サガン鳥栖2022 J1第15節 鹿島戦 感想

はじめまして。チタン(Twitter:@TNfutbol)と申します。
関東出身の鳥栖サポーターです。2012年からサガン鳥栖を応援しています。「フットボールには詳しくないがサガン鳥栖には詳しい」人間です。つまりこのnoteも素人の戯言ですのでざっと読み流していただければ。

戦術的なあれこれはほとんど語りませんし、僕には語る能力も知識もありません。そういった方面について知りたい方は、別の詳しい方の記事や動画をご覧ください。

はじめに

本題に入る前に、なぜこのようなnoteを書くに至ったのかについて簡単に(面白くないので飛ばしてください)。主な理由は二つです。

一つは、身も蓋もないですが書きたかったからというだけです(笑)。元々文章を書くのが好きなので、自分の感じたことを文章として残しておくのも面白いのではないかと。

また、もう一つの理由ですが(主にこちらの方がメイン)、ツイッターは文字制限があり、長文を書くのに適したメディアではありません。複数ツイートに分けることもできますが、それでは皆様のタイムラインを汚してしまうおそれもあります。そこで、こうして一つのページにまとめることに意味があると考えました。

そんなわけで、文章の内容もさしたるものではないと思われるので、暇つぶしにでも読んでいただければ幸いです。

テーマ


それでは早速本題に入っていきたいと思います。

ここでは、「この試合はどう評価すれば良いのか?」という点について、簡単な感想を述べたいと思います。

試合展開について


まずは試合展開について振り返ります(これも長いので全然読み飛ばしてください)。

開幕より、ピーキーな試合を演じながらも安定した成績を残しているサガン鳥栖。今節の対戦相手は、2位と上位につける鹿島アントラーズでした。

鹿島と言えば、やはりなんと言っても「常勝軍団」のイメージが根強いですね。Jリーグで最もタイトルを獲得しているクラブであり、何よりも勝利を追求するという強い信念、哲学を有しているチームです。

そんな相手と前節から中三日、しかも敵地で対戦ということで、正直なところ試合前は厳しい戦いになるだろうと予想していました。

実際に試合が始まってみても、その予想は覆らず。上田・鈴木選手を中心としたプレッシングに苦しみ、GKパギ選手はロングボールを蹴る以外なくなります。競り合いでも後手に回り、やや鹿島優勢かという展開で試合は進みました。

しかしそんな中、先制したのはサガン鳥栖。藤田選手のCKに田代選手が合わせる形で、見事に得点。待望であったCKからのゴールでした。やはり藤田選手が入ると、セットプレーという強みができるのは非常に大きいですね。

鹿島が押し込み気味だった中、試合の文脈を半ば無視した形で鳥栖が先制。すると、試合のバランスはここから一気に崩壊します。小泉選手のスーペルなレガテから、宮代選手の今シーズン初ゴール。あんなドリブルもできるのか、と正直驚きました。選手たちが新たな姿を見せてくれるのが、本当に楽しい今シーズンですね。

後半に入っても、入りは鳥栖優勢。なんと小泉選手のゴラッソが決まり、3ー0。古巣相手で気合が入っていたからなのかわかりませんが、小泉選手が鳥栖加入後最大級の活躍でチームを牽引します。彼は試合序盤から鈴木優磨選手に対して厳しくチェックに行くなど、チームの中でも一際動きが良かったように思います。

やはり、思い入れの強いクラブとの対戦には、期するものがあるのでしょう——そんな風に思わされたのは、彼一人が理由ではありません。そうです。小泉選手の得点から数分後、我らが鳥栖ユース出身・樋口選手に点を決められてしまいました。中盤の球際勝負で負けたところからサイドに展開され、クロスに鈴木優磨選手がフリックしたところを、フリーになっていた樋口選手に最後は決められるという形でした。

点を取った後の樋口選手の顔付きには、やはり鹿島らしさというのか、勝利への執念のようなものを感じました。三失点しても諦めないその闘志は、きっとチーム全体が(感覚として)共有していたものなのでしょう。

小泉が活躍すれば樋口も活躍。互いに古巣相手に点を取り合う形となり、試合のボルテージはここから一気に上がってゆきます。

菊地選手に変えて小野選手を投入するなどピッチに手を加えますが、鹿島に終始押し込まれる展開となり、鈴木選手の技ありな切り返しから上田選手に決められてしまい3ー2。そのまま何とか粘り続けますが、終盤になっても危ないシーンを作られ続けます。

そして運命のアディショナルタイムは6分。長い、と鳥栖サポーターなら誰もが思ったことでしょう。この段階ではまだ一点のリードがありましたから、逃げきれ!と願っていました。しかし、ここから鹿島怒涛の二連発。

3点目は左からのクロスを鈴木選手が折り返したところに土居選手。そして4点目は、こぼれ球を拾ったカイキ選手のクロスに、素晴らしい入り方をした染野選手。あっという間の逆転に、これが「常勝軍団」の底力か、と思わずにはいられませんでした。

カシマスタジアムの一体感、サポーターが一丸となった後押しも含めて、鹿嶋という土地、鹿島アントラーズというクラブ、その総体に敗れたような、感心とも畏怖ともつかない不思議な感情を覚えました。

このまま試合が終われば、さすがは強者だ、と世間の目は鹿島に向いていたことでしょう。しかし、そうは問屋が卸しません。

最後まで諦めなかった藤田選手の素晴らしいCK。クォンスンテ選手の動きを見逃さず、ゴールマウスを直接狙うスーペルなキック。その技術と度胸には惚れ惚れしますね。こぼれ球にはまたも田代選手が押し込みました。

どんでん返しに次ぐどんでん返し。まるでホラーかミステリーか、試合が一本の映画だとすれば「衝撃のラスト」だとか「最後の一秒まで見逃せない」といった謳い文句がつくのでしょう。これを「筋書きのないドラマ」というのですから面白いものですよね。

そんなわけで、この互いが魂をぶつけ合った激闘は、4ー4というスコアで幕を下ろしました。

この試合の意義


首位・川崎F戦から中三日で臨んだ鹿島戦。結果は4ー4の引き分けでした。一見すると勝ち点2を失ったように思えますが、しかし勝ち点1をもぎ取ったという見方もできるでしょう。どう捉えるかは、その人次第なんだと思います。

ただそれは、サガン鳥栖に何を求めるかによって、変わってくるでしょう。

ルヴァンカップ敗退が決まり、上位にもやや引き離されつつある現状。我々サガン鳥栖は何を目指していくべきなのか、それを真剣に考えていく時期に入ってきているのかもしれません。

一つの見方として、この試合は勝ち点2を失ったのだから、評価に値しない、というものがあるでしょう。

それは間違いありません。3点のリードは、通常の試合であれば勝ちを確信できる点差であり、そこから勝ち点1、どころかあわや0になってしまいそうになったことを考えれば、試合運びに難があったという評価は極めて正しいと思います。

もっとも、鹿島の試合にかける思いや圧が強かったこと、一点を返して以降のカシマスタジアムの盛り上がりなどによる心理的なプレッシャーはあったかもしれません。やはりアウェイの洗礼というのか——もしこれがホームゲームであったならば、違った展開になっていた可能性はあります。

とはいえ、川井監督もコメントしている通り、後半の試合運びは今後の課題と言えるでしょう。リードしている状況で押し込まれるというのは、今シーズンあまりなかった展開ですから、選手たちにとっても慣れないものだったのかもしれません。その意味では「こういう試合はシーズンで味わっておかないといけない」(以下のスポニチさんの記事より引用)という川井監督のコメントがすごく腑に落ちますね。あらゆるシチュエーションに対応できることは、チームが強くなるためには不可欠ですから。

そういう文脈で見ると、リードしてもなお一歩も引かずに自分達のスタイルを貫き通すこと——言い換えれば、相手が圧を持って前に出てくる状況であっても恐れずに自分達のやり方で立ち向かうことを、川井監督は求めているのでしょう。そして、それは鹿島のような強いチームを相手にした際(ましてやアウェイ)には、まだ体現できていない。だからこそ、一度は逆転されてしまったのでしょう。

今シーズン初黒星となった悪夢の京都戦にしても、立ち上がりからペースを握られ、その後も相手の圧に屈し続けました。鹿島戦も京都戦も、策をこねくり回すのではなく、真っ向から勝負することを川井監督は決断したわけです。それはもちろん自分達の強みでもありますが、同時に相手の強みでもありました。

そういった相手に対して、搦め手を一切使うことなく、真正面から挑むというのが川井監督のポリシーなのでしょう。それが、この数ヶ月で見えてきました。

もちろん、勝つための手段としては他にも様々なものがあるでしょう。手を替え品を替え、選手を変え戦術を変え——監督対監督、いわば頭脳戦の領域においてはいくらでもやりようがあります。

しかし、実際にピッチで戦うのは選手です。たとえどれだけ優れた戦術を監督が用意したとしても、選手が遂行できなければ意味がないですし、仮に体現できたとしても点が入らなければ勝利は得られません。

結局のところ戦術は手段でしかないのです。必要なのは選手の成長であり、組織の成熟。選手には自分達で考える力が求められますし、理論の及ばない領域、いわゆる「ファイト」という部分が根底には不可欠です。監督が、ひとたび試合が始まるとあまり指示を送らないのは、(彼自身のパーソナリティもあるでしょうが)結局戦うのは選手だ、という考え方が強くあるからなのかもしれません。

そういう意味で言えば、確かにこの試合で大逆転を喫してしまったことは課題です。何らかの策を施すことで、勝ち点3を得ることはできたかもしれません。

しかし、仮にそれで目先の勝利を掴んだとしても、得られるものがどれだけあるのか。そのことを考えた末の結論が、「戦い方を変えない」ことだったのでしょう。

鹿島には、3点差をひっくり返すほどのパワーとパッションがありました。意気消沈の前半とは打って変わって、後半は怒涛の勢いで鳥栖のゴールに迫ってきました。まるで勝利という獲物を狙う狼のような獰猛さと勇敢さを持って、鳥栖の守備陣に立ち向かってきました。

果たして今のサガン鳥栖に、3点差をひっくり返せるだけの力があるでしょうか? もちろん選手の個の力は違いますし、現状のサガン鳥栖は引いて守られると点を取るのは難しいでしょう。

しかし、強くなるためには言い訳をしていてはいけないのです。鹿島にできることを鳥栖ができなければ、鳥栖は鹿島を越えることはできないのですから。そして、鹿島(や他の強豪クラブ)を越えなければ、鳥栖が最終的な目標とする「頂点」に立つことは不可能です。

だからこそこの試合は、常勝軍団と謳われる鹿島の、恐ろしい底力を肌で体感したという経験に意味があるのだと思います。戦術云々は現場の選手・スタッフの皆さんが考えられると思いますし、僕は不勉強なので語る資格もありません。ただ、チームとしてこういう経験をしたことが一つの財産であり、クラブの価値を上げる過程の一つなのだと思います。

そしてその、点を取るという気持ち——最後の藤田選手のCK。たとえ大逆転をされても最後のワンプレーまで諦めないという姿勢が、鳥栖にもありました。その結果が、もぎ取った勝ち点1です。

そういう意味では、サガン鳥栖も鹿島アントラーズのような「強い」クラブになれるポテンシャルがあることを、確認できた試合なのかもしれません。

終わりに


サガン鳥栖が目指すものとは、一体何なんでしょうか。

「育成型クラブ」というキャッチーな標語はありますが、しかしそれは「育成」という部分に焦点が当てられすぎているという気もします。ユースが強いのはもちろんいいけれど、ではトップチームはどうしたいの? ということです。

実際には選手を売って経営を安定させて、というシビアな現実もあるかもしれません。ただ、最終的には、タイトルを取れるような——頂点の景色を見られるようなクラブになってほしいと思います。

そしてその過程として、今日のような試合を経験することが一つの糧に、きっとなるのでしょう。

数年後「あの鹿島戦があったから今がある」と言えるような分岐点に、この試合がなっているといいな、と思います。


駄文にご付き合いいただきありがとうございました。
今後も気まぐれにですが文章を書く……かもしれません。
それでは。

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