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壊れたテレビ

金曜日の夜、長男と一緒に通っている習い事から帰ると、テレビが壊れていた。
風呂に入ろうとしている長男を呼び止め、
一体これはどういうことなのか!?
長男のせいではないのか!?
と、100%正論ではない言いがかりをつけつつ、自分の心を落ち着けた。

壊れ方を詳しく説明すると、画面の真ん中5分の1くらいの面積に縦線が入り、その見えない部分の最下部にコンパスで描いたような、大輪の花のような形ができていたのだ。

さっきまで母さんと一緒にいたのに、どうやって壊せるって言うんだよ、
と、正論を言いつつ、風呂上がりの長男が、その大輪の花のような形の中央部分を指で確かめてみる。

きっと、留守番をしていた、弟たちの仕業でしょ、と、長男は落ち着き払って友達とLINEをし始めた。
テレビの電源を抜き差ししても、元には戻らない。
録画したくても、ちょうど録画を決定するための指示が見えなくなっている。

どうしたらいいのか……
と、考えながら長男が座っているソファの端に、
「すみません。テレビをこわしてしまいました。〇〇(三男の名前)」
と書かれたメモ用紙が置いてあった。
長男の推理は当たっていたようだった。

さてその翌朝、早寝早起きを休日もやり通す、小学生の次男三男が待つリビングに降りていくと、
三男が申し訳なさそうに話し始めた。どうもテレビゲームをしていて、手にしていたコントローラーを画面に吹っ飛ばしたそうだ。三男の後ろには心配そうな次男が控えている。

iPadを持たせている次男は、泣きながらうなだれる三男を先に寝かせ、どうにかテレビを直せないのか、昨夜の私のように、いろいろと試したそうだ。
そして朝になり、私に告げたのが
「お母さん、家財保険って入ってる?」
という言葉だった。

小学校五年生から、保険について訊ねられるとは。我が子ながら、いや、情報機器のおかげではあるが、かなり驚いた。
修理よりも買い替える方が安いらしいよ、と次男は続けてアドバイスしてくれた。

そして田舎にも店舗を置いてくれている、家電量販店へ、長男と向かう。できれば大河ドラマを録画して視聴したいので、それまでにすべてを完了させておきたい。
もちろん大きな買い物であるが、そもそも我が家のテレビ、実は地域の運動会、最後のお楽しみであるくじ引き大会で当たった賞品であった。ディスカウントストアで購入され、大体の金額もわかっていたので、今の我が家の経済状況(離婚できてないだけで、子3人を抱えたシングルマザー状態)でも、壊れたテレビと同じランクのものなら、まあなんとかなる予算であった。

安いだけに、録画は外付けHDDが必要、そこは買い替えなくてもいいように、と箱の写真を撮って店に向かう。
許される価格帯から考えて3択。
①誰もが聞いたことのある、国内メーカーが、画質はそのままに、安さ据え置きの古い型のもの。
②聞いたことはないが、国内メーカーで、画質はまあまあ、でもリモコンは多機能です、というもの。
③日本以外の国のメーカー。画質も機能もまあまあ。
長男と相談の上、②にした。HDDのことを相談すると、
多分いけると思いますが、テレビにあわせてHDDも作り替えられるので、ちゃんと合うかどうかは……
という感じだった。

長男と力を合わせて設置すると、なんとHDDがあわない。箱の内側にある表を見てみると、①、③なら、そのまま使えたようだった。
ガッカリしつつも、大河ドラマの時間も迫っている。とにかく早く!と壊れたテレビを車に載せ、再び家電量販店へ。
HDD、あわなかったんです、
と相談し、すぐ購入して、店をあとにした。

以上のようなことがあり、結構大変でした、
と、勤務地から程遠い場所で行われた研修会で、婚外恋愛真っ只中の相手である「先生」に説明した。
すると、家電量販店に唆されて、要らぬ買い物までさせられたんじゃないの?大丈夫か?と、いうニュアンスの言葉を混ぜながら、
大変でしたね、
と程よい共感を返してくれた。

そういえば〇〇さん(先生のこと)、うち(単身赴任中のマンション)のテレビには録画機能がないから、早く帰らなきゃ、っておっしゃってましたよね、
使えなくなったHDD、要ります?
と、先生に提案してみると、快諾された。
テレビにあわなかったら、返却してください、
と付け加えつつ、これでまたゆっくり2人で会える機会が増えるかもしれない、と思った。

【追記】テレビが壊れたとき、相談したい!と感じたのは、なんと、息子でもなく、先生でもなく、ましてや別居中の夫でもなかった。
それは、このnoteでいつもハートマークを押してくださる、家電量販店にお勤めの方である。このほぼ文字だけのやり取りだけで、ハッと思い浮かぶのが、SNS上の見知らぬ方だったという事実に、少なからず驚いた。浅い使い方しかできてない私でもこうなんだから、もっと頻繁にされてる方なら、交際が始まったり、はたまた犯罪に巻き込まれたり……するんだろうな、と、現代におけるSNSの存在の大きさに慄きました。

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