ベトナム初の私設美術館「Quang San Art Museum」
Quang San Art Museum
https://quangsanartmuseum.com.vn/
この7月、オープンしたばかりのベトナム初の私設美術館「Quang San Art Museum」を訪れた。場所はホーチミン市2区、富裕層や欧米人が多く住むエリアだ。マンションやヴィラ、おしゃれな欧風カフェやレストランが多数立ち並び、ホーチミン市中心街の喧騒を離れた閑静な住宅街だ。
邸宅のような建物の入口に美術館の表示がある。入場券はおとな20万ベトナムドン、約1200円。3階建ての美術館だ。1階は1925年〜1945年、インドシナ美術学校の先生と卒業生の作品を中心に展示されている。インドシナ近代美術の重鎮ともいうべき、グエン・ザー・チー、トー・ゴック・ヴァン、ブイ・スアン・ファイや、フランスに渡って活躍したレー・フォーやマイ・トゥーの絵も飾られている。
2階は1945年から1975年に活躍した作家の作品が並ぶ。特にベトナム戦争期に描かれた戦争をテーマにした作品が展示されている。そのいずれもが絵画蒐集家としての趣味が現れるよい作品ばかりだ。グエン・カン、ヴァン・カオら、美術学校の卒業生たちの作品も見応えがある。
3階は1975年以降から現代の作品までが陳列されている。戦後すぐからドイモイ期の作品を中心に、北、中、南部の作家の作品を満遍なく取り揃えている。抽象画にもみるべきものがあって、コレクターの絵画に対する趣味の広さを感ずることができる。
この美術館はベトナム人絵画蒐集家、グエン・テュー・クアン氏が創設者した美術館だ。彼は2000年ごろから絵画収集をはじめ、約1000点にもおよぶ自らのコレクションを展示した。テクコムバンクという民間銀行の副会長でもある。ウクライナで建築学を学び、美術にも明るい彼は、有名無名問わず、自分の気に入ったベトナム人作家の作品を収集している。こと近代美術に関してならば国立の美術館よりも見応えのある作品群をまとめて鑑賞できる、新観光スポットだ。
日本ベトナム友好協会機関紙「日本とベトナム」2023年8月号掲載