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値上げの事情は

 既に報道されているように、ソニーマーケティングは2022年9月1日より、日本国内向けに販売している一部製品のメーカー出荷価格を改定すると発表した。
 理由は、昨今の外部環境の影響を受け、原材料費、製造・物流コストなどが高騰している事のようだ。
 カメラやオーディオ・ビジュアル機器などが対象だ。

  そしてソニー・インタラクティブエンタテインメントはPlayStation®5の希望小売価格を欧州、中東、アフリカ、ラテンアメリカ、カナダ、そして日本を含むアジア太平洋の一部の国・地域において改定すると発表した。
 理由は、昨今の世界的な経済環境によって、多くの方が困難に直面。世界中で発生している物価の上昇や、好ましくない為替の動向により、消費者の皆さんや多くの産業において厳しい情勢が続いているためのようだ。


 原因は外部環境にあって、そのせいで私達みんなが困ったことになりましたというスタンスが感じられる。ソニーと私達。それを脅かそうとする得体の知れない外部環境。
 諸悪の根源が「外」にあるように思わせ、「私達」は同じこちら側にいると思わせる。
 値上げというネガティブ要素を直視されないよう目線をかわす説明の仕方かもしれない。

 最終ユーザーに近い産業ほど資源価格上昇の影響を販売価格に転嫁しにくいという。
 資源や原料を生産している企業は、市場価格に応じて商品をおろす。そういった原料を買って製品を造る企業は、資源価格上昇分を資源以外の原価を抑えることや利益を圧縮することで、販売価格上昇を少なくするようにする。販売価格のうち価格上昇が占めるのは今のところ主に・・原料価格のみだから、利益の圧縮以外にも対応する術が多少はある。
 それに対し、そういった製品を仕入れて販売する企業が仕入れ価格上昇の影響を販売価格に転嫁しないようにしようとすれば、極端な話、利益を圧縮するしかなくなる。販売者の場合は仕入原価の上昇はすなわち利益の減少でしかないということだ。

 ソニーグループが機器の値上げするのは止むに止まれぬ決断だろう。
 そして、メーカーであるソニー以上に販売各社はもっと厳しい状況だろう。
 企業が原料の値上げ分を価格に転嫁しないように努力していると聞くと美談のように見えるが、そんなことをして倒れてしまっては元も子もない。
 資源価格の変動は下落に転じるかもしれないから、もう少し耐えてみようと思っているのであれば、そんな考えはやめた方が良い。
 耐えることは解決にはならないからだ。

 そんなことを言ったって値上げしたら誰も買わなくなるじゃないか、という恐怖があるのだろう。
 少し値上げしたくらいで買わなくなる製品は、そもそも不要なものなのだ。元来は不要なものを、これまではさも・・必要であるかのように「騙して」売っていたに過ぎない。
 本当に必要なものや、本当に魅力的なものであれば高くても買う。というか買わなければならない。
 高くしたら買われないようなものやサービスを何となく消費する時代は終わったということだ。
 その一方で「買う」というマインドが失われるようなことになってはいけない。買うことで企業に収益が生まれ、それを適切に従業員に還元することで次の「買う」が生まれる。そういった好循環にしなければならないからだ。

 本当に必要なものや、本当に上質なものを適切な価格で供給し、消費する。無用に製品バリエーションを広げる必要は無い。目先だけ良さそうに見えてすぐに使えなくなるような製品はいらない。修理部品が無いから修理出来ませんというメーカーのサービスはサービスではない。
 流行を作らなければ続かないような産業は、流行にウェイトを置きすぎないように注意すべきだ。そして私達も仕掛けられた流行に騙されてはいけない。

 ちなみに、密かなソニーファンの私が値上げと聞いてポチってしまったことは、決して流されたり騙されたりした訳では無い(と思いたい)。

おわり

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