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再生可能エネルギーは再生可能か? その6

前回は、再生可能エネルギーを利用することで環境的にメリットを探ってみた。

このシリーズ最後となる今回は、もうひとつだけ私が気になった点について挙げておきたい。

それは、再生可能エネルギーの定義についてWikipedia英語版に書かれていた次の記述だ。

再生可能エネルギーの多くは持続可能なエネルギーですが、バイオマスのように持続不可能なものもあります。
(翻訳はDeepLを使用。以下同様)

再生可能エネルギーとは別に、持続可能エネルギーという考え方があるということのようだ。そして、バイオマスなどは再生可能エネルギーだけれども持続可能エネルギーではないということか。

持続可能エネルギー(Sustainable Energy)をWikipediaで見てみると次のように書かれている。

The use of energy is considered sustainable if it meets the needs of the present without compromising the needs of future generations.
There are many definitions of sustainable energy, most of which include environmental aspects such as greenhouse gas emissions and social and economic aspects such as energy poverty.
(エネルギーの利用は、将来の世代のニーズを損なうことなく、現在のニーズを満たすものであれば、持続可能であると考えられます。
持続可能なエネルギーには様々な定義がありますが、その多くは温室効果ガスの排出量などの環境的側面と、エネルギー貧困などの社会的・経済的側面を含んでいます。)

これを読む限り持続可能エネルギーという言葉は定義として固まっていない様子がうかがえる。
今流行りの持続可能な社会という時に使われるサステナブルとエネルギーを組み合わせたある種の新造語だろうか。

ここで念の為、持続可能な社会について確認してみると、『「サステナブル」ってなんだろう。』(ベネッセ)というページには次のように書かれていた。

「サステナブル(Sustainable)な社会」とは、「持続可能な社会」を意味します。それは、地球の環境を壊さず、資源も使いすぎず、未来の世代も美しい地球で平和に豊かに、ずっと生活をし続けていける社会のことです。

続けて、地球温暖化の問題や人口急増の問題が例として挙げられている。

そもそもサステナブルという言葉の多用は、国連サミットで採択されたSDGs(エス・ディー・ジーズ)、つまり、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)という用語から来ていると思われる。
SDGsで掲げられた17の目標の中にサステナブル(持続可能)という言葉が多数登場する。

持続可能という言葉のもとで、それを解決すべき共通課題を持つことで、世界中の国々がそれぞれの国の状況に応じてサステナブルの実現に向けて協力しながら実践していくことが世界の結束に繋がる、そんな考え方だろうか。

エネルギーおよびその消費に関しては、サステナブルな17の目標の幾つもに関連していて、サステナブルな世界の実現にはサステナブルなエネルギーが欠かせないということだろう。

再生可能エネルギーという言葉がエネルギーという物理量の可用性によって分類するものであったのに対し、持続可能エネルギーというのは世界の持続可能性を追求する社会的な活動に準じたものかどうかという判断基準によって分類される。

Wikipediaにおいて、再生可能エネルギーではあるが持続可能エネルギーとは言えないとされたバイオマスは、利用時に燃焼させるので二酸化炭素が発生するという時点でSGDsの目標に反するのでサステナブルではないということになるのだろう。
だからもちろん、火力発電だってサステナブルではないということになるが、これは同時に再生可能エネルギーの利用でもない。

とすれば、世界が求めているのは再生可能エネルギーのうち、持続可能エネルギーに分類されるもの、ということになるのだろう。
新しい考え方やカタカナ用語が頻発しだすと、誰かが誰かを煙に巻こうとしているのではないかという陰謀論に与したくなるが、少なくともその前に言葉の定義をしっかり把握しておくことが大切だろう。

では、ここで登場する持続可能な世界を目指す主体となる「世界」とは何だろうか。

おわり

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