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あなたの国は借金をしてますか

 借金をするのはどんな時だろうか。
 クルマや家など、手持ちの現金では購入出来ないような大人買い物をする時。収入が少なくて生活資金に困窮した時。使い込んでしまった時。クレジットカードでの買い物。個人であればこんなところだろうか。何らかの事業をやっている人であれば、事業継続のための運転資金や事業拡大のための投資資金、あるいはリースを利用した資産の購入だろうか。

 借りた金は返すのが道理だが、返せなくなると担保が取り上げられたり保証会社の信用ポイントを落とすことになる。だから当然に借金は返さなければならないと思っているだろう。そして、将来返すことを前提に他人からお金を授かることを借金と呼んでいると思う。

 借金をする時、将来返すという約束や担保がありさえすれば無料タダでお金を貸してくれると言う訳ではない。返す時には金利によって計算した利子や利息を払うことになる。つまり借りた以上の金額を払うことになる。その代わりに、借りたお金を使って得られる便益を時間的に先取り出来るというわけだ。

 ここで、あなたが銀行から借金をするとしよう。書類を書いて手続きをすると、あなたの口座にお金が振り込まれる(借りたとされる額と同じ数字が記帳される)。この時、振り込まれたお金はどこから来るのだろうか。銀行の手持ちのお金を回してもらったのだろうか。その元は私たちが預けた預金なのだろうか。つまり銀行は人から預かった金を他の人に貸して儲けているのだろうか。
 そういう誤解で溢れているが、実はそうではない。
 あなたが借りた時に口座に振り込まれたお金は、それまでどこにも存在していなかったものだ。
 あなたが銀行から百万円を借りたとすると、銀行はあなたの通帳に百万円と書くと同時に、銀行自身の帳簿にあなたに百万円貸したと書くだけだ。
 銀行が記帳することによってお金は生まれるのだ。それは、返済が終わるまでそこにあるかのように見えるが、返済が完了すると消えて無くなる。

 まとめると、借りた金は返せ、利子を払え、さもなくば破産だ、ということになるが、そのお金はあなたが借りた際に銀行の操作によって生み出されたものということだ。
 どうして銀行はそんな魔法の様なことが出来るのか。
 不思議でも何でもなく、それが銀行という生業の本質だ。お金を預かることはもちろんだが、信用に基づいたお金を生成するのが銀行という仕事なのだから。

 借金をするには条件がある。あなたが借金を返すあてが一定程度あると判断されるという条件だ。それはあなたの信用と言い換えても良い。
 あなたが借金を出来るのは、あなたが一定期間の将来にわたって継続してお金に変わる価値を生み出すことが出来る、あるいは代わりに差し出せる価値あるものを所持している場合ということだ。

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 では、国の場合はどうだろうか。
 例えば日本政府は、銀行に国債を買ってもらうことでお金を調達している。これを巷では政府の借金などと呼んでいるが、正確に言うと借金ではない。少なくとも私たちや企業がする借金とは全く違う。
 人が借金するときに銀行が金を生み出したように、国債の発行によって国はお金を生み出すのであってお金(元本)を借りているのではない。これを国の借金・・、政府の借金・・と呼ぶと取り違えることになる。究極的に政府が負担すべきは、国債の利息の部分だけだ。
 そして、政府が発行した国債の多くは日本銀行が買い取っている。日本銀行が買い取った国債に支払われる利息は日本政府に入る。つまり、利息すら殆ど負担しなくて済むということだ。

 ある家族のお父さんが「一万円の権利と少しの利息」と書いた紙を自分の息子に買ってもらい一万円札を受け取りました。お父さんは「一万円の権利と少しの利息」と書いた紙を持っている人に対して定期的に返済して利息を払うこと、とノートに書き留めました。
 息子はすぐにその「一万円の権利と少しの利息」と書いた紙をお母さんに売って一万円をもらいました。

 お父さんが毎月、返済金と利息をお母さんに払うたびに、お母さんのノートには受け取った返済金と利息の額が書き込まれます。ちなみに、お父さんとお母さんと息子はノートは分けていますが同じ家計です。

 つまり、お父さんは追加で利息を払う約束をするとともに、一万円を前借りしたことになります。
 この時、お父さんは誰かに借金をしたと言えるでしょうか。

 お父さんは、お小遣いを上げてとお母さんに言えない事情があったようですね。

おわり



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