丸太のままの熱化学還元処理     ~我国林業の惨状~

お見せする写真は、ヒノキとスギの丸太。これらは全て捨てられる材です。
ヒノキは、長野県から持ち込まれたものですが、直径が15cmから25cm、長さ1mにカットして山中に捨てられる運命にあったものの一部を運んできてもらいました。スギは直径が20㎝から40㎝、私の研究所の所在地、滋賀県湖南市三雲で支障木として伐り倒されたものです。
Face bookやSNSは新参者で、未だにうまく使いこなせませんが、Face bookを通して、真面目に林業に取り組んでおられる多くの人々が存在することを知りました。おかげで勇気をもらっていますが、その一方ですさまじい現実も突き付けられています。それがこれらの写真です。この材料を丸太のまま熱化学還元処理(TCR)した後製材するとどうなるか。後程お知らせします。結果をお楽しみに。
世間ではSDGsや炭素固定、地球温暖化対策等の言葉が溢れていますが、問題解決のための具体的な手段、ハードがほとんど講じられていないのではないかと感じています。製材廃材をバイオエネルギーとして利用するのは問題ないでしょうが、丸太ごとチップにして燃料に使うという発想は異常です。小手先の施策と小さな自己満足の世界ばかりが目立ちます。そろそろ、皆の思いを大同団結して大きな力にしなければならない時期に来ているのではないでしょうか。

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捨てられたスギ、ヒノキ(2)
樹木は樹体を支え、維持するために色々の工夫をしています。木口面で見ると、円周方向の樹皮側で圧縮応力が働いていて、この応力は樹皮側から半径の1/3のところで引っ張り応力に変わります。垂直方向では、樹皮側で引っ張り応力が、半径1/3のところから圧縮応力に変わります。樹体の構造を単純化すると縦方向の長い長楕円体と考えればよいでしょう。この長楕円体構造を維持するために樹体内に複雑な応力分布の場を作り上げているのです。見事な樹木の知恵です。
この複雑な構造体を私達が木材として利用する場合、製材して柱や梁、板材にするとこの内部応力が解放されてご存知のように色々の障害になります。
先人は、大変な努力を重ねて製材技術と寸法安定化の工夫をしてきたのですが、科学的に上述したような内部応力の分布形態が明らかにされているにもかかわらず、樹木の本質を見極めて、基本的な問題を解決する手段が未だに確立されてこなかったのが不思議です。樹体内に形成された複雑な応力場をどのようにすれば均一な場に変えられるかを考えてみてください。丸太をそのまま熱化学還元処理するということにヒントがあります。

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