全赤サンマにおける役牌のさばき方
いきなりだが、フリー雀荘やザンルールの全赤サンマ(※)前提でこちらの何切るに答えていただきたい。
(※)ここでは5が全てドラ扱いでツモ損なしの三人麻雀を全赤サンマと呼称している。詳しくはこちらの記事をご参照いただきたい
東一局 東家 原点 6巡目 ドラ1m
2378s22567789p西発
西は3枚切れ、発は生牌
打点こそほどほどだが、両面×2のなかなか良いイーシャンテンだ。
当然、切る牌は西か発の二択。
どちらも利用価値のない牌なので、危険牌を先切りする意図で発を切る方が多いかもしれない。しかし、これは四麻の打ち方だ。
答えは西切りだ。それもかなり明確な差があると私は考える。
全赤サンマにおいて生牌役牌先切りの安牌残しは損な選択となることが多い。
以降で詳述するが、絞りは放銃時の放銃打点を上げることと引き換えに、和了率を引き上げ、放銃率や被ツモ率を引き下げるアクションであり、和了の価値が上がり、リーチの打点上昇価値が下がるルールほど絞りが有利になりやすいからだ。
危険な牌を先に処理する四麻的な打ち方から脱却し、サンマにアジャストした役牌のさばきを身につけようというのが本稿の趣旨だ。
そもそもなぜ、発を残して西を切るのが正しいのか、具体的には以下の2点だ
1 早く役牌を切ると他家の和了率が上がり、自分の和了率が下がる
2 四麻と比較して、役牌を切り遅れて、その牌でリーチに放銃になることのリスクが相対的に小さい
理由1から説明しよう。
全く難しい話ではない。役牌を切ってもし鳴かれれば相手の手は進む。手が進んでテンパイに至れば、自力で有効牌を引かずとも他家の捨て牌をロンできるようになるので、速度が大幅に上がる。結果的に他家はあがりやすく、自分はあがりにくくなる。それだけのことだ。
当たり前すぎるほどに当たり前の話であるし、四麻でも通用する理屈だ。多くの人が理解できていないのはサンマにおける、他家の速度アップの重みと自身のアガリを潰されることによる機会損失の重みだ。
以下は前回のnoteでも掲載したサンマにおける1フーロ時点のテンパイ率だが、6巡目でも35%以上ある。
6巡目における役牌のポンは3回に1回以上はポンテンということだ。四麻では到底考えられないスピード感である。
11m567789s78p発発北
例えばこんな感じのポンテンを取れる他家が6巡目の段階でいても全く文句はいえない。
ここで発ポンを許したら次に69pを掴んだ瞬間に放銃は免れない。もちろん、相手のツモでも、もう一人の放銃でもこのチャンス手は蹴られてしまう。発をギリギリまで絞っていれば相手が69pを引く前にこちらが1469pを引ければ互角以上の戦いに持ち込める。西切りと発切りで自分があがりやすいのがどちらかは火を見るよりも明らかだろう。
一方でこれが四麻であれば、6巡目でここまでキレイなポンテンが入っていることはそうそうない。相手に先制テンパイを許し、こちらの余り牌を当たられるリスクよりも、切り遅れた役牌で高い放銃に繋がるリスクを避けた方がよいことも多いだろう。
さらに言えばサンマは3人に1人があがれるゲームなのだから、他家にあがられたときの機会損失は四麻より大きい(四麻ならどうやってもあがれないことがサンマより明らかに多い)。
四麻においてもアガリトップなど、和了価値が極めて高いときは、役牌を絞ることも多いが、サンマはほとんど毎局、そういった状況に近い役牌の捌きが求められるということだ。
なお、役牌については相手に重ねられる前に切るという考え方は当然ある。
しかし、設問は6巡目だ。このくらいになると字牌、端牌の整理がある程度進んでおり、重ねることを目的として孤立役牌を浮かせているケースはかなり減ってきている。
以下はみーにん本からの抜粋だが、見ての通り、サンマにおいて6巡目ともなれば、非ドラの役牌が鳴かれる確率はほとんどピークに達している。
要するに6巡目にもなって、重ねられる前に切るなどと言ってもほとんど手遅れということだ。それならば、鳴かれそうな役牌をギリギリまで絞って、相手の手を遅らせる方がよい。
感覚的な話になるが、私でも牌姿が同じで配牌ならば発を切るだろう。重ねられる前に切って鳴かれる確率を下げる利益が、鳴かれたときの他家速度上昇の不利益を上回るという考えだ。前述のとおり、ロンを許すイーシャンテンからテンパイでの速度上昇が最大の問題であり、相手のテンパイまでにこちらが好形リーチを打てる見込みが大であれば、鳴かれたとしても自他の和了率への影響はそれほど大きくない。 速度とは相対的なものなのだ。
理由2も難しい話ではない。考えてみれば明らかだろう。
例えば、以下の形から発を鳴かせたとして、
11m567789s78p発発北(ドラ1m)
ドラ3で満貫のテンパイとなる。これに対して相手が69pを自力で引いてリーチをしてきたとして、リーチ発ドラ3の満貫、一発裏が絡んで跳満といったところで、放縦時の失点期待値は一発裏込みで10000点+祝儀。インフレルールの全赤サンマにおいて、この副露とリーチの2000点+祝儀の差はそれほど大きなものではない。
これが四麻だったらどうだろうか。発を鳴かせれば3900点のテンパイ(5は黒の想定)、69pを引いてのリーチへの放銃は大抵の場合、8000点+祝儀くらいだ。この4100点の違いは四麻において非常に大きい。
全赤サンマは5や抜きドラでだいたいのあがりが満貫〜倍満くらいのレンジに収まるので、1飜の価値は基本的に2000点(親なら3000点)であり、一発裏も込みで副露手とリーチの差は3000点くらいだ。
一方で四麻は符の絡みもあり、役牌絡みのリーチで特に多い、ドラ0〜2の形だと副露手とリーチで3000〜4500点くらいの差がつく。
得点価値の違いを加味すると、四麻におけるリーチへの放銃のリスクは圧倒的に大きい。
このくらい門前と副露手の危険度に差があると、さすがに危険牌先切りでの処理がセオリーになる。
この四麻感覚からの脱却ができないとサンマでは結構損をしがちということだ。
最後にこれまでの議論を踏まえて、以下の何切るについても考えてみたい(全て発は生牌の想定)
①東一局 東家 原点 6巡目 ドラ1m
22378p22567789s発
②東一局 東家 原点 12巡目 ドラ1m
22378p22567789s発
2p、2sは生牌
③東一局 東家 原点 6巡目 ドラ1m
23667p22567789s発
④東一局 東家 原点 6巡目 ドラ1m
23566p22567789s発
⑤東一局 東家 原点 6巡目 ドラ1m
22378p22567789s発
2sが2枚切れ
冒頭の問題は打牌候補の発と西がともに利用価値のない、完全な余剰牌だったわけだが、今回はいずれも発を切れば完全イーシャンテンだ。要するに受け入れを狭めてまでどこまで役牌を絞るの?という趣旨の問題だ。
場況なしだと何とも言い難いところはあるし、多分に感覚的なのだが、基本の答えとしては、①発②2p③発④発⑤2pくらいだろうか。
簡単に解説すると
①
受け入れ4枚の差を重く見た。2pも後々切る際にそこまで危険度が高くない。
②
12巡目ともなれば、ポン→ロンのリスクを考えると、もう安易に発は切れない。恐らくだが、受けを狭めてでも発を絞った方が和了率が高い。
③
暗刻ができたときにピンフも5の受けも消えて、かなり打点の魅力が落ちるのだが、それでも完全イーシャンテンに魅力がある。9巡目あたりになると、かなり6p切りに傾いていく感覚がある。
④
暗刻ができた形が、5が出ていく上にピンフもなくなるのでかなりしょーもないし、6pの危険度も高いので、6pを切りたいのは山々だが、2356の2度受けの形が少し弱いので、さすがにフォローが欲しい。抜きドラの後引きで案外打点がついたりもするので、一応、目一杯手を広げておく。
なお、実戦ではこのくらいの形になると他家の捨て牌の濃度や6pの危険度を見ながら完全イーシャンテンを諦めることも多い。
また、2度受けのない以下のような形なら両面×2で十分手が広いこともあり、役牌を絞って両面固定することがさらに多くなる。
④-2 東一局 東家 原点 6巡目 ドラ1m
22566p23567789s 発
⑤
2sの2枚切れで既に縦フォローの価値がかなり落ちた状態。これなら発は絞った方がよいと思う。1枚切れならまだ縦フォローは残す。
全赤サンマにおける役牌の絞りについては、統計などをベースにした定量的な説明が難しく、どうにも感覚的な議論になってしまう部分は否めないのだが、少なくとも、門前と副露の相対的な差が小さいゲーム性から、通常の四麻よりも絞りの重要性が高いことは間違いない。これが、祝儀牌が多く含まれるルールやツモ倍の東天紅サンマなど、被ツモと被ロンの失点の差が小さいルールになれば、さらに絞りの重要性は増してくる。
大抵の方は麻雀それ自体の導入は四麻であり、サンマを始める際のハードルの一つが四麻感覚からのアジャストだろう。
手組の考え方について、意外とルールによる差はないのだという話を以前の記事でしたが、役牌の扱いについては結構考え方が違うところなので、本記事がこの辺りのアジャストの参考になれば幸いである。
追記
4巡目辺りまでの最序盤における字牌+19mの切り順についても追加で解説しておく。
基本的には有用なものから残せばよい。ホンイツを視野に入れない手であれば、オタ風(他家のホンイツケアで19mより先に切る)→19m→三元牌→自風or連風牌の順だ。ただし、手牌が最初から字牌の重なりを必要としないほどに整っているならば、他家に鳴かれたくない役牌から切ってしまおう。
上記で解説した絞りの意図から、5巡目あたりからは、手格好とも相談しながら、19mとオタ風、自風と三元牌の優先順位を逆転させて絞っていくことになる。
なお、ここでの巡目の数字については極めて感覚的でいい加減なものなので、あまり真に受けないで、考え方の方向性だけ理解いただければ十分だ。
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