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機械(AI)が世界を支配するSF小説「プレイヤー・ピアノ」の感想文

あらすじ・世界観

戦時中に導入された、「生産性・効率性重視」の価値観と人的資源を節約するための「機械化」はアメリカを勝利に導いた。結果、その価値観と機械化はさらに勢いを増してアメリカを支配した。

機械を設計する「技術者」、機械や工場を管理する「管理者」には、高い地位が与えられたが、そうなれなかった人々の仕事は奪われた。エリート以外の市民は、平和な軍隊に入るか、道路補修工事の作業員(単調な作業の繰り返し)をするかのどちらかの道しかない。

エリートになるためには、決められた試験に合格し、IQが高いことなどを証明しなければならない。試験の結果は「カード」に記録され、機械によって自動的に処理される。試験に合格すれば、立派な職業が与えられるが、落ちれば一生落ちこぼれのまま。

機械によって計画的に大量に生産された商品は、エリート以外も豊かにしたが、多くの市民は情熱をかけて取り組む仕事を失い、機械に対する恨みを募らせていた。

感想

AIが世の中を賑わせている今、ちょうど読めてよかったと思う。とても面白かった。

機械と人間の関わり方について(世界観)

機械との関わり方によって世界が二分される。使う側はさらに発展し、奪われる側は生きがいを失う。

機械を作っていた技術者が、自分の仕事を代替する機械を生み出してしまって無職になったシーンが面白かった。科学の発展は止まらない。

機械は便利だが、人間の幸福について理解しなければ、人間の幸せのために機械を使うことはできない。

プレイヤー・ピアノにおける機械は、今のAIと似ている。

今、AIを積極的に使ってみる人と、そうしない人がいると思う。もういろんなサービスにAIが導入されているから、使っている人が多いのかもしれない。

使ってやりたいことがある人と、興味はあるけど何をしたら良いのかわからない人がいる。「AIを使って〇〇をしたい」の〇〇があることは当たり前ではない。それが難しいな、と思っている。
UIデザイナーの仕事だと、AIを使って効率化できる部分があるので便利だけど、職業によってはAIを使いにくいこともありそう。

AIを使うことではなく、AIを使ってなにをしたいのかということが重要(だと思った)。

人間の仕事と情熱について(仕事)

スタンダール『恋愛論』を読んだり、羽生結弦のアイスショーを見たりして、最近、私の中で「情熱」が一つのキーワードになっている。

人は、仕事に情熱を傾けることができる。仕事は、人が世界と関わっていくための手段の1つ。情熱を傾けることができるのは、誰か他の人の役に立てるからかもしれないし、世界に関わることで、より一層自分のことがわかるようになるからかもしれない。

私にとって仕事は、私の人生に意味を与えてくれるものだった。しかし、社会人4年目になって、必ずしも意味を与えてくれるわけではないことに気づいた。やりがいを感じているときはよいが、自分のやったことを否定されたり、自分がやっていることの意味を感じられなくなると、落ち込む。

登場人物たちのリアルな性格について(人間)

登場人物たちがたくさん出てくるが、その一人一人が個性的で、リアルで、とても面白かった。性格診断オタク的には、MBTIとかエニアグラムとかをなんとなく想像できて興味深かった。

「あー、こういう人いるよね!わかるわかる!」という感じ。それぞれの人物が違和感なく絡まり合って、一つの物語を形作っていくので、とても読みやすいし面白かった。

特に、主人公であるポールが、かなり優柔不断なところが良い。信念をもって突き進むタイプではなく、社会に対しても自分に対しても懐疑的な気持ちを持ち続けながら、周りに流されていく。(MBTIだと、JではなくP)自分と似ているから、共感できたのかもしれない。

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