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全赤サンマを強くなりたい人はどうやって勉強するべきか

本稿はタイトルのとおり、フリー雀荘やザンルールの全赤サンマで強くなりたい人はどうやって勉強するべきかということをテーマとした記事である。
結論から先に書いてしまうが、ウザク本、すなわち「傑作「何切る」300選」、「定石「何切る」301選」(いずれも、著Gウザク氏、編福地誠氏)の何切るを解いて、わかるようになるまで繰り返せ。これにつきる。
4面子1雀頭を作って和了を目指す麻雀の牌効率においてルールの違いなど相対的には些末な問題であり、現時点で最高の何切る本のウザク本をやっておけば全赤サンマだって強くなれるということだ。
これで納得できた人は本稿のこの先はほとんどを読み飛ばしていただいて構わない。
本稿の最後(グラフの辺り)で全赤サンマにおける最重要技術の一つである、一副露の他家への対応について説明しているので、もしよかったら、こちらも参照していただけると幸いだ。自分でいうのも口幅ったいがかなり有益な内容だと思う。

昨今、都内では三人麻雀(以下、サンマ)のフリー雀荘が増えている。サンマは四人麻雀(以下、四麻)と比べて展開がスピーディで、高い手もバンバン出て景気の良い、とても楽しいゲームだ。
雀荘側から見ても一般的な四麻と比べて卓組が圧倒的に容易でオペレーションが楽、卓の回転も早いのでゲーム代も沢山入ってくるといい事ずくめだ。
昨今は高田まさひろ氏が立ち上げた三人麻雀競技団体ザンリーグが会員数を大きく伸ばしており、サンマのプレイヤー人口はここ2年くらいでかなり増えているのではないかと思う。
このような流れを受けて、フリー雀荘でサンマデビューをしたいと考えている、あるいは、すでにデビューした人は多くいるはずだ。あるいはザンのかわいい女流に釣られて入会を目論んでいるといった人もいるかもしれない。
ここでサンマデビューをした四麻経験者にとって一つ問題が出てくる。フリー雀荘やザンのサンマは巷の一般的な四麻とはあまりにルールがかけ離れていることだ。
サンマの四麻との相違点として、まずは、3人でプレイする(当たり前)、マンズの2から8が使われない、チーができない、抜きドラがあるといった点が挙げられる。
これらのルールへのアジャストだけなら天鳳や雀魂のようなネット麻雀で学べるが、更に多くのフリー雀荘やザンルールでは、5が全てドラ扱い(全て赤牌や祝儀のつく金牌などになっている)であり、しかもネット麻雀と異なり、ツモ損ルールにはなっていない。本稿では主にフリー雀荘やザンルールの5が全てドラかつツモ損なしのルールを全赤サンマと総称する。なお、全赤サンマでは流局は14枚残しではなく、ドラ表の隣まで取り切りとすることが多い。
ここまでルールが違うと、ネット麻雀で全赤サンマにアジャストというのもなかなかキツいものがある。
更に言えば四麻を勉強したいと思った人は書店に行けば参考になる戦術書が多数あるし、ネットにも参考になる記事がいくらでもある。これに対して全赤サンマの教材は書籍、ネット含めてほとんど見当たらない。「数をこなして負けて覚えるしかないの?」と途方にくれてしまった人も少なくないはずだ。
本稿では全赤サンマでどうやって強くなれば良いのか途方に暮れている方向けに、全赤サンマの勉強に使える教材とその使い方について説明する。
想定する読者は、四麻において天鳳で鳳凰卓、雀魂なら雀聖3には届かないくらいのレベル感でサンマデビューを目論んでいる人達および全赤サンマを始めたが、どう勉強したらよいか途方にくれている初~中級者だ。四麻で鳳凰卓まで行けるくらいの人達やサンマ上級者にも本稿はそれなりに有益とは思うが、そのくらいの人達は自力でもどうとでもなるだろう。

さて、偉そうに講釈を垂れるお前はそもそも何者なんだという点が気になる方もいると思うので、自己紹介すると、私は単なる麻雀好きのサラリーマンのおっさんである。
普段は麻雀警察こと、ひろー氏が経営する大久保のサンマフリー雀荘zingで打っている。
zingは全赤サンマとしてもかなりベーシックなルールを採用しており、本稿執筆時点での筆者のzingにおける通算成績は
3574戦 平均順位1.96 1位1287回-2位1153回-3位1134回 
1戦あたり平均得点(祝儀込、ゲーム代除く)6.2点
となっている。
大半の人はこの数字を見てもチンプンカンプンだと思うが、まとまった打数をこなしているzingのメンバー、打ち子、常連の中で私と同等以上の収支を残している人は恐らく、1人か2人くらいだと思う。
ちなみに天鳳サンマもいくらか打っていた時期があり、そのときの成績はこんな感じだ。

天鳳ランキングサイト(仮)より

最後に天鳳を打ったのは5年くらい前の話なので、今はこの頃よりもう少し強くなっていると思いたいのだが、ともかく、この辺りの数字も含めて、トップオブトップの打ち手というわけではないものの、普通に強いサンマ上級者くらいは自称してもよいと思っている。
偉そうな講釈を垂れるに値するレベルかは微妙なところだが、そもそも世間には全赤サンマ向けの解説があまりに少ないので、できる誰かがやるしかないということで、本稿の執筆を思い立った。
なお、筆者はひろーさんを始め、幾人かのザン関係者の方と仲良くさせていただいているが、ザンリーグの会員ではない点、申し添えておく。

前置きが長くなってしまったが、本題に入ろう。最初に書いたとおり、結論はウザク本を読め。これで話が終わっている。
ウザク本とは、Gウザク氏福地誠氏が生み出した名著、「傑作「何切る」300選」(以下、青本)および「定石「何切る」301選」(以下、赤本)を指す。
ウザク本には、青本に300問、赤本に301問という膨大な量の何切るが収められており、その1問1問に具体的なテーマ、作意が与えられている。更に似てるけど少し違う形の何切るをまとめて出題することで、その作意を読者にわかりやすく伝えてくれる構成となっている。
しかも、その問題は複数の実力者の間で見解の一致した「正しい」答えの存在する問題ばかりとなっている。メリデメがよくわからないから答えは趣味みたいな、あやふやな問題は存在しないのだ。
質、量とも優れ、これさえ学べば強くなること間違いなしの何切る問題集の決定版だ。なお、Kindle Unlimited会員なら無料で読める。激アツだ。

いやいや、四麻の何切る本にはそもそもサンマには存在し得ない牌姿が多数紛れているし、何切るでお馴染みの三色同順もサンマには存在しない。しかも5が全部ドラの全赤サンマで一般的な四人麻雀の何切る前提の手組が役に立つのか?といった疑問を持たれる方もいるかもしれない。それでは、実際にウザク本を使って確かめてみよう。

こちらは赤本からの抜粋だ。マンピンソー三色の中張牌で構成されており、サンマでは存在しえない牌姿となる。ピンズの部分の形がややこしく、何を切るべきかピンと来ない方もいると思う。回答は以下のとおりだ。

少なくとも回答を読めば、この問題の正解については皆様それなりに納得できたと思う。それでは全赤サンマを前提に、牌姿をこのように変化させたときに回答はどうなるだろうか。
Q 7-2 345566777p33478s 東一局 東家 7順目 ドラ7s
Q 8-2 234556777p33478s 東一局 東家 7順目 ドラ7s

もちろん、Q 7-2は4s、Q 8-2は5pが正解だ。なぜこの選択が正解になるのかというのもウザク本記載の解説と実質同じだろう。8-2については全赤サンマなら2pを切ってドラの5pを残したい人もいるかもしれないが、さすがに1p受け4枚の差は大きい。69sが埋まったときに、広い147p3s待ちと高い25s待ちを選べるのも魅力的だ。サンマでは抜きドラによって事後的に打点十分となることも多く、また全体の手が早いのでめくり合いになりやすいことから、あがり率を高められる広さの利は大きい。
実のところ、この問題はルールやドラが何かは正解とはほとんど関係がない。少なくとも明らかに受けが広く最終形が強いのはQ7に準じる牌姿なら4s、Q8に準じる牌姿なら5pだ。
受けが広く最終形が強い打牌より優れた打牌はいかなるルールであろうとあまりない。
それでは次の例題だ。

こちらも赤本からの抜粋だ。Q40とQ41で違うのはマンズが4連形か中膨れか。4連携と中膨れはいずれも好形テンパイの種として、皆が大好きな形だが、この入れ替わりが打牌にどのような影響を及ぼすのかというのがこの2問のテーマであろう。回答は以下のとおり。

4連形はノベタン形のため、ピンズ部分を両面含みの233の形にしておけば、ノベタンで雀頭を作る25m引きで14p待ちの両面テンパイにとれるし、14pが埋まってもノベタンの十分形でテンパイするので、25m7pを引いたら愚形テンパイになってしまう5pのくっつき形には取らない。また、5p切りなら、5m引きや4p引きは高め三色のテンパイであり、広さだけでなく打点的な魅力もある。
これに対して、マンズが中膨れのQ41でピンズを233の形にとると、124pの三面張に取れる3p以外で14pの両面テンパイになるのは2枚しかない4mを引いたときだけだし、14pを引いても激弱の2枚使い単騎テンパイにしかとれない。それならピンズを335の形で3pを雀頭固定して、5p周りのくっつきテンパイをとれるのがベターというということだ。
これを踏まえて全赤サンマを前提に、以下の問題の回答を考えてほしい。
Q 40-2 2345s2335789p111m 東一局 西家 8順目 ドラ1m
Q 41-2 3445s2335789p111m 東一局 西家 8順目 ドラ1m

どうだろうか。オリジナルと比較して、三色やタンヤオなどが考慮する要素からは消えているが、これでもやはりQ40やQ41とほぼ同様の理由でQ40-2は5p、Q41-2は2pで問題なさそうだ。また、仮にここからドラを1m以外に変えても結論は変わらないだろう。
やはり広くて強い最終形の取れる選択にルールの影響などほとんどないのだ。そして、ウザク本における正解は大抵、広さと最終形の強さにプライオリティが置かれている。

結局のところ、四麻もサンマも麻雀は麻雀ということだ。4面子1雀頭であがり形をつくる牌効率の本質は大きく変わらない。そして牌効率はルールを問わず、麻雀における最重要技術だ。
従って、サンマの牌効率を勉強したかったらまずは教材の充実した四麻の戦術書などで牌効率で学び、必要ならサンマ仕様のアジャストすればよいということだ。そして、そのアジャストはそこまで難しいものではない。
私の見るところ、ウザク本に掲載される問題の2/3くらいはちょっと牌姿を変えることで、作意を生かしたまま、サンマの何切るにシフトできるし、その場合にサンマか四麻か、あるいは全赤サンマか天鳳サンマかなどで答えが変わることもあまりない。
また、サンマ前提での直接的な読み替えが難しい牌姿の問題も、問題にこめられた作意はサンマにも通じる普遍性を有していることがほとんどだ。
従って、ウザク本をスラスラ解けるようになれば、サンマの牌効率も大幅に改善すること請け合いである。

さて、ここまでウザク本を絶賛してきたが、この本にも欠点はある。それは難しいことだ。そこそこ読み込んだ私でさえ、全問正解は今でもできないと思う。一応、赤本は少し優しいということになっているが、赤本も十二分に難しい。これは実際、著者のG・ウザク氏も赤本の前書きで認めている。
こんな難しい本をシコシコ読み込むのは結構な苦行であり、一度通しで読んだら別の本などに浮気したくなるかもしれない。
しかし、本当に強くなりたかったら、だいたいの問題について答えが腹落ちするまで、ウザク本を繰り返し解き直し、読み込んだ方が良い。
勉学というのは大抵、量をこなさないと修まらないものだが、そこで使用する教材は必ずしも量を必要とはしていない。むしろ良質な参考書を繰り返し読みこんで学ぶ方が効率が良いのが一般的だと思う。
私は一応受験エリートの端くれ(唐突な自分語り)なので、こういう話は得意分野だ。騙されたと思って信じて欲しい。
そもそも、牌効率というのは難しいのだ。難しいのだから、学ぶのが大変なのはどうにもならない面はある。
10年くらい前は牌効率なんてある程度以上のプレイヤーなら誰でも大差なし、押し引きこそ重要といった論調が多かったように思われるが、昨今では牌効率の重要性、そして牌効率的に優れた打牌選択の難しさというものが以前よりも見直されてきた。上級レベルのプレイヤー間でも明らかに牌効率で差がついているのだ。
そしてウザク本はそんな牌効率を学ぶ教材の決定版だ(断言)。
ウザク本以上の参考書は私の知る範囲では存在していないので、本気で強くなりたいならぜひトライしてみてほしい。

牌効率はウザク本で良いとして、牌効率と並ぶ麻雀の最重要要素である押し引きについて学べる戦術書等はないかというと、これは遺憾ながらあまり良いものがないと言わざるを得ない。
全赤サンマと四麻あるいは天鳳・雀魂サンマは打点のレンジや被ツモ時の負担などがあまりに違いすぎるため、四麻や天鳳・雀魂サンマの押し引きの微調整レベルではとても全赤サンマには対応できない。
これは正直、負けて体で覚えてもらうしかない部分がある。
強いて言えば、全赤サンマは被ツモ時の失点が大きい(特に親番)ので、放銃と被ツモの差が相対的に小さい。従って、四麻や天鳳・雀魂サンマと比較して圧倒的に押しが強い。少なくとも四麻で押すなら全赤サンマでも押す、天鳳で押すなら全赤サンマでも押すといった形で、基準を作ることはできるかもしれない。

最後にサンマの戦術書として有名なみーにん氏、福地誠氏の「データで勝つ三人麻雀」について触れておく。
これが全赤サンマを学ぶ上で有用な書籍かどうかという質問については、答えはYesだ。
ただし、本書は細かい数字が多く、かなり目が滑る内容であり、読み込むためのハードルは高い。また、基本的には天鳳のデータをベースとした書籍であり、ツモ損なしなど、いくつかのルールへの対応もなされているものの、全赤サンマに再解釈するのはキツい部分も多いため、特に押し引きの情報についてはかなり使いにくいかもしれない。ただ、みーにん本のツモ損なし・抜きドラありは比較的全赤サンマに近いので、ここをスタートラインに押し引きの基準を作る一助とはできるだろう。
押し引き以外の、危険牌の放銃率や待ちの種類毎の和了率などはかなり参考になる。これは頭に入れるというより、疑問が生じたときに辞書的に参照するのがよいだろう。
なお、前述のとおり、巷の全赤サンマは流局時に14枚残しの天鳳と異なり、ドラ表示の隣まで取り切りのため、流局がかなり少ない。
従って、本書における待ちの形毎の和了率などは全赤サンマを考える上では、あくまで参考値である。ただし、流局時にどこまでツモるかで、待ちの良し悪しの序列が覆ることはあまりないだろうから、待ち取りの考え方には十分参考になる。19m&字牌の地獄待ちに関してはアジャストした方がよいだろうか。想像はつくと思うが、取り切りルールの字牌地獄待ちはなかなか和了率が高い。
とはいえ、上記のような形で本書を活用するのは、数字に強いオタク気質な人間でなければキツいところがあるだろう。万人には勧めがたいアプローチだ。

しかし、そこまでオタッキーでない人にとっても、あらゆるルールのサンマをプレイするにあたって、絶対に抑えて欲しい超重要な情報が一つ本書には含まれている。
みーにん氏、福地誠氏には申し訳ないが、この情報について、本稿で抜粋、解説してしまう。それがこの表だ。

見てのとおり、サンマにおける1副露時のテンパイ率だが、これは超重要な情報である。
そもそも1副露への対応は全赤サンマで最も成績に直結する技術の一つと私は考えている。
リーチだったら少なくともテンパイしていることは明らかなので、対応が比較的わかりやすい。
全赤サンマにおける門前の好形テンパイはリーチがあまりに強いので、ダマテンは愚形が多く、ケアが緩くてもなかなか当たらないので事故に繋がりにくい。
2副露以上もだいたいテンパイ前提で対応してよいし、2副露以上は役や打点のレンジがわかりやすいことも多く、これも対応がしやすい。
ところが、1副露はテンパイしていないことも多いため、かなりファジーな押し引きが求められる上に、出現の頻度が高い。
そして、その1副露時の対応の基礎となるデータが、上記の表だ。これはルールは関係なく、ほとんどのサンマで適用できる数字だろう。
この数字はざっくりでいいので頭に入れておいたほうがよい。
もちろん、捨牌の濃度によって、この数字をアジャストする必要はあるのだが、まずはベースとなる平均を知らねばアジャストもクソもないだろう。
8巡目以降で1副露したら、50%以上テンパイという数字が出ている。これは四麻に慣れた多くの人の感覚よりかなり高い数字ではないだろうか。サンマはかくもスピーディなゲームなのだ。
自分の手が苦しい形なのに、50%以上テンパイの1副露者相手に無防備に危険牌を切り出して、しょうもない失点というのは本当にもったいない。
しかも、放銃してもノーテン罰符と大差ないことも多い四麻と違って、全赤サンマの副露手は高い。満貫未満ならラッキーで、倍満くらいなら珍しくもない。
ということで、1副露対応は全赤サンマの成績に直結する超重要技術だ。1副露の手に対してほとんどダマ同様のナメたケアしかしてこなかったのであれば、これを改めて、上記の目安のテンパイ率を踏まえて、苦しい形からの不用意な放銃はしないようケアするだけでも、かなり差がつくだろう。
ここに捨て牌の濃度評価などを組み合わせられるようになれば、無駄な失点をかなり減らせるだろう。

ウザク本をやれと、全赤サンマの1副露は危ないからちゃんとケアしろよで終わってしまう内容をここまで長々書いてしまって、正直ちょっと恥ずかしい気持ちもあるのだが、せっかく書いたものを消すのも気が引けるので、そのまま記事とする。
本稿を読んで、奇特にも筆者個人に興味を持たれた方がいたら、XのDMやリプライなどでお声がけいただけると幸いである。若い女性なら望ましいが、おっさんでも大歓迎だ。ぜひ、いっしょに麻雀を打ちましょう。

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