意思決定は練習しなければできない

振り返ってみると、自分はキャリアの多くを経営に関わり、決断、意思決定の場面を多く経験してきたと思います。アーリーリフレクションでも日々、どうしたらメンバーの意思決定力があがるのか?を考えているので、少し自分のことを振り返ってみたいと思います。

妄想あらため、バーチャル意思決定トレーニング期間

私は、はじめての会社では、非常勤の取締役だったため、取締役会に出席する以外に特に役割がありませんでした。では、ぼーっと暮らしていたかというとそれほどでもなく、その立場をいかして、いろんなものを見たり聴いたり、ディスカッションにいれてもらったりしました。特に話を聞きながら、自分が社長ならどうするか?をいつも自分の選択肢を持ちこたえ合わせをするようなことをしていました。

会議以外でも会社のことに興味が湧いたので、頻繁に会社に行って、とはいえ特にやることも無いのでみなさんの様子を観察したり、会社になにがあるか、どう整理されているかを見たり、ドキュメントを読んだりしていたのですが、会社のみなさんが何をしていて、何をしていないのか、理解することができました。
(いまだとリモートなのでそういう理解の方法はより難しくなるかもしれません。その場合には、ドキュメントやチャットなどのアウトプット中心に評価ことになると思います。)

この期間は、僕にとって、経営的な意思決定≒決断の良いトレーニングになったとおもいます。決断の際には、予想をします。僕の選択と他の選択で、結果を予想します。結果は現実がだしてくれます。そうして自分の予測や決断の精度をはかります。そのうちに、自分の決断は悪くないなと自信を持つようになりました。

その後、非常勤から常勤にとお声がけがあり、戦略企画室という部署をつくってもらい室長に就任することになりました。それから僕はずいぶん長い間、企業のリアルな判断の紆余曲折にどっぷりつかることになります。特に新しいことがらについては、いつもアサインされ、部門の長がいなくなるたびに(その後任が決まらず、といったバタバタの中で)その部門長を暫定的に経験するようなことをしました。そうして複数の部署を経験するたびに、1から勉強して、自分で判断できるようにとしていきました。

とまあ、自分の場合は、こんなふうにバーチャルな練習(自分自信の妄想ともいれる思考実験)の期間を経て、実際に現場でも判断をする場面が多く、さらには、自分の知識や経験がそれほど無い場面、意思決定のトレーニングを積んできたといえます。

意思決定で意識したい「何もしない」という選択肢

その結果、私についていえば、重要な場面では、これは意思決定だぞ、と自分にいいきかせます。そして、選択肢A、選択肢B、選択肢C(何もしない)を並べて、分析をします。

Aをえらんでも、Bを選んでも、Cを選んだ場合の、メリット、デメリットそれに関係するいくつかの起こりそうなシナリオを分析します。何もしないという選択肢もきちんと検討するのがポイントです。なお、何もしない場合には、今は何もしないでいつまでに次のアクションが起こるのか、別のトリガーがあるのかまで考えてみます。

とれない選択肢ははずしたうえで、上位1〜3までの選択肢ならまあいいかな、ベストは1かなのように決断の準備をします。影響が大きくない決断は即決します。一方で、大きな決断には、がんばって出し切って案を作った上で、一晩寝かして、すっきりした頭で決断するようにします。

非常に大切なのは、お題があったら、かならず意思決定するということです。何もしないという意思決定であっても、それは意思決定しないではなく、積極的にする、ということが大切です。ここで、意思決定しないことと同一視は絶対にしてはいけません。意思決定のトレーニングは、お題があったら選択をする、決断するということで、はじめて成り立ちます。

従来型の組織は、成功したがゆえにメンバー個々が決断できない

メンバーが決断しない体質の企業/組織は多いように感じます。どっちでもいいような内容を決断せずに、持ち帰りにしてしまう。それは、その組織での評価が失敗を許容しないように、決断をしづらくする方に向いているせいかもしれませんから、組織のデザインとしては、意識的に行った結果です。

そういう従来型の組織では、いままで「規則に従い、指示に従属する」人、上司の指示をこなすことに特化したホワイトワーカーを、望んできたのではないかと思います。
それはある意味当然で、一度「儲かる理想的な仕組み」を完成させれば、その後はそこに従属して、ひたすら実行するというメンバーが必要になるわけです。

意思決定の必要はあまりなく、あったとしても、上が判断する、という形で十分です。そのモデルで成功しているので当然、そのような従来型の組織では、メンバーは意思決定は面倒くさいし責任をともなうので、このような組織で意思決定を行っていくのは大変に思えます。

私はどう考えているか?

自分の組織(株式会社アーリーリフレクション)では、従来型組織にするつもりはありません。プロジェクト型にしています。プロジェクトの構成メンバーは、それぞれ判断をしてものごとを進めていきます。若いメンバーでもばんばん判断できる人もいます。上司はスーパーバイザーのような役割であり、内容によってはもちろん意思決定を行います。

意思決定の訓練がまだできていないメンバーは、おっかなびっくりですが、それもたくさん経験すること、知識不足が不安なのであれば知識を得ることで解消すべきで、いずれにしても、われわれの組織では、大きく拡大してもそれぞれが判断できる状況を目指しています。

なぜそれぞれが意思決定できると良いのか?

それは組織が拡大したとき、責任者になって急に意思決定をしようとおもってもできないからです。小さくリスクの無い、負荷のない場面で多くの決断をしてトレーニングしておくべきだと考えています。

本当に企業のメンバーが意思決定する必要があるのか?

拡大する組織には、ある程度のポジションを務められる意思決定力のある人材が不可欠でしょう。意思決定トレーニングを積んでない人は、よほど才能があったり、別の形でトレーニングしない限りは、上の立場に行っても決断ができません。

また、そうでなくても、今後のビジネス環境では、AIやITの大きな活用や、ライフスタイルの変化、人口動態の変化など、環境が大きくそしてすごく速く変化するなかでは、意思決定を預けられるチームメンバーが大変大事になるとおもっています。未来の事業環境には、意思決定力判断力のあるメンバーの多さが大変重要なのです。

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