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変わったことの証明

映画『あんのこと』を見た感想。(ネタバレあり)

強烈な物語だった。
見ているこちらも彼女の物語に飲み込まれてしまうようだった。

暗い寝室で、慣れた手つきで注射を打ち込む。明るいリビングへ出てきて日記を見て、息を荒げる。落ち着かない手元。キッチンへ向かい、日記を燃やしてすぐに水をかける。そして思い立ったように、迷いなく、輝くバルコニーから消えてゆく。薬を打つ→日記を見る/燃やす→飛び降りるまでのカットが忘れられない。

やってしまった故の狼狽と、飛び降りる衝動。
迷い/迷いのなさが入り混じった様子。きっと、自ら命を断つ前はこんな風なんだと思わせるリアリティがあった。

杏が母に刃物を向けたとき、鑑賞者である私は同様に彼女の母を憎んでいて、やってしまっても仕方がないことだと思った。けど彼女はしなかった。というか、母が殺してしまいたいほど憎くいというより、コロナや、佐藤二郎のこと、起きること全てが、人との繋がりを切断していくことに、ただ失望していたのだと思う。

薬を使えば、ごまかして生きることだってできたはず。
オープニングと、エンディング近くで、早朝の歌舞伎町だろうか、同じようなシーンが使われている。それまでの時間は無に帰し、振り出しに戻ってしまったのだと思った。が、彼女は確かに変わったのだった。


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