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再生可能エネルギーは再生可能か? その3

これまでの話で、再生可能エネルギーは元々の意味としては「再生可能」エネルギーではないことが分かった。
むしろ、そこら中にあって、ただで使い放題の使い捨てエネルギーのようだ。

しかし、よ〜く考えてみると、そこら中にあると言っているエネルギーは、物理学で言うふつうのエネルギーのことに他ならない。
エネルギーはいろんな形態を取りうるのであって、敢えて再生可能エネルギーという新しい言葉を当てる必要はない。

新しい言葉をつけると、まるで今まで無かったものが発見されたかのように錯覚するが、今までもこれからも自然の中にエネルギーは何ら変わらずにそこにあるのだ。新しい言葉によって切り分けることで新たな発見をしたような気になってしまうものだ。

では、再生可能エネルギーという新しい言葉で、本当は何を切り分けたかったのか。
産業革命以降これまで人類は地底深くに眠る化石燃料、つまり大昔の生物の死骸をエネルギー源として利用してきた。
これこそがnon renewable energy、つまり再生可能ではないエネルギー源だ。

今の説明で、それとなくエネルギーとエネルギー源を使い分けたのをお気づきだろうか。

石油のような化石燃料そのものは、エネルギーではなくエネルギー源だ。何か手を加えないとエネルギーが取り出せない。
対して再生可能エネルギーは、それ自体がエネルギーでありエネルギー源である。バイオマスは違うが。

人類は、掘り出した石炭の他、気化する温度によって石油を分けることで、ガスやガソリン、灯油、軽油、重油などといった別のものとして利用してきた。こうしてエネルギー源である化石燃料を取り出した後は、それを燃やすことで大きな熱エネルギーが取り出される。
熱エネルギーはそのまま使われることもあるし、水を温めて高温高圧蒸気を作り、それによって蒸気タービンを回して発電機を駆動して電気を作ることにも使われる。

このように非再生可能エネルギーの場合は、採掘してから電気が出来るまで多くの手間と時間が掛かっている。

再生可能エネルギー(どこにでもあるエネルギー)は、エネルギー源ではないので、燃やさなくても既にエネルギーの状態だ。実に効率的じゃないか。では、わざわざエネルギーを取り出さなくても、そこらじゅうにエネルギーの形として存在する再生可能エネルギーはこれまでどうして活用されて来なかったのか。

実は、エネルギーは、そこに存在していたとしてもそれだけでは人間が活用することは出来ない。
放っておくとどんどん流れていってしまうし、エネルギー状態が変化していってしまう。だからエネルギーを使うためには、エネルギーをかき集めて逃げていかないようにしなければならない。
もしくは、その場で電気など他のエネルギーに変換しなければならない(電気に変換してもその場で使わないとどこかへ行ってしまうのは同じだが)。

要するに、そこにあっても利用することが原理的に難しいのが再生可能エネルギーの正体だ。

再生可能エネルギーには、人間が利用する場合にもうひとつ弱点がある。
それは、エネルギーの供給量を制御出来ないということだ。
例えば太陽エネルギーは晴れた日中が一番エネルギーが大きいが、夜にはゼロになってしまう。夜こそ電灯が欲しいのに。風力エネルギーは、風が無ければ当然ゼロだ。
人間が欲しい時に使えるエネルギーでなければ不便極まりないのだが、再生可能エネルギーは自然の都合で勝手に存在するエネルギーなので、使うのは自由で無料かもしれないが、必要な時にそこにあるとは限らない。

ここで、再生可能エネルギーの特徴をまとめておこう。

再生可能エネルギーの特徴
・色々な形でそこらじゅうにある
・エネルギー源ではなくエネルギーそのもの
・集めるのが難しい
・欲しい時にそこにあるとは限らない

そして再生可能エネルギーは、化石燃料をエネルギー源として作られるエネルギー以外のエネルギーである。

こうして見ると、再生可能エネルギーは決して便利なものでは無いように思えるが、政府はどうして再生可能エネルギーの利用を促進しようとしているのだろうか。

その答えは単純なようで複雑だ。

つづく

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