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給料日

 物価高騰の話題に関するテレビ番組内で、スーパーで買い物中のお年寄りが取材を受けていた。二ヶ月に一度の年金支給日だから贅沢をしようと思っていると、鰻の蒲焼のパックを手に取っていた。結局、高すぎだと思ったのか買うのを諦めていた。賢明な判断だ。

 これを見ていて、ふと思った。
 給料日だから贅沢しよう的な話を良く聞くが、少し違うのではないかと。給料日前になると家計のやりくりが厳しくなっているのだとしたら尚更だ。
 給料日にお金があるからと言って御馳走を食べてしまうから、給料日前にキツキツになる。むしろ1か月間節約に努めて、給料日前に残っていたらそれを利用して贅沢をすれば良い。それは理想論だと言われるだろうか。

 手元にあると使ってしまうのは、確かに分からないでもない。無駄遣いをしないまでも、少なくともお金に対する判断が緩くなる。無意識に財布の紐が緩む。計画的にお金を借りることは簡単でも、それを計画的に使うのは難しいのだ。特に使途が明確でない時には。

 あれも欲しいこれも欲しい。けれどお金が無いとなれば、手に入らない。そうなるともっと欲しくなる。だからお金を工面する。手元にお金が入れば何とかしてそれを使いたくなる。
 それが市場主義経済の末端で起きていることだ。欲しいと思わされているのもそうだし、消費することに快感を覚えるのもだ。ある種の集団洗脳なわけだが、私たちはそれを当たり前のこととして受け入れている。
 誰かが持っていると聞けば欲しくなるし、限定品で手に入りにくいと聞けば欲しくなる。手に入れてしまえばその消費欲は一気に減退するから、手に入れる事自体が目的化していたのだと知ることになる。それでもしばらく経てば渇望感に襲われて無駄遣いをしたくなる。それもこれも、お金が手元にあればの話だ。

 これの難しいところは、手元のお金の大小はあまり関係が無い点だ。
 欲しい気持ち+手に入れられない事情(お金が無いなど)=衝動買いの助走になる。欲しかったものが手に入れられるほどのお金が入らなかったとしても、手に入る範囲の別のもので消費してしまうのを抑えるのはかなり難しいことだ。

 怖いのは、いまどき現金で買い物しないのが普通になっていることだ。
 つまり、収入がある「見込み」だけで購入してしまう。出来てしまう。これは麻薬だ。あまりにも当たり前になってしまっていて誰もこれを麻薬だとは叫ばないが、かなり危ない。
 金融リテラシーなどと言う前に、お金と消費と物欲と市場経済について理解しておかなければ、きっといつか痛い目に遭う。

おわり

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