根来 龍之(早稲田大学ビジネススクール教授)

根来 龍之(早稲田大学ビジネススクール教授)

最近の記事

コマツのデジタル対応戦略は見本となる

本日の日経記事によると、 コマツが、他社製も含め建機をデジタル化できる後付け機器を20年に本格投入する。 これは、既存企業のデジタル対応の見本となる戦略だと思う。 年数万円でICT機能を後付けできれば、自社の最新型の建機販売が落ち込むリスクがある。つまり、一定のカニバリリスクがある。 それでも既存建機のデジタル化のための道具を安価で提供するのは、データ量の大小と活用の巧拙がデジタル対応のキーとなるという判断からだと考えられる。 後付けキットは、衛星アンテナのほか、建機の

    • UBERはビジネスモデルの根本部分がまだ安定してない

      UBER運転手は、個人「事業主」といえるのかという最初からの論点がまだか安定してないことを明記している。 UBERの上場申請書類の中で、経営上のリスク要因が書かれた部分に、この問題をめぐる訴訟が詳しく書かれているようだ。 特に、米国での訴訟と和解内容(従来の業務委託契約で被った損害の賠償)の内容が気になる。 「ウーバーが世界700超の都市に展開するライドシェアや料理宅配などのサービスプラットフォーム上では現在、約390万人の運転手らが働いている。ウーバーはどの地域でも雇

      • 「モノ」の定額サービスは難しい

        モノの定額サービスは、コンテンツの定額サービスと違って、収穫逓増になりにくいので難しい。 特に、もどってきた製品を中古市場でそれなりに価格でさばけない商品は定額サービスをしても、「割安感」を出すのは採算上難しい。 今回のパナソニックに試みは、「モノ」の定額サービスの難しさを克服できていないと思う。 これは、リースあるいは一種の割賦販売と呼んだほうがいいと思います。 契約終了時に、「下取り価格で購入」か「新型に切り替える」の二択しかないのであれば、サブスクの手軽さ(使いた

        • LINEの総合金融サービス業化

          LINEはすでに保険(ソンポジャパン)、証券(野村)にも合弁方式で参入している。 銀行参入で、LINEユーザーは、スマホさえあれば、ほぼあらゆる金融サービスを受けられるようになる。 もっとも、LINE関連会社のサービスを使うインセンティブがなければ、LINEユーザーが自動的にサービスを使うわけではない。 LINEユーザーが金融サービスを使うようになるのは、 個人的には、個人間送金と決済(LINEPAY)がキーだと思う。 LINEの弱点は、メインサービスが無料サービス

        コマツのデジタル対応戦略は見本となる

        マガジン

        • tnego journal
          3本

        記事

          もの足りない私大版ガバナンスコード

          この投稿を見る限りでは、私にはつっこみ不足に思えます。 そもそもグローバル化をめざす「上位校」と定員割れ対策が必要な大学は、今後は別の姿を目指していくほかないと思っています。 また、実質的オーナーがいる大学といない大学では、必要なガバナンスコードは異なると思います。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37841080W8A111C1CK8000/

          もの足りない私大版ガバナンスコード

          <書評> ウェイル & ウォーナー (著) デジタル・ビジネスモデル 次世代企業になるための6つの問い

          デジタル戦略の分野は次々と本が出るので、 追いかけるのが大変です。 また1冊、結構いいと思う本がでました。 Peter Weill & Stephanie Woerner What's Your Digital Business Model?: Six Questions to Help You Build the Next-Generation Enterprise の翻訳です。 Peter Weill(ピーター・ウェイル) は、MITの教授です。 『ITポートフォリオ

          <書評> ウェイル & ウォーナー (著) デジタル・ビジネスモデル 次世代企業になるための6つの問い

          米国事業とメルペイが次の成長のカギ

          米国事業は、成長軌道にすでにある。 期待できると思う。 しかし、メルペイのスタートがいつなのか、市場が待ちきれなくなり始めている。 QRコード決済で参入するとすると今年中に開始しないとタイミングが遅すぎると思う。 また、「手数料無料」を参入せざるをえないと思うが、これは当面の赤字をさらに広げることになる。 期待しているが、タイミング遅れにならないことを祈りたい。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37554850Y8A101

          米国事業とメルペイが次の成長のカギ

          当面は素晴らしい連携戦略。将来も続く連携かは?

          ドコモは全関連分野を自社でやるのが基本方針。 ソフトバンクは抜けている分野もあるが、ドコモ以上の範囲で海外企業との連携が視野に入っている。 たとえば、MaaSやAIやアームチップ。 残るKDDIは、弱い分野がいくつかあった。 この提携で、2019年4月から始めるスマホ決済サービスの「auペイ」の加盟店に最初から楽天ペイの加盟店を加えることができる。 さらにKDDIのネット通販の「ワウマ」が、楽天の物流網を活用させてもらう。 これらの連携は、楽天にとってはライバルに

          当面は素晴らしい連携戦略。将来も続く連携かは?

          顧客囲い込み手段として有効

          セット販売は、顧客囲い込みとして有効。 通信側が電力小売りに参入しているのだから、防衛上、通信への参入は当然。 意思決定が遅すぎたくらい。 「今回はNTTの光ファイバーを活用するため東電の費用負担が少ない。通信事業から直接得られる収益は限られるが、サービスの幅を広げることで、電力顧客の流出防止や関東以外での新たな顧客の開拓につなげたい考えだ。」 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO36743660R21C18A0TJC000/

          シアーズは本当にamazonに負けたのか?

          この記事では、GMSと百貨店が、ネット通販の荒波に直撃されたという分析になっているけど、 それはおかしいのでは? 百貨店が負けたのは、ディスカウンター(ウォルマートやコストコなど)、専門店やアウトレットだと思う。(一方、ウォルマートは、郊外店でネットの脅威はうけている?) これは、ネット以前に出現した業態からの脅威をうけて、 GMSと百貨店が衰退したということ。 いわゆる「小売りの輪」の理論で説明できる世界。 ネットの脅威がなかったとは言わないが、 GMSと百貨

          シアーズは本当にamazonに負けたのか?

          「今ごろ」感が半端ない!?

          銀行がネットチャネルを開設した時に、 ネットチャネルの優遇策をとるべきだった。 おさいふケータイが出た時に、 遅くてもスマホがでた時に、 電子決済を進める優遇策をとるべきだった。 「いまさら誘導とは。。。」という感じが否ません。 「ゆうちょ銀行は13日、顧客間の送金手数料を毎月2回目から有料にすると発表した。」 「両替の手数料は窓口で一定枚数まで無料だったが、昨年から三井住友銀行やみずほ銀行、三菱UFJ銀行が相次ぎ有料化。」 「みずほ銀行は住宅ローンの繰り上げ

          キャッシュレスの普及拡大・・・・・意識変化は起こるか

          個人間決済の前提としてのキャッシュレスの普及拡大について、ご意見を募った。 5年後の日本のキャッシュレス率について3つの選択肢を選んでいただいた結果は、 Aがやや多かったが、意見が3分する状況だった。 (BとCが半分以上だったので、ややキャッシュレス率が高まるという意見が多いとはいえる。)A. 今とほとんど同じ20%程度。(25%以下) B. 今より10%程度多い30%程度。(政府目標は、2027年までに40%) C. 今の英国なみの50%程度。(40%以上) 問

          キャッシュレスの普及拡大・・・・・意識変化は起こるか

          【ご意見募集】5年後、個人間決済は普及するか?

          【1】 日本のキャッシュレシュは、主要国に比べて遅れている。 たとえば、4/9の日経記事によると、日本は20%程度で、韓国(89%)の4分の1程度で、中国(60%)や英国(55%)などに比べて、かなり低い。 理由は「現金の方が使いすぎない」「現金しか使えない小規模店がある」ことがよくあげられる。 ここでは、キャッシュレスが進まない間に、中国や米国では生活に根差しはじめた「個人間決済」も普及していないことを取り上げたい。 食事などの割り勘、立て替えの精算、仲間内の会費の

          【ご意見募集】5年後、個人間決済は普及するか?

          E-paletteがいよいよ具体化へ

          トヨタさんのプラットフォーム製品構想。 日本市場だけではなく、世界の最先端をいってほしい。 「トヨタが進めるイー・パレットはEVの供給だけでなく安全な制御や保険、決済、メンテナンスなど複合的なサービスの創出が狙い。車両を売り切るビジネスではなく、リース形態にしたり、提携先に複合サービスを提供したりして稼ぐモデルの構築を目指す。高度なレベルの自動運転を実用化するためのデータを蓄積する狙いもある。」 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO

          手数料引き下げが鍵

          手数料を1%未満にするのは、経産省じゃない。決済会社の意思決定。 QR決済サービス会社としては、デビットカードや銀行口座に直結させてすぐに現金回収できる+回収漏れがないようにならないと1%未満にできないのでは? また、ポイントサービスを厚くすると手数料に転嫁せざるをえなくなる。 しかし、実際にはレッドオーシャン型競争で、利用者拡大のためにポイントサービス拡大に走る傾向がある。 その結果、手数料が下がらず中小商店へのQR決済普及が遅れる、あるいは中小商店がQR決済を喜ば

          KDDIのグローバル戦略本格化

          KDDIのグローバル戦略本格化。 これで、ソラコムさんの買収もさらに活きてくる。 期待したい。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31483560X00C18A6000000/