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二つの「SEIZE THE DAY」

自分で言うのも何ですが、結構ブログ好きだ。最初のブログは2005年5月頃。ZOPE(というPythonで記述されたCMSシステム)上で動くブログシステムCOREBlog+自宅サーバーでブログ運営を始めた。残念ながら当時のブログは残っておらず、悔やんでも悔やみ足りない。

今現在は、noteを含めて3つのブログを運営している。投稿の古い順に紹介すると以下の通り。折角なので、紹介も兼ねてどういう使い分けをしているかについて書いてみることにする。

ざっくりまとめました(2018-) 
 COREBlog無き後にTumblrで書きためたものをWordPressに移行
 趣味、IT関連について
AirT・Tシャツはメディアだ(2020-) 
 AirTサイトをWordPressで構築 
 Tシャツ(紙のTシャツ、リアルTシャツ)に関する話題
●note(2020-) 
 アカウント取得後放置していたのを再開 
 話題別ではなく理念や自分の信条について

これまでも話題別に複数ブログを運営したことはあるのだけど、そうであると自分の信条的なことも話題別に書くことになってしまい、とはいえ、どんなことに取り組んでいても信条の根幹みたいなものは実は変わらないので、信条関連はまとまっていた方が読み返すにはいいのではないか、それならば実験的にnoteで書いてみようと思った次第。

そして、理念や信条を表す言葉をタイトルにつけたいと思って、SEIZE THE DAYと名付けた。ソール・ベローの小説「Seize The Day」(邦題:この日をつかめ。ちなみに、その日をつかめと訳されたこともある)にちなんだ。

昔、米文学の授業で知り、それ以来日本語タイトルが謎でして、ずーっと頭の片隅に引っかかっていた。それから随分時が経って、テレビで見た映画のセリフで「Seize the day」と諭すように言うのが聞こえてきた時に衝撃が走った。映画は「Dead Poets Society(邦題:いまを生きる)」。そういうことだったのか。

いまを生きるというのを別な言葉で置き換えると、(自分なりに)ちゃんとする、コミットする、一生懸命やる、腹をくくる、逃げない、ブレない、とかだろうか。そういう意味だと知ってからは、映画でロビン・ウィリアムズが生徒たちに諭すように言う「Seize the day」が頭の中でリフレインしている。

題名を忘れずにいた「この日をつかめ」だが、残念ながら内容は全く覚えておらず。中古で購入し読んでみた。例えて言えば、一時期小林信彦が書いていた暗い小説の読後感と似た感じを覚えた。父親にパラサイトしているモラトリアムな中年男の理想と現実。何をやっても途中で放り出す(と周囲に思われている)。その過程で起きるトラブルを消化できずに、反芻している描写が痛々しい。

小説の中で「Seize the day」が出てくるのは、主人公が投資話に乗せられてしまうのだけど、その投資話を持ちかけるタムキン博士の言葉として。

ぼくは金をとらないときがいちばんいい仕事ができる。ただ愛情からやるとき、金銭の報酬を受けないときがね。そういうとき、ぼくは世俗的な力の影響からぬけ出ている。とりわけ金の影響から。精神的な報酬こそぼくの求めるものなんだ。人びとを『いま・ここ』という時へ導き入れることができればいい。本当の世界、つまり現在という瞬間へ。過去はもう役にはたたない。未来は不安でいっぱいだ。ただ現在だけが、『いま・ここ』だけが実在のものなんだよ。この時をーーーこの日をつかめ、だ。

映画「いまを生きる」の良い印象が覆されてしまう感もなくもない。ここでの「Seize the day」を言い換えると、好機を逃すなというフレーズが真っ先に思いつくが、映画から感じた印象の、逃げない、ブレないなども当てはまる。

加えて、何度も読み返せる小説だからこそ、引用したタムキン博士の言葉からは、後半の過去未来現在に対する説得力に比べると前半部分には恣意的な怪しさがあることが理解できる。が、これがリアルな会話だったらと思うと怖い。後半の説得力に流されてしまうことって実は意外とあるのではないだろうか。

投資にせよ、住まいの賃貸契約にせよ、食事の献立にせよ、毎日が選択の連続だ。そのような選択の連続に生きる我々の最終的かつ最大の相談相手は自分の本心だ。Seize the dayには自分に正直になることも含まれるのではないだろうか。と書いたのは、選択の連続が常態化しているのでテキトーに選択していることが多いと思ったからなのだけど。

小説「この日をつかめ」について調べていて判ったことを一つ。
「Dead Poets Society(いまを生きる)」は1989年の映画。生徒たちに「Seize the day」と言っていたロビン・ウィリアムズは、その3年前の1986年に映画化された「Seize The Day」で投資話に乗ってしまう主人公を演じていた。邦題は「ミッドナイト・ニューヨーカー」。邦題までついているが日本未公開で、DVD化されておらず、VHSのみ存在するという。セリフ「Seize the day」を最初の作品では聞き手として、次の作品では話し手として扱うことになったというのも不思議な話。彼の生前にそれについて聞いた人はいないのだろうか。

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