら、それは妖術のせいだとアザンデの人々は言うのです。

奥野克己 『これからの時代を生き抜くための 文化人類学入門』

つまり「そうなることは常識として知っている、ただし『なぜ私が?』」という問いに答える方法として呪術が存在すると言います。

最近の私たちの「合理的思考」

そう考えると自己啓発本は仕事に悩んでいる私にどうしたらいいのか、そのヒントを与えてくれるものですが、そもそもなぜ私が仕事なぞで悩まなければならないのか、その答えを教えてくれるものではありません。
仕事で嫌な事態って重なるものですが、それがなぜそのタイミングでよりによって私に起こったのか、我々の思考法では「たまたまです」としか説明の方法がありません。
そう考えると呪術の思考法は、我々が重要視する合理的思考法では説明しきれない部分を説明できる、立派な思考法であることがわかります。

ムダ無く、効率良く物事を進める合理的思考も大事です。ただそれが世界で唯一無二の絶対的な法であり、それができない人は落伍者のように語られるのは悲しいことですし、多様性を押し潰していることにもなります。
私のようなその思考法に乗り切れない人たちにとっては「その思考法がすべてではないかもしれない」ということを頭に入れておくだけで何かひとつ楽になる気がします。

私たちにとっての「呪術」

文化人類学をやっていて良かったと思う点があります。それは「今の常識がすべてではない」と意識的に思えるようになったことです。知らないことを見てみることで今の自分の状況を相対化する、それは今が厳しい状況だとしたらすごく大事なことです。

私、よく「成長」「こうしたらいい」「課題解決」みたいな言葉に囲まれてうっと喉が詰まることがあります。なんだか息苦しくて、エネルギーを奪われていくような気がするのです(社会人失格)。
色々なアドバイスを即自分に取り込み、行動に移し、次には行動改善できているような社会人の鑑のような方もたくさんいらっしゃることは重々承知しています。ただし私はそのような思いが長続きしません。

しんどい時はその流れから降りて、「役立たないけど好き」とかそういうことに熱中したりして、今の自分を俯瞰することも大事かなと思います。というわけで今日は何も考えずCreepy Nutsのオールナイトニッポン公式本をよんで寝ようと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?