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ラジオドラマ脚本 030

タイトル【啖呵売が聞きたいんだ】
僕のおじさんは、啖呵売稼業。おじさんは、根っからの自由人で、僕のお母さんは、実の妹なのだが、まったく心配をする気配もない。父親に至っては、厄介者がいなくなったと清々しているようす。僕はといえば、おじさんに、いろんなことを相談したいと思っているのに、どこにいるかも生きているのかも不明。いつものように、通るであろう公園のベンチに座り、遠くを眺めている。根っからの自由人であり、社会保険とは無縁の人である。

登場人物
学(42歳)
幸(16歳)学の娘
N:冬の夕暮れの公園。カレーの匂いと、遠く物売りの声が聞こえてきます。

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「お父さん、おばあちゃんが探してるよ。また、なにかやらかしたの?」
「何もしてないよ。座れば」
「祖父ちゃんが戻ってくるよ。益々、ややこしくなっても知らないから」
「なら、先に帰れよ」
「おじさんを待ってるの?帰ってこないよ」
「何も知らないくせに」
「見ず知らずな女の人が来て、おじさんの事いろいろ聞いてたみたい」
「おじさんの彼女だろ」
「貸したお金を返してくれないみたいな感じだったなあ」
「いつものことだろ」
「そうなの?いつものことなのおじさんからもらったプレゼント?返さなきゃ」
「孫には甘いんだな」
「一回だけ、去年の今頃、縁起もんだからって、財布!おめえにやるよって」
「春財布、知ってるか?」
「知ってるよ!お札で財布が張りますようにで、春財布になったんでしょう?」
「知ってたんだ」
「だから、後生大事にしろって」
「おじさんらしい」
「令和の時代じゃ、流行らないよ」
「昭和でいいよ」
「平成生まれでも、理解に苦しむよ。あの自由さは」
「君も、もう少しすればわかるさあ」
「そのいいかた、ずるい!自分だけ、おじさんの理解者みたいな顔して」
「夕飯、カレーならいいのに」
「おじさんも、好きだったよね。コップにスプーン入れて」
「ザ、昭和スタンダード」
「あっ!啖呵売…」

【完了】

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