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帰省ラッシュとギャンブル依存症

 帰省ラッシュの報道を見る度に、日本人は一体何をやっているんだろうと思うことしきり。
 そんな私も日本人ですから他人事ではない。帰省はしませんが。

 戦後、この国が農業から工業に大きく舵を切った時に、人々の生活の場も農村から都会へと変わった。家を継がない長男以外は都会に工場にと駆り出され、日本の高度経済成長を支えた。その時代の労働力集約と都会に出て成功するというハングリー精神が今の日本社会の礎となった。
 それが、日本が栄えた頃の昭和という時代だった。

 変わることが良いことだけとはかぎらないが、帰省ラッシュを見るたびに、日本はまだ昭和という過去の栄光の中に生きている気がして少し淋しい気持ちになる。
 テレワークだなんだと言いつつも、それと帰省ラッシュが併存する社会はいつまで続くのだろうか。

 トラウマと同様に、過去の成功体験も人の行動や判断を縛りつける。あの時の上手くいったやり方に執着してしまう。経験から学ぶことが悪く働くこともあるのだ。
 カジノを含む統合型リゾート計画は鳴りを潜めた感があるが、パチンコや公営のいわゆるギャンブルは変わらず日本で楽しめる。
 カジノと聞くと騒ぎ出す反対派がどう思っているか知らぬが、既存のいわゆるギャンブルによる依存症は確認されているだけで成人の2%に及ぶという。2019年の成人人口は約1億人なので、ギャンブル依存症者はおよそ200万人いることになる。東京23区の5人に一人、もしくは札幌市の全人口と同じ位だ。

 ギャンブルほど過去の成功体験に引きずられるものはないだろう。始めてこの方当たった試しがないという人よりも、ビギナーズラックだろうが何だろうが、過去に当たった人の方がギャンブルを辞められないのは自明な気がする。
 当たった時の得も言われぬ高揚感は何にも代えがたい快感として脳を狂わせる。そしてあの時のあれをまた味わいたくなる。だからお金だけが目当てではなくなる。
 時々訪れる当たりの瞬間によって、当たりの記憶は長く維持され、時には強化される。だから生涯成績がプラスかマイナスかは関係なく、プラスであればいいけどそうでなくても楽しみでやっているから、と言わしめる事になる。

 こんな事を書いているが、私は別にギャンブル反対派では無い。既にいわゆるギャンブルが日本にはあるのだから今更カジノに反対するのはおかしいとすら思う。
 依存症ともなれば本人のみならず周囲にも迷惑が及ぶ可能性が高いので困りものだが、依存してしまうのも人間なのだから闇雲に禁止するのではなく、依存しないためのノウハウを真剣に研究した方が良いのではないか。

 依存からの脱却方法が確立された暁には、昭和に依存した日本が再び世界に羽ばたく事ができるかもしれない。

おわり




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