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2020年4月5日 アン・フーンさん法話

2020年4月5日、オンラインでの「気づきの日」ミーティングでの、参加者からのシェアリングと、それに対するアン・フーンさんの言葉(シェアされた方の許可を得て掲載)

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<参加者からのシェアリング>
私は地方に住んでいて、ここでは外に息子と遊びに行くことができるし、自分自身は比較的安全だと感じています。でも、私の父のことを考えると苦しくなります。
父は、首都圏に住んでいて、個人タクシーの運転手をしています。アルコールに問題を抱えつつも、借金をしながらの自転車操業で、私たち家族を養ってくれて、私も大学にいくことができました。

しかし、今のコロナの影響で、収入が激減していることが容易に想像できるので、このままでは父は、借金を返せずに破産してとても苦しむではないか、アルコールに逃げてしまうのではないかと心配しています。私は、借金依存の家計で不安定な経済状態で育ったので、その時のトラウマ、インナーチャイルドの痛みが私の中で顕在化しているのを感じます。

今の私の家庭は経済的には比較的安定しているので、もししようと思えば、父を経済的に支援することもできます。しかし、それをすることは本当にいいのだどうか葛藤します。父の借金も経済的な無謀で不安定であることも、父の習慣のエネルギーによるものだからです。子である私が経済的に支援をすることは、それを助長するような共依存関係になってしまうのではないかとも感じるからです。しかし父の苦しみは私の苦しみとして感じられています。まだ、答えは出ません。

私が今していることは、父の良い種に水やりをできるように、ここにいる息子と一緒に、父と定期的にテレビ電話をするようにしています。父はそれほど嬉しそうではありませんが、息子は純粋無垢で、父を見て「じいじ」と彼の言葉で話しかけていて、父も少しは安らぐような顔を見せるときもあります。テレビ電話を通して、私と孫である息子が、大変な状況にいる父のことを大切に思っている、その存在があるのだということを伝えたらと願っています。

<アン・フーンさん>
シェアをしてくれてありがとうございます。あなたが心を開いて自分の思いを話してくれたので、あなたの心を通して私たちみんながつながることができます。ありがとうございます。マインドフルな呼吸や、歩く瞑想や、身体を動かすことを一緒にしている時、私たちは共に振動していますが、深い気づきのシェアにより、私たちはさらに深くつながっていくことができます。

そこにいる時に自分の心と身体が一つであれば、真の意味で話し、聞くことができます。お互いに深く、シェアしてくれた人の話を聞くとき、それはその人だけの話でなく、聞いている人みんなの話になります。話してくれた人の苦しみや葛藤は私たちの苦しみや葛藤と切り離せません。それは私たちみんなの苦しみと葛藤なのです。

今は春でワシントンでは外に花が咲いていて新緑がキラキラと輝き、力強い生命力を感じます。パンデミックは今世界中で人類全体に起きていて、日本だけでなくワシントンDCでも起こっています。そして日本やワシントンだけでなく、人類の家族みんなが同じ怖れに直面しています。

それは、苦しむことへの怖れであり、忘れられることへの怖れであり、見捨てられる怖れ、飢える怖れ、死への怖れです。この地球上のすべての人が経験しています。一番貧しい人も、一番のお金持ちもみんな怖れを経験しています。コロナウィルスは差別をしません。誰を感染させて、誰を感染させないか選びません。

私のこのパンデミックのイメージは地球を包み込むたくさんの炎です。タイの本で「Lotus in the sea of fire(火の海の中の蓮の花)」という本がありますが、ベトナム戦争の時に書かれた本のことを思いだします。

炎の海の中から蓮の花が現れることができるのです。燃えた森の地面に種が埋まっていてそこから芽が出るように。パンデミックは地球を燃やしています。でも、そこからまた蓮の花が咲いてくると思います。その焼け跡から蓮の花が咲いているのが見えます。

ベトナム戦争では、いまだに多くの傷があり、癒されていません。でも、蓮の花がベトナム戦争から咲きました。それは我々の先生、タイ(ティック・ナット・ハン師)です。ベトナム戦争の深い根を理解することが大事だとタイは言いました。人間の中の何が戦争を起こしているのか。タイはそれを見つめて美しい蓮の花を咲かせました。生きるダルマです。我々を目覚めさせてくれる助けとなりました。

人間へ送られているこのパンデミックからのメッセージはなんでしょうか?

私たちはみんな歳を取り、病気になる、死んでいく性質をもっています。それは誰も変えることができません。このパンデミックで多くの人が津波や巨大台風などの大災害で死んでいくように亡くなっています。

誰かが死んでいく時私たちは、「その人」が死んでいった、「その人」が苦しんでいる、「その人」の家族が悲しんでいる、でも「私」ではない、と考えています。でも、このパンデミックではそうではありません。この場合、みんなが怖れています。それぞれが苦しみを怖れています。お金持ちも貧しい人も。

「あなたは怖れを持っている」「武漢の人は怖れをもっている」ではなく、もっとも権力のあるホワイトハウスの人もこのウィルスを怖れています。

ここからのメッセージは、私たちの命は分かれていないということです。私たちの命は深くつながっています。いつもそのことを忘れてしまいますが、実際にはそうなのです。コロナウィルスは、気づきの鐘です。大きな大きな、私たちを目覚めさせてくれる鐘です。

私たちの多くは、夢の中を生きています。幸せと愛の夢です。完全な幸せや愛を夢見て探し求めています。それは自分の内側が欠けていると感じているからです。自分には幸せがないと思って果てなく探し続けるのです。

そして、今この瞬間とこの瞬間にあるものを犠牲にします。今を犠牲にして幸せになろうと今ここにはない何かを探してきました。自分から逃げて、自分自身を疎外して、自分の中の喜びや痛みを無視してきました。

私たちは今何週間かsocial distance(社会的な距離)というのを実践しています。この一週間は医者や看護師など働きに行かなくてはいけない人や食べ物や薬を買うため以外は外に出られなくなりました。もちろん散歩はできますが、1.8メートル以上の距離を離す必要があります。

ワシントンのサンガもズームを通してプラクティスをしていますが、そこで感じるのは人々が不安と怖れを抱え、疲弊しているということです。ネガティブな種がどんどん大きくなっています。家にいなければいけない間、ストレスを抱えています。

思考が働き続けて、これからどうなるだろうかと考えて、心配することを止められないでいます。怖れなどのネガティブな感情をふくらませて、枯れた花のようになっています。そのような中でたとえオンラインでもプラクティスをすることが、身体に戻ることを助けてくれます。ズームのプラクティスを通してもう一度活力を取り戻し、大地に根づき、つながっていることを感じることができます。

多くの人が怖れの中で身動きが取れなくなり、外に出られなくなっています。思考がどんどん大きくなりそこから出られなくなってしまっているのです。

マインドフルな呼吸は身体に戻り、地に足をつけ、リラックスすることを助けてくれます。今ここにいることができれば、美しさとつながることができ、癒しのエネルギーを感じることができます。オンラインでも数時間プラクティスをしてつながると、自分の身体に戻ることを助けてくれて、安定し、オープンになって、イキイキとしてきます。

この病気のために命を落としていく人のことを考えると悲しい気持ちになります。深い悲しみを抱きます。でも、その方たちのことをイメージすると、灯のイメージが浮かんできます。暗闇を灯で照らしてくれる光です。このパンデミックの状況がそれまで見えなかったものを教えてくれます。

絶望や怖れは私たちをあっという間に疲弊させてしまいます。でも、深く見つめてみるとコロナウィルスにもメッセージがあります。それを見つめたらそこから抜け出す道が見えます。私たちの怖れと絶望によって疲弊させられないようにすることが大切です。

大事なのは自分のケアをすることです。それは自己中心的な意味ではなく、深い気づきによってもたらされるケアです。本当に自分のためにケアをすることができれば、それは他の人のケアをしていることになります。自分の声をよく聴いて、思いやりを持って自分と共にいて、自分の中に起こってくる感情を聞いてください。喜びや悲しみ、痛み、怒り、嫉妬などの感情です。

赤ちゃんのお世話をするように、自分の感情を聞いてください。そうすれば、他者の心と身体の健康のために自分のものを分かち合うことができます。それは人だけでなく動物や植物に対してもです。

今日気づきの日がオンラインであって、そこである友人のシェアを聞きました。彼女がシェアしてくれたのは呼吸を楽しむことや食事を楽しむのが難しいということでした。

この病気のため呼吸をするのが難しい人、飲み込むことが難しい人がいます。彼女は一回深く呼吸をするたびに自分が呼吸をできることに感謝して呼吸ができない人のことを感じています。そして一口食べて飲み込むたびに、それができない人のために祈っていました。でも、プラクティスを通して祈っていても、ものすごく悲しくなってしまって生きる喜びを感じることができないし、そのことが悲しいと言っていました。

私がイメージするのは人類全体が一つの身体の一部であるということです。大きな人間の身体です。私たちの肺は、大きな肺の中の肺の一部です。その一部分が病気になり、具合が悪くて、適切に呼吸ができなくなっています。でも、まだ多くの部分がちゃんと健康に働いていて、酸素を取り入れて、二酸化炭素を出すことができます。

私たちはガイド付きの瞑想で、健康な細胞として呼吸しているところを想像しました。その人たちが一緒に呼吸しているところをイメージして、その人たちに自分の呼吸を引き渡すのです。自分はベストを尽くしているのだと知っていてください。リラックスして、自分のケアをしてください。自分自身の強さと、地に足をつけることが今どんな時よりも必要です。怖れと絶望に溺れないで、病んでいる肺の助けとなるために、その人たちの力になるためには自分自身の揺るぎなさが必要なのです。

サンガのプラクティスがあることは助けとなります。身体と心と一緒にいて、どんな時でも自分のケアをすることができます。小さな息子さんは新しい健康な肺の細胞です。あなたの喜び、平和、安定、自分に栄養を与えるのを忘れないでいてください。美しいエネルギーは息子さんに簡単に引き渡されるでしょう。そして新しい健康な強い細胞となるのです。あなたが幸せであれば、息子さんの幸せも増します。微笑みが一番のギフトになります。私たちはみんな息子さんの中に引き継がれていきます。人間全体としての肺は生き残り強くなるでしょう。そして私たちは命の不思議に、共に目覚めることができるでしょう。

今日一日、そしてこれからの日々で、自然の中で過ごす機会を大事にしてください。自然ン癒しのエネルギーを感じて受け取ってください。たとえアパートの中にいても、窓の外の空を見て、呼吸をして微笑んでください。

息をする時あなたは一人ではありません。サンガと、ブラザーシスター、鳥や海、山や川などの自然が一緒です。みんな一緒に命の揺りかごの中で呼吸をしています。

今が心を込めてプラクティスする時です。怖れや悲しみと共に過ごす時です。怖れが広がっているこのパンデミックの時にこそ、プラクティスをするのです。身体に戻り、ケアをすること、平和や調和を維持すること、呼吸を通して心と身体を一つにすることが必要です。呼吸を通して自分の心と身体を一つにすることができれば、自分自身と和解することができます。それが理解と癒しにつながります。

家にいて、家で仕事をする時、どうぞ15分に1回ベルが鳴る設定にしてください。リマインダーとして時計のベルなどを鳴らして、呼吸に帰るプラクティスをしてください。心と身体を一つにするプラクティスです。15分ごとに身体を動かして歩いたり、立ち止まって見て考えてみてください。自分の中の喜びや安心、愛と平和などの良い種に水やりをしただろか、怖れや不安や怒りなどのネガティブな種に水やりしていないだろうか、と。そして微笑んで呼吸をしてください。

これから寝る前に最後にみなさんに詩を贈りたいと思います。アメリカの詩人が書いた詩です。「コロナウィルスから人間への手紙」です。

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コロナウィルスから人間への手紙

止まりなさい、ただ止まるのです
これはお願いではありません。すべきことです
我々があなたたちを助けます
この超音速の高速回転木馬を止める時です

我々は止めます
飛行機を
電車を
学校を
ショッピングモールを
会議を

半狂乱で緊急な「義務」という幻想、それは 聞こえなくさせていました
一つであり共有された心臓の鼓動の音
どのように我々は一つとなって共に呼吸しているのか
私たちの義務はお互いのためになることなのです
それはいつもそうでした。 もし、 たとえあなたが忘れていたとしても

私はこの放送を中断します。分断と動揺の不協和音の終わることのない番組を
あなたに長期の大事件を伝えるために
私たちは病んでいる
私たちは皆苦しんでいる

去年、 大火事が地球の肺を焦がしても
あなたは立ち止まることはありませんでした
アフリカ, 中国, 日本の台風でも
日本やインドの熱した気候でも
あなたは耳を貸さなかった
常に忙しくしているのであなたは貸す耳をもっていなかったのです
人生を快適に便利にしてくれるものを維持するのに忙しくて

でもその礎は道を明け渡そうとしています
あなたの要求と欲望の重さに腰を折って

我々があなたを助けます
あなたの身体に大火事をもたらします
あなたの身体に熱をもたらします
熱、 汗、 洪水をあなたの肺に起こします
あなたに聞こえるように

私たちは病んでいます
あなたが考えているのとは違って、我々は敵ではありません
私たちはメッセージを伝えているのです
私たちは同盟者です
私たちはバランスを取るための力です
あなたに問いかけています
止まるように、 平静になるように、耳を傾けるように
個人的な心配を超えて、すべてにとっての心配を考慮してください
無知であることを知るため
謙虚さを見出すため
思考を手放し心の奥深くまで旅をしてください

空を見上げて, 飛行機が少なくなったので見つめて気がつくでしょう、どんな状態か。澄んでいますか?汚れていますか?霧が出ていますか?雨ですか? あなたもまた健康であるために空が健康になるためには何が必要ですか?

木を見つけて、見てみてください。その状態に気がつくために。その健康状態はどう空の健康に影響していますか?あなたが健康になるための空気であるためには木がどれぐらい健康である必要がありますか?

川を訪れ、 見てみてください。その状態を見るために。澄んでいますか?綺麗ですか?濁ってますか?汚れていますか? あなたが健康であるためにどれぐらい川が健康である必要がありますか?その健康はどう空の健康につながり、あなたの健康につながる木の健康に影響していますか?

多くの人が今怖れています.
あなたの怖れを悪魔にしないでください、そして怖れに支配されないでください
その代わりに, 怖れに話をさせてください—平静な心で、その知恵を聞いてください。

個人的な病気への不便さと脅威を超えて我々に仕事や課題や危険について教えてくれていることは何でしょうか?
木や川, 空の健康が私たち自身の健康について教えてくれます。
あなたの健康状態が川や木、空やこの惑星で共に生きるものの健康について何を教えてくれますか?

止まってください。
あなたが抵抗しているかどうか気づいてください。
あなたは何に抵抗しているのか。
そしてなぜか。

止まりなさい。ただ止まりなさい。
平静になって
そして聴いてください
尋ねてみてください我々が病と癒しについて何を教えようとしているのか
そしてすべてが健康になるためになにが必要なのか

あなたたちを助けます, もしあなたが耳を傾けるのなら.
-Kristin Flyntz 3.12.2020
(原文はこちら https://www.gratefulweb.com/articles/imagined-letter-covid-19-humans

(翻訳・書き起こし:Kumiko Jin)

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ティク・ナット・ハン「マインドフルネスの教え」
HP: https://www.tnhjapan.org/
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