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名文引用箱

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読んだ本の中から名文を引用し箱の中に放り込んでゆきます。
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2015年8月の記事一覧

名文引用箱

《総督の仏頂面は食前酒機嫌の会話に好個のさかなを提供し、むかつきやすい植民地の肝臓は、夕食前にその中で溜飲を下げるのだった。》(セリーヌ『夜の果てへの旅』)

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《まごころを持った顔をするのに僕は一寸操作を行った。それは顔の筋肉を平均にはたらかせ、眼だけに力を入れて凝視するのだ。するとたしかにまごころを持ったかんじに自分がなる。自分がなれば、もう占めたものだ、効果は確実である。ところが確実ではなかったのである。》(小島信夫『燕京大学部隊』)

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《大切なのは、錯覚のために文が読めなくなったとき、それに気づいて、ハッと驚けることです。驚けること、そしてパッと頭を切りかえられること、それが学力なのです》(伊藤和夫『ビジュアル英文解釈 PART1』)

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《想像力の持ち合わせがない場合は、死ぬこともたいした問題じゃない、そいつを持ち合わせているときは、死ぬことはたいへんなことだ。》(セリーヌ『夜の果てへの旅』)

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《そのときローマ人は、連れてきたライオンで敵をドナウの向こうに追い立てようとしたという。しかし、ライオンを見たことがなかったゲルマン人はそれをこわがることもなく、この「大きな犬」をかんたんにやっつけてしまった。》(ゴンブリッチ『若い読者のための世界史(上)』)