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私を支えてくれた人

す、するどい……

前回のnoteに投稿に対していただいた、コメントを読んで、思わず口から出た言葉だ。
約3か月にわたって、ずっと取り組み続けてきたフルマラソンへの挑戦を終えた、という内容だったのだが、あえて書かなかったことがある。 

それは、不倫相手のことだ。

様々な人と出会い、助けられて完走できたのだが、もちろん私の大好きな「先生」(出会ったときから、我が師!と敬愛している。学ぶことに貪欲で、仕事好きなことから、ここで勝手に呼んでいる50代男性のこと)も、目標達成に大きく関わっている。
その「先生」はマラソン完走に対して、どんな反応だったのか、というコメントを読んで、最初のつぶやきが出てしまったのである。

去年のマラソン練習期間は、すでに現在別居中の夫に私と先生とのやり取り(あくまでもこの時はLINEのみ。指一本触れてないのに、うらまないでほしいです……と、先生は常々おっしゃっていた)がばれ、家庭内別居中だった。
だから夫にはマラソンのことは一切伝えず、同じ空間にいたくなかったから、子どもたちが就寝したら練習に走り始める、という毎日だった。

一方で先生は、職場のやり取りの中で、私がマラソン練習をしていると知り、僕も走ろうと思うんですけど、と、にわかにできた職場のマラソンチームへの参加の意向を示してきた。

私は難色を示した。
たしかに先生の体格は小柄で身軽そうだし、体力もわりとある方なので、適切な練習を行えば完走もできるとは思った。しかし、年齢(私より9歳上)と経験の無さ、そしてその時の先生の職場でのポジションや仕事量を考えると、かなりの無理がある。
私がその分フォローしますよ、と言えるだけの体力や仕事力があればいいのだが、自分に対する自信もなかった。

走ることをやめた先生は、その代わり何かと応援してくれた。LINEでの励ましが、たしかあったように思うし、ランニング用のグローブや靴下をくれた(もらうまで、ケチな私は軍手を愛用していた)。

※この件については、ちょっと先生のやり方って、ヤラシイよね……と、感じるところがある。
このさらに1年前、つまり今から約2年前に「いつもお世話になっているので」と、私にストールをくれたことがある(もらうまで、自作のマフラーを使っていたのだが、もう洗濯しすぎてフェルト化し、縮んでしまって困っていた)。
この、サイズが曖昧で、プレゼントしやすく、しかも「身につけるモノ」なのが心憎い。これらを身につけるたび、先生のことを思い出さざるを得ない。

今回のマラソン大会に向けた練習の中では、大会1か月前くらいから、私自身の気持ちがかなり内向きになり、連絡をとらなくなったからか、職場での私の態度が気に入らなかった(以前の記事で書いた)のか、先生と疎遠になった(あくまでも前月比)。
内向きになっている、といっても、その理由は明白で、練習で思うように走れてなかったことからくる完走への不安だ。

先生とは同じ職場なのだから、毎日顔を合わせる。しかし、男女として出会うのは、平日の夜だ。そしてこの時間帯こそ、走って調整する時間帯でもある。どちらにしても、子どもたちには、
行ってくる!
もしくは
おやすみ!また明日ね!
と言って、出ていってしまうことになるので、どちらかを我慢せざるを得ない。つまり、マラソン練習か先生との逢瀬のどちらかをセーブしなければならなかった。
どちらを?私にマラソン練習を我慢する、という選択肢はなかった。

だから、先生と疎遠になることは、ある意味、仕方がなかった。好きな気持ちはあるのだが、マラソンを完走することも、私にとっては結構重要なことだ。
そうこうしている間に、いよいよ大会直前の金曜日の早朝、私から先生に連絡をとった。

今夜、会えませんか?

私にしては、自分で言うのもなんだが、めずらしく行動的である。何を思ってこんなことを発信したかというと、
マラソン、走るはいいけれど、生きて帰ってこれなかったら、どうしよう……
と、危機感を持ったのである。
大袈裟かもしれないが、私にとっては命懸けのイベントだ。

ただ、この日は先約……妻待つ県内の自宅ではなく、自分の実家に、初秋に亡くなった父の関係で帰ろうと思ってます、とのことで、会うのを断られた。

落胆もあったが、少し安堵した(そして、文面にちょっとした気遣いも感じた。自宅、というより実家、と言われた方が不倫相手にとって、断られた傷は浅いのではないか、というもの。もちろん私の勝手な想像だが)。

これで私のするべきことは終えた、あとはマラソンに向けて心残りなく邁進するだけだ、と、通勤中に決意を固めた。

そして、その日。
それまで数週間にわたり、職場ではよそよそしいどころか、目も合わせない、冗談も言わない、みたいなモードだったのに、
朝から頼み事を装っては身体の距離が近い、相談も多い、いきなり私の担当の部屋にも入ってくるなど、先生の態度の変わりように驚いた。

と同時に、
淋しい思いをさせて、ごめんね……
と、若干上から目線、というか、年下の小さい子を世話する感じ、いやペットの飼い主(飼ったことないが)みたいな感覚を覚えた。

その日の夜、先生から、
一週間お疲れ様でした!今日は声かけてくれたのに申し訳ありません…嬉しかったです。でも考えたら〇〇さんもマラソン前の大事な体なので、どちらにしても今日はやめといた方が良かったと思います。マラソン無事に走り切られることを祈っています!
と、連絡が入る。

私からは
1人で夜中に走るより、大会の方がよっぽど安全性高いので、大丈夫だとは思うのだが、マラソンに対して、ちょっとした危機感をもっていたこと、
先生から去年いただいたランニンググッズ、今年も役立っていること、
などを返信した。

マラソン当日の朝も、これまた絶妙な時間でLINEが入る。溝掃除に出かけることは、職場のみんなに大きな声で話してたので、まあ頭脳派の先生なら簡単な計算なのかもしれないが。
まだまだ時間に余裕があって、なんなら携帯電話の充電器もつけたまま、でもしっかり起きてる時間帯のLINEは、頑張って!でも無理しないでね、という内容だった。

地元開催のマラソン大会なので、直接の声援は数多くいただいた。沿道では、職場の仲間も、かつてのランナー仲間も、そして昔、私を失恋させた男性も応援してくれた。
※この最後に出てきた彼は、昨年度この大会で走っていたのだが、今回はちょっと個性的な応援の仕方で参加し、それが有名人のInstagramに取り上げられてたんだ!と喜びのLINEを、大会の翌日、私に送りつけてきた。

ゴールした直後、携帯電話のランニングアプリを終了させると同時に、先生にLINEでゴールしたことを伝えた。
もちろん、すぐに返信があり、その夜も体調を心配する連絡があった。
先生に、すぐにでも逢いたい気分ではあったが、私の両脚には湿布が巻かれ、服を着ていてもその香りがする。しかも、しっかり筋肉痛だ。これでは私の車内でどうこうするわけにもいかない。

実際、このあと2人で逢えたのは数日後のことであった。



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