見出し画像

税金と社会保障の本当の問題

 少子化対策のために社会保険料を上げるとか、軍備増強のために増税するといったことはマスコミでも取り上げられるから問題意識を持つ人も少なからずいるだろう。

 ただし注意が必要なことがある。

 こうした話題の時に掲げられる個別の問題に着目しすぎてはならないということだ。本題は社会保障制度や税制および予算に関するものなのに、少子化対策や軍事の必要性についての議論に引き寄せられがちになるのだ。着目点を具体化することで、本当の目的を見えにくくする意図が隠されている。
 こう書くとただの陰謀論にしか聞こえないだろう。そうなることも政府の狙いのうちなのだから仕方がない。

 (本当に少子化問題があるとしたら)少子化対策が必要なことは誰がみても明らかだが、過去に対策として集められたお金の効果が見られないのだから、政府が言うところの少子化問題は私たちが想像するものとは少し違うのではないか。
 とまあ、こんな風に反論される事を政府は期待しているはずだ。話の焦点を保険料から少子化問題にずらすことで煙に巻く戦法なのだから。

 社会問題としての少子化問題が無いと言いたいのではもちろん無い。本来、社会問題とお金の問題は別なのだ。社会問題解決の為に具体的な方策を立ててそこに予算を付け、その予算の財源を全体の予算の中から割り振るのが真っ当な手順であるはずだ。それが逆転して保険料アップありきなところ、その魂胆を隠すために少子化問題が使われているだけなのだ。ここ何年も少子化問題に投じられた税金は、世間の知らない誰かの懐にしっかりと納まっている。問題はいつまでも解決しない。

 私が思うに、本当の問題は、社会保険料や税に対してサラリーマン(被雇用者)はあまり関心がないということにある。被雇用者の場合、そもそも社会保険料の半分は個人負担を免れているし、税は源泉徴収されていて普通は節税が出来ない仕組みになっているから興味の抱きようが無い。
 つまり被雇用者は社会保険料や税に感心が持たないようにしっかりと躾けられているとも言える。だから、安月給の被雇用者であれ高額所得者であれ、消費税はみんなに等しく掛かるなんて言われると鵜呑みにしてしまう。

 多くの人が無関心になるように飼い慣らされて、いろんな名目でじわじわと徴収されているのに気が付かない。毎年、年末になると会社から配られる年末調整票に記入して提出するだけで簡単に手続き出来る代わりに、裁量を放棄していることに気が付かない。安定という言葉と引き換えに安心を得ていると錯覚し、鳥籠の中の世界を世界そのものと思い込んでいる小鳥と同じだ。

 財務省が公開している2023年度の国民負担率(国民全体の所得に占める税金と社会保障費の負担の割合)は46.1%と推計されている。一生懸命稼いでも半分近くが吸い取られていることになる。これが全国民の平均値だとすれば、税と社会保障費から逃れられないサラリーマンの場合はもっと負担割合が大きくなるだろう。1970年には10%を下回っていた国民負担率は2000年前後には35%に達し、この二十数年でさらに10ポイントも上昇したのだ。しかもこの先もっと増えるという。
 これほど徴収されていながら、医療費も学費も無償にはならず、少子化も改善されていない。高齢者の待遇完全も程遠い。
 私たちは貢ぐことにどこまで無関心で寛容でいられるのか。そして、いったいこれほどまでに徴収されたお金はどこに消えているのか。

 そろそろ社会の仕組みについて真剣に知るところから始めても良いのではないか。

おわり

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?