メンチン多面張攻略法について

本稿は麻雀好きの皆さんに、メンチンにおける複雑な多面張を見極めるためのセオリーについて、可能な限り、体系化した形でお伝えできればと思い作成した。

私は麻雀が好きなおっさんであり、目を瞠るほど強いというわけではないが、上級者を自称してもよいかなという程度には麻雀を打ち込んできた。
しかし、そんな私も相当に長い間、メンチンの待ち取りには苦しめられ続けてきた。
上級者にとってもメンチンの待ちというのはなかなかの難問であり、特に打牌にそれほど時間をかけられない実戦において、きっちり待ちの多い受けを選ぶことは容易ではない。中級者クラス(天鳳なら特上民、雀魂なら雀聖くらいのイメージ)の打ち手でメンチンの待ちはバッチリなどという人は絶無に近いだろう。
裏を返せばメンチンの待ち取りが多少怪しかろうと成績にはほとんど影響しないということでもあるのだが、そうは言っても、メンチンは大チャンス手であり、たまの機会で待ちを適切に選べず、和了を逃すと本当に悔しい思いをする。また、最近は三人麻雀の雀荘が増えており、三人麻雀は牌の種類が少ない分だけ複雑な待ちも出やすいことから、雀士にとって多面張への理解に対する重要性は高まっている。何より、メンチンに自信がない雀士というのはちょっとカッコ悪い。
そこで、メンチンの複雑な待ちを理解するための考え方について可能な限り体系化して整理をしようというのが本稿の試みになる。
なお、本稿を作成するにあたり、特に参考にさせていただいた資料として、@01zzzさんの多面張理論、肥え×さん@tikinnyaronote記事があり、特に多面張理論は間違いなく本稿のベースになっている。恐らくは10年近く前に多面張理論のブログ記事に出会って以降、私のメンチン多面張への解像度は飛躍的に高まった。お二人にはここに深く御礼申し上げたい。
取り扱っているネタが同じなので、当然のことながら、内容的にお二人が作成している記事と本稿は多分に重なっているところがあるが、先を行く巨人の肩にのれた分だけ、本稿はより洗練された内容になったと自負している。興味のある方はぜひご覧いただきたい。

それではメンチンの複雑な多面張を理解するにあたり、いくつかのセオリーと必要な予備知識を挙げていく。これらの組み合わせで複雑な多面張を把握することになる。

セオリー1 
数牌の単騎待ちに順子の端が重なる、またはシュンツがくっつくと、3つ隣の牌まで待ちが伸びる。

文章だと少しわかりにくいが、極めて単純な話だ。
例えば、1の単騎待ちに対して123という順子が重なると1123の亜両面になり、待ちが14に伸びる。1の単騎待ちに234という順子がくっつくとやはり14待ちのノベタンになる。更に、この4単騎を含む1234のノベタンに456や567がくっつくと1234456、1234567といった実戦でも頻出の147の3面張になる。
なお、シュンツが重なると言っても、シュンツの端が重ならないと待ちは伸びない。例えば、2単騎に123が重なっても1223となるだけで待ちは増えない。また、言うまでもないかもしれないが、3の単騎に123がくっつくようなケースは本セオリーにはあたらない。1233で相変わらず3単騎のままだ。なお、本稿では、このような待ちが端で行き止まりになって、それ以上伸びなくなるケースについては、この先、いちいち踏み込んで説明はしないので、この点、お含みおきいただきたい。

セオリー2
ペンチャン、カンチャン、両面、シャンポン待ちに順子の端が重なると、3つ隣の牌まで待ちが伸びる。

例えば13のカン2待ちに234というシュンツが重なると12334の形になり、25の両面待ちになる。12のペン3待ちに345が重なれば12345で36の両面待ち、23の両面14待ちに456が重なれば147の3面張、1199のシャンポンに123が重なれば1112399で149の変則3面張、といった具合にシュンツが重なりによって待ちは伸びていく。
ただし、セオリー1の単騎の例とは異なり、待ちの部分にシュンツの端が重なっていないといけない点に留意いただきたい。例えば、単騎のときは、2単騎に345がくっつけば2345のノベタンになり待ちが伸びたが、13のカン2待ちに345がくっついても13345となるだけで待ちは伸びない。

セオリー3
数牌の単騎待ちについて、当該数牌に対して±1ないしは±2の数牌の暗刻ができると待ちが伸びる。

単騎待ちになった数牌を基準に±1の数牌の暗刻ができた場合は単騎と暗刻の数牌の外側2種類が待ちになり、単騎になった数牌を基準に±2の数牌の暗刻ができた場合は単騎と暗刻の間の数牌が待ちになる。
これも文章だとわかりにくいが、例を上げれば簡単だ。例えば、3の単騎に222や444の暗刻がくっつくと2223や3444の3面張になる。あるいは3単騎に111や555の暗刻がくっつくと、1333や3335となり、待ちが増える。
セオリー1、2も含めて、これらは少し麻雀を打ったことがあれば、多くの人が感覚的には理解できている事項だろうが、ここでは多面張に関する説明を体系化するため、改めて言語化している。

セオリー4 
単騎、両面、ペンチャン、カンチャン、シャンポンにイーペーコーがくっつくと待ちが伸びる

例えば、1単騎に123のイーペーコーがくっつくと、1112233で3種類待ちが増えて1234待ちになる。4の受けが増えるのはセオリー1で説明できるが、23もシャンポンで受けられるようになっているのがイーペーコー重なりの特殊性だ。このようにターツにイーペーコー形が絡むとシャンポンが絡んで待ちが伸びることがある。2単騎に123のイーペーコーがくっつくと1122233で13のシャンポン待ちが加わって123待ちだ。
23という14待ちの両面ターツに123のイーペーコーが重なると、11222333xx(xは雀頭)となり、14の両面に加えて、雀頭だった牌xがシャンポン待ちで受けられるようになる。ペンチャン、カンチャンにイーペーコーが重なった場合も、11122333xx、11122233xxとなり同様だ。
また、シャンポン待ちになっている数牌のとなりにイーペーコーができると待ちが伸びる。例えば1199のシャンポン待ちに234がくっつけば1122334499で149待ちだ。
セオリー123に比べると適用できる範囲は圧倒的に限定されており、忘れていてもあまり困らないと思うが、たまにこのセオリーがないと待ちを読み取るのが難しい牌姿がある。
ややこしい形が出てきたときにイーペーコー部分を抜いて考えると待ちが見えることがあるというのは頭の片隅に入れておいてもよいだろう。

セオリー5 暗刻のないテンパイ形は原則3面張まで

麻雀において、暗刻のないテンパイ形は、特殊なケースを除き、待ちは3面張までで、4面張以上には伸びない。
例外は私の知る限りだと、連続した5種類の数牌が対子になった1122334455の形(1245待ち)と国士無双13面待ちだけだ(もし他にあったらご教示願います)。
すなわち、暗刻のないメンチンなら3面張を見つければそれが最高かそれに近い待ちということになる。さらに言えば、ほとんどの場合、この3面張は147、258、369のシンプルな形だ。例外は1122334499のような一盃口の絡んだ3種類のシャンポン待ちのみである。この形はわかりやすいので心配はないだろう。
この前提で考えれば、暗刻のないメンチンの打牌選択はかなり単純化されるはずだ。
一例として、以下の牌姿を考える。
11233455667789
ここから何を切って何待ちかピンと来なかった場合、暗刻のないこのような牌姿では、とりあえず端から順にシュンツを作り、手牌を分解することをおすすめする。
この場合、1 123 345 567 678 9となる。
4面子あり、19が余った。ここでは余った牌の絡む147か369のどちらかの筋で雀頭を作ることを考えよう。セオリー1から単騎待ちは筋で伸びる性質があるので、余り牌の筋は待ちか余剰牌候補になりやすい。
147の筋で雀頭を作る場合、頭は明らかに既に2枚ある1で不要なのは369の筋だ。
頭の11を除いて、233455667789から369のどれかが打牌候補。最高形は3面張。ここまでわかれば3を切って147の3面張がベストというのが見えるのではないだろうか。
9を残すパターンを考えると、
1 123 345 567 678 9
この分解を見れば、明らかに1が不要牌だ。345 678に9がくっついているので、セオリー1から369待ちとなる。
3切りと1切りを比較すると
1123455667789 147待ち 待ち数7枚
1でピンフ一通、4でピンフ、7でピンフ一盃口
1233455667789 369待ち 待ち数7枚
3で一通
となる。場況がフラットならば打点の魅力から3切りが良さそうだ。

もう一例、考えてみる。
11234455667789
この形ならば、端からシュンツを作っていくと、1 123 456 456 789 7となる。1と7が余り、シュンツに123と456がある。セオリー1から1単騎ないし7単騎に123456がくっつけば147待ちだ。ということは、この牌姿はもう和了しているということだ。
11 234 456 567 789で4面子一雀頭が完成している。
このように暗刻がないメンチンで形がわかりにくいときは、シュンツを端から4つ作れるか確認、どのような単騎待ちが作れるかを識別し、単騎待ちに対して4つのシュンツがどのように絡んでいるかを確認して、セオリー1、2から待ち取りを決めればよい。打牌候補は浮いた単騎の筋だ。
また、ここまでごちゃごちゃ考えなくても、慣れれば3面張以上の待ち取りが存在しない前提で147、258、369の3面張を探せば暗刻のない形は比較的スムーズに正解にたどりつけるだろう。

セオリー6
7枚形の待ちを頭に入れよう

本稿の肝がここである。セオリーというとちょっとニュアンスが違うかもしれないがそこは目をつぶっていただこう。
7枚形とは2メンツが既に完成された前提で、残り7枚を組み合わせて形成されるテンパイ形を指す。基本形は以下の19種類だ。なお、括弧内は当該テンパイの待ちである。
① 23456北北(147)
② 2345678(258)
③ 2344567(147)
④ 22234北北(25北)
⑤ 2333456(1247)
⑥ 2223345(1346)
⑦ 2223445(346)
⑧ 2223456(13467)
⑨ 2223457(67)
⑩ 2224456(347)
⑪ 2224567(347)
⑫ 2223344(2345)
⑬ 2233344(234)
⑭ 2223444(12345)
⑮ 2223334(2345)
⑯ 2224666(345)
⑰ 2234444(235)
⑱ 2233334(1245)
⑲ 2333345(1245)
ズラッと並べはしたが、何も7枚形と言われてこの全てを挙げられるようにしろというわけではない。これらは代表的な多面張の形であり、こういった形が出てきたらパッと待ちがわかるようにしようということだ。一通り確認して待ちがどうなっているかピンと来ないものがあったら、待ちの内容を頭に入れておいてほしい。
複雑な多面待ちのはほとんどはこの7枚形の延長にあり、手牌の中からこれを抽出できれば、その時点でほとんど待ちが見えてしまうことが珍しくない。だからこそ7枚形を見つけるのが重要なのだ。
なお、気がついた方もいるかもしれないが、これらの7枚形の待ちは、ほとんどの場合で、もっと目に馴染みのあるシンプルな4枚形にセオリー123を組み合わせることで、説明ができてしまう。
例えば、皆大好きな5面張の⑧2223456の形だが、これは2223という3面張134待ちに456がくっついた形だ。セオリー1から3単騎に456がくっついて、待ちが6まで伸びていることがわかり、14待ちの両面に456がくっついているのでセオリー2から待ちが7にも伸びていることがわかる。
一見ギョッとしてしまうような⑲2333345の形も、よく見れば2333の124待ちに345がくっついた形なので、2単騎に345がくっついたことで待ちが伸びて1245待ちになっているとわかる。

これでやっと本題に突入できるが、複雑なメンチンの待ちの判別は、基本的には前述の4枚待ちからセオリー1〜4を用いて、7枚形の待ちを判別する手法の応用となる。メンチンの待ちを探すときは暗刻を抜けとしばしば言われるが、私は違う。メンチンの待ちを探すときは7枚形を抜けというのが私の主張だ。具体的なフローとしては以下のとおりだ。
① 手牌の中に暗刻があるかを確認、暗刻がなければセオリー5に基づき待ちを探す。
② 暗刻があった場合、手牌の中から待ちに優れる7枚形を探す。
③ 発見した7枚形を除いた7牌のうち、1牌を切ることで2面子が完成した形にならないかを確認する。2面子を作れなかったら②に戻り、2面子を作れたら④へ。
④ 7枚形に対して残り2面子がどのように絡んでいるかを確認し、セオリー1234に基づき、更に待ちが伸びていないかをチェックする。
④-2 適当な7枚形が見つからなかった場合、暗刻がない形と同様とみなしてセオリー5をベースに待ちを探す。

文章だとピンとこないだろうから、いくつか例題を解いていく。以下は肥え×さんの変態チンイツシリーズからの抜粋になる。

1つ目の例題だ。

まず目に着くのは2344555の形である。言うまでもないが、7枚形の中にも明確に優劣は存在し、待ちが13枚もある2344555の形は7枚形の中でもかなり優秀な部類だ。使えるものなら使いたい。
なお、形の上では更に優秀な2345666の5面張形も当該14枚の中には含まれているが、どう見てもこの7枚を抜いて残り7枚で2面子にはなりそうもない。この辺りは適当に足切りをして欲しい。慣れると足切りの精度や速度は上がっていく。
残りの牌姿で2面子作れれば少なくとも1346待ち以上はある。残りの形は6667789なので、7を切れば2面子完成だ。4単騎に6の暗刻がくっついているので、セオリー3から5も待ちになっていることがわかり、13456待ちだ。
実戦では時間的な制約もあるので、ここまででも十分だろう。ばっちりいい待ちが選べている。
一応、他にも良い7枚形がないかと探すと、5556667の5678も見て取れる。待ちが4種類あるとはいえ、自分で使っている枚数が多く、さほど良い待ちでもないが、場況次第では採用も考えられる。
この場合、残った牌は2344789だから4を切れば5678待ち。セオリー1234のどれにも該当しないので、待ちは伸びていない。

2つ目の例題だ、

これも2344555の形が目につく。しかし、残りの6677789の形からは何を切っても2面子にならないので、この形をベースにすることはできない。
改めて牌姿を眺めてみると、5556677という5678待ちの7枚形が存在している。残り7牌は2344789なので4を切れば、少なくとも5678待ちにはなる。789は待ちを伸ばさないが、5単騎にくっついた234は待ちを2まで伸ばすので、これは4を切って25678待ちだ。

次はかなりの難問だ。

なんとなくだが形的にも、打点的な魅力からも左側は234のイーペーコーで使いつつ、右端で3456667の2578待ちが作れないかなという気持ちが湧いてくる。残りの7牌を抜き出すと2233444だ。4を切れば少なくとも2578待ち。34の両面に223344が被っているのでセオリー4から待ちが雀頭の6まで伸びて、25678待ちとわかる。実戦ではこのくらい見えれば及第とも思うが、まだ続く。前段のプロセスで抜き出した2233444の形が既に1234待ちの7枚形だ。これを軸に待ちが作れないかと、改めて2233444以外の7枚を見ると、3456667で7を切れば2面子を作れることがわかる。この場合、4単騎に6の暗刻がくっつくので5も待ちになっている。さらに2233のシャンポン形に345が重なっているから、6まで待ちが伸びている。従って、7を切れば123(4)56待ちだ。

仕上げの例題になる。

既に4面子あるのだから、次に引いてくるソーズの数牌は少なくともその牌自体が単騎待ちになっていることは明らかだろう。
まず、暗刻が作られない12459を引いたときの形は簡単だ。セオリー5に基づき、123 345 678 678で4面子なのだから、14を引けば123と接続して14待ち、25を引けば345 678と接続して258待ち、9を引けば345 678と接続して369待ちだ。
3引きも難しくないだろう。123345とあるところに3を引いてくると、確かに3が3枚にはなるが、これを暗刻で使ったら、12の行き場がなくなってしまう。明らかに暗刻としては使えない。このときは暗刻のない12459と同様の考え方が適用可能で、345 678と接続して369待ちだ。
残るは678引きだが、6引きの場合6667788の7枚形が見える。この6789待ちに加えて、6単騎に345のシュンツがくっついているから、待ちは3まで伸びており、36789待ちだ。
7引きの場合、6677788の7枚形ができる。くっついているシュンツは345だけだが、明らかに待ちは伸ばさないので、678待ちだ。
8引きの場合、6677888の7枚形ができる。58待ちの両面に345が接続しているので待ちが2まで伸びている。25678待ちだ。

なお、7枚形+セオリー1234で説明ができない一部の10枚形が絡むと本稿のアプローチで対応ができないときある。
例えば、以下の形が絡んだ場合が典型だろうか。
1112345566 (4567)
1112345679 (89)
1122233346 (56)
1122334455 (1245)
他にもあるかもしれないが、ほとんどこのくらいだと思う。
これらにしても、一度形を覚えてしまえば、ここから更に1面子加わったときにどのように待ちが伸びるかは、セオリー123に基づいて対応できる。
1112345677899は1112345679に789がくっついて689待ちといった具合だ。
前述のメンチン待ち探しのフローにおける②の工程でこれらの10枚形も含めて探していただければ言うことなしだろう。

本稿を読めばメンチンの待ち取りに関する理論は身についたはずだ。
理論の次は実戦ということになるが、普通に麻雀を打っていても滅多にそんな機会はやってこないので、肥え×さんの変態チンイツ問題集、あるいは以下の門清何待ちのレベル3にトライして欲しい。変態チンイツ問題集は有料だが、麻雀オタクには間違いなく値段以上の価値がある。

メンチンが0.2秒でわかるという沖本瞬の領域には私も道半ばだが、本稿で書いた理論が自分の中で整理されて以降は、メンチンの待ちがわからず損をすることはほとんどなくなった。
本稿が皆様の麻雀ライフの一助となれば幸いである。

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