わが国の林業・木竹材素材産業再生の手立てを考えよう

―フミン質に続く発見―

 私の研究所には人工の池が二つあります。前回お見せしたのは長方形の池で、昔の住人がここで鯉を育てていたようです。もう一つは研究所の玄関の前にある琵琶湖をかたどった池ですが、この池でメダカや芝エビ、水生昆虫やカワニナを育てていました。クロモという淡水藻も昔は小川にいくらでも茂っていたのですが、これも減少してきたので少しでも増やそうと池に入れておいたところ池全体にびっしりと生え、時々間引きをしてやらないといけないくらい繁茂しています。池の住人達は大喜びで、モリアオガエルやシュピーゲルアオガエルも集まってきて産卵するようになりました。去年、長方形の池で育てていたクレソンをこの池に移し替えたところ、何と、恐るべき成長をはじめ、写真で示すようにこれまで自然生えで小川などに生えているクレソンとは比べモノがないくらい大きく育ちました。スギのフミン質が多く含まれるような貧栄養の渓流の水ですから硝酸体窒素のような栄養分はほとんど含まれていないはずです。そこでハタと気が付いたのは、クロモの存在です。
 クロモが光合成の結果水中に酸素を放出し、水の中の溶存酸素量が増えた結果、クレソンの根の呼吸が活発になり、その結果根が発達して植物体全体の成長がよくなったのではないだろうかという結論です。
 渓流は水の流れによって空気中の酸素を取り入れますが、これに加えて植物プランクトン、ミズゴケや水生植物が光合成によって水中に酸素を放出することで、この酸素の豊富な水が川の周囲の土壌に浸透し、植物が豊かに育つという構図でしょう。
 数十年前ですが、ハイポニカという水耕栽培の技術が開発され、木のように育ったトマトから300個以上の実の収穫が得られたことが評判になりましたが、これと同じ手法を発見したのかもしれません。しかし、人工的に作られたミュータントのようなトマトの木から得られる実が自然循環の調和の中で得られる実と同じものかは不明です。
 ハイポニカの技術は、豊かな生命を育む渓流の生態系に何ら寄与しないでしょう。
 フミン質に関する研究で明らかにされているのは、フミン質にはフルボ酸、フミン酸、ヒューミンの三種類に大別され、フルボ酸はアルカリ性、酸性の水に溶けるが、フミン酸はアルカリ性にしか溶けないのに対してヒューミンは両方の水溶液にも解けない頑固な構造で、スギのフミン質はヒューミンと考えられます。人間の都合だけで植えられたスギから生まれたヒューミンが、ハイポニカの技術同様自然界の調和と共生に害を与えこそすれ、何ら貢献していないことを理解して頂きたいと思います。
 スギには何の罪もありません。植え過ぎたスギを有効利用し、豊かな自然生態系を取り戻すために、林業、木竹材素材産業の再生が唯一の手段になるのです。

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2020/5/18

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