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米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー

映画鑑賞記(2017/11/04)

民主主義の真の在り処、異常な現代日本の在りよう

 アメリカ軍政下に沖縄人民党を結成、那覇市長となり、軍用地強制収用への抵抗、日本復帰運動をリードした瀬長亀次郎を描く。アメリカ、米軍が最も恐れた男と言われる彼には、執拗な弾圧が繰り返された。遂には投獄されても、法令を変えられて市長から下ろされても戦いをやめない瀬長。その瀬長を熱く支持する沖縄の人々。彼を中心とした運動は遂にアメリカの姿勢を変えた。彼無くば沖縄の日本復帰も無かったのではないだろうか、と思う圧倒的な存在感。例えるならば沖縄のガンジーといったところだろうか。

 しかしこれほどの戦いをしてまで復帰した日本は、基地の温存、しかも沖縄への集中を変える気はさらさら無かった…。更に「有事の核持込み」も沖縄返還のテーブルで密約されて。衆議院議員となり、国会で激しく佐藤首相に迫る瀬長の姿に胸が痛む思いを禁じ得ない。 これほどまでして帰った日本は真にその甲斐がある存在では無かったのではないか…。基地負担を押し付けている側の「本土」在住者として、忸怩たる念を強く持たせられる映画。

 「不屈」の闘いを続ける亀次郎、そして沖縄の人々を実に丁寧に描いた監督はTBSの佐古忠彦だと云う。筑紫哲也からジャーナリストとして受けた薫陶をしっかりと継承して真摯に生きて来られたのだろう。 「日本復帰」を念願にして活動してきた時期を描いていた時間帯は、日本政府への遠慮があるかと危惧したが、復帰後を描いた部分ではしっかりと日本政府の問題点をも射程に入れる。そして亀次郎引退後の最終部では現代に続く基地問題、日本政府による差別構造についてもしっかりと俎板に載せてみせた。デビュー作にしてここまでの完成度、素晴らしい。是非、佐古監督にはこの一作で終わらず、二作目、三作目と作ってほしいと願う。 現代に生きる全日本人、そして全アメリカ人に観てほしい映画。

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