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暑い暑い…

 暑い暑いと言ったところで、暑いのは無くならない。それなのについ、人の顔を見れば暑いですね〜なんて言ってしまうのは、絶対に同意が得られるからだろう。共感を確認したいのだ。どんなに小難しい事を言っていようが、人の会話は基本的にはこれに尽きる。つまり、分かって貰いたいのだ。

 言っていることの意味を分かって貰うことと、その考えを受け入れて貰う事は違う。現実社会ではその両方を得ようと思うと意外に難しい。
 その点で、天気の話は取っ掛かりとして使い易い。青空を見上げて良い天気ですねと言うのを浮かない顔で返すのは、日照り続きで農作物が枯れかけている農家か、恋人にふられたばかりでその痛手が癒えていない人くらいだろう。大抵の人は「良い天気」を受け入れてくれる。

 汗ダクになって目覚めた朝は、どんなに晴れ渡っていても憂鬱でしか無いと思うのは、私にとってはその通りなのだが、必ずしもみんなに当てはまる訳では無い。だから、その気分を同意してもらおうという試みは失敗しやすい。世の中には夏が大好きで、暑い! と叫んで元気になる人もいる。
 だから同意して貰うとしたら、なるべく客観的な事実の方が良い。
 暑いですね。良い天気ですね。雨ですね。湿度が高くてジメジメしますね。寒いですね。雪ですね。吹雪いていますね。
 でも、事実なら何でも良い訳では無い。
 海は青いですね、雲は白いですね、と一般化して言うと奇妙な顔をされてもおかしくない。当たり前のことを当たり前に言うのもダメなのだ。
 言うなら、この海は青いですね、もしくは、海が青いですね、という様に具体性を持たせた方が良い。

 全てのコミュニケーションは分かり合うことが基本だ。だから間違っても「なるほど」などと言ってはいけない。何がなるほどだ、となる。
 必ずしも受け入れる必要はない。相手の言っていることが分かればそれで良い。分かったことを伝えれば良い。
「だよね~」「ですよね」「それは大変ですね」「そうなんですか」「ありますよね、そういうこと」「美味しいね」「楽しいね」「カワイイね」などと相槌を打てば良い。というか、それ以上に深入りしてはならない。

 ねぇ、聞いて。と言われたら、聞けば良い。そして、相槌を打つ。あなたのアドバイスは求められていないのだから、真剣に返さなければならないと力んで聴く必要はない。
 どうしたらいいと思う、と聞かれたとしても求められているのは同意であってアドバイスではない。
 どうして人は、他人があなたにアドバイスを求めてくると思ってしまうのだろうか。あなたの教訓はあなた自身には有効だけれど、他の人にはクソほど役に立たないことが多いのだ。

 でも、暑い時には水分を摂ることを忘れないようにしよう。余計なアドバイスかも知れないが。

おわり

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