見出し画像

チン・コン・ソンの伝記映画 "Em và Trịnh"

これまでは出来上がった映画を筆者が鑑賞し紹介してきたエンタメ通信。今回は今年上映が予定されている映画で、私自身期待している作品を紹介したい。

ベトナムの高名なシンガーソングライター、チン・コン・ソンの伝記映画"Em và Trịnh"がそれである。

チン・コン・ソンはベトナムでは誰もがその名を知るシンガーソングライターだ。高石ともやが歌った「坊やおおきくならないで」"Ngủ đi con"や天童よしみの「美しい昔」"Diễm Xưa"で日本でも知っているひともいるだろう。

南ベトナム政権下で厭戦的な歌を唄ったために当局に上演が禁止されたり、サイゴン「解放」後に歌をうたうことを禁じられるなど不遇をかこった時代もあった。しかしベトナムの刷新政策とともに活動をゆるされ、戦後もベトナムで活躍した。2001年に没するまでに600もの歌を作詞・作曲し、そのうち少なくとも236作品が世に知られ、今も歌い継がれている。

映画は一昨年制作が発表され、配役も決まり、昨年から映画撮影もはじまっている。

監督は映画「怪しい彼女」「昨日から来た少女」などでベトナムで大ヒットをとばしたファン・ザー・ニャット・リン監督。ソンの遺族らも制作に協力、故人の親友の息子である監督グエン・クアン・ズンもプロデュースに携わるなど、ソンに近い人たちが関わっている。

制作費は四百億ベトナムドン、日本円にして約2億円という、ベトナムの映画制作費としては巨費が投じられている。

シンガーソングライター・チン・コン・ソンの若い頃から中年にいたるまでの半生を描く。恋人だった女性が複数登場するようだが、メインとなるのは日本人女性・ヨシイミチコとの恋物語だとされている。吉井美知子さんといえばチン・コン・ソン研究の第一人者で、現在は沖縄大学の教授だ。彼女とソンとの恋物語は多くの人に知られることのなかった秘話としてこの映画で紹介される。出来上がりが楽しみな映画だ。2021年4月、ソンの20周忌に公開予定。

日本ベトナム友好協会機関紙「日本とベトナム」2020年3月号掲載


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?