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ベトナム近代絵画がサザビーズで310万米ドルの高値よぶ

昨年2021年4月、珍しく美術に関する記事がベトナムを賑わせた。ベトナム人画家マイ・トゥの作品「フオンの肖像」がサザビーズ香港のオークションでベトナム絵画市場最高値である310万米ドルもの値をつけたというものだ。

マイ・トゥは、ベトナム北部の宮廷官僚の子として生まれ、フランス式の教育を受け、1925年にはハノイ・インドシナ美術学校に入学、37年には渡仏し、以降フランス在住の画家だ。同じくインドシナ美術学校の卒業生であるレ・フォー、ヴ・カオ・ダンらと共に「パリ仏越派」と呼ばれている。

今回高値をつけた「フォンの肖像」はマイ・トゥの恋人であるハノイの女性を描いたもの。1931年パリで行われた植民地国際展覧会に出品された。
その後フランスの有名オートクチュールのモデルであったドーティ・ドゥモンテルのベトナム人画家の作品コレクションに加えられていた。映画「青いパパイヤの香り」のワンシーンに登場した作品としても知られている。

アジア諸国の経済発展は美術界にもおよび、2004年ごろからクリスティーズ香港などのオークション会社がアジアの近現代アートを出展、入札が頻繁に行われるようになった。今や中国は米国に次ぐ絵画市場として世界二番目の地位にある。

ベトナムの近代絵画をどのような人が買っているのだろうとベトナム近代美術に詳しい二村淳子氏に伺ったところ「古い情報だが」と前置きし、「インドネシア、マレーシアの富豪、そして越僑2世、3世、台湾にもベトナム絵画のコレクターが存在する」そうだ。彼らの目的は投資七割、趣味三割といったところだそうだ。

美術品が高額な価値をもたらすとなると、当然贋作、模造が問題となってくる。同じくインドシナ美術学校の卒業生で、ハノイの旧市街をモチーフにした絵で人気のあるブイ・スアン・ファイの作品はあまりにも贋作が多く、オークション会社でも取り扱いを控えているほどだ。

日本ベトナム友好協会機関紙「日本とベトナム」2022年6月号掲載

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