えいたそこと成瀬瑛美さんのミニライブ?に初参戦してみた
ヤンマガ読者だったので、最上もがという方は見たことがあった。
10年近く前だろうか。
年の離れた友人から、
「大学入学祝いに夢眠ねむのチェキが欲しい!」
と上手におねだりされ秋葉原へ。
数百円だろうと思っていたチェキは5,000円前後で販売されており、必死に1枚を選び続ける新女子大生の可愛さにほだされ2枚買ってあげたのが、でんぱ組.incとの初接点だった。
彼女は、まだあのチェキを大事に持ってくれているだろうか。
時は過ぎ僕はまっとうなサラリーマン。
昨年夏ごろから同居人と10年遅れのでんぱ組.incブームが巻き起こっていた。
きっかけは同居人のダイエットだ。
TRFのダイエットDVDは早々に飽き、ちょっとだけ通ったキックボクシングで踊ってエクササイズに目覚めた。
ゆかりんのDVDで踊り狂っていたが、いまいち動きが少ない。
そんな中、ふと思い出してでんぱ組.incの「おつかれサマー」をyoutubeで観せる。
お気に召したようだ。
BOOKOFFに行き、ライブDVDを漁る。
非常に安く、ボリュームタップリのDVDに二人とも魅せられた。
なんともコスパのいいグループだ。
踊るのがメインなので、「おつかれサマー」「でんでんぱっしょん」など、勢いのある楽曲を中心に覚えていく。
よく知ったカバー曲も多く、テレワークで机にへばりつく僕の部屋の隣で流れ続けるDVDのおかけで、かなりの曲を覚えることになった。
というか、音ゲー等で聞いたことがある曲も多かった。
意外と売れていたんだなぁ。
カラオケのLIVE映像を観ながら踊ることにもハマる。
週一で通い、ジョイサウンドで映像を観ながら僕が歌い同居人が踊り狂う。ぼっちで陰キャな二人が陽キャのように振舞う。
「ORANGE RIUM」や「あした地球がこなごなになっても」などなど、歌うにつれ、今更ながら歌詞の良さに気付く。
全体的にネガティブな気持ちの歌詞を、個性的なメンバーが温かい気持ちに昇華させてくれる。
珍しく半年以上ブームは続き、数年前のメンバーチェンジに慣れたり慣れなかったりしていたある日、しょこたんのツイートにえいたそがいるのを発見し、なんとなくフォローをしてみる。
声が聞こえてきそうなほど騒がしい元気なツイートと、猫に癒されていたある日、ソロシングルの発売を知る。
あー卒業していたんだっけ?
それぐらい曖昧な知識だ。
プリキュアの声をやっていたのはハグプリよりかなり昔だと思っていたぐらいだ。
推しは二人してピンキーだ。
どうやらタワレコでミニライブをやるらしい。
同居人にツイートを見せてみる。
「行きたい!」
かくして、とても苦手なライブへの参加が決まったのである。
まず、僕らはファンと言っていいのだろうか。
ヤフオクやメルカリでトートバッグ等のグッズを購入し、中古のDVDを買い漁る僕らはでんぱ組.incの売り上げに一切貢献していない。
アマプラやカラオケで聴いたり歌ったりで、もしかしたら合計1円ぐらいはお支払いしているかもしれない。
中古のペンライトをネットや秋葉原で探して結局買わなかったり、プリキュアのラバストを無駄に増やしたりして準備を進めるへっぽこ二人。
卒業してはいるが、でんぱ組.incのライブである。
僕らは武道館や幕張など、大きな舞台で全国ツアーをしている彼女らしか知らない。
「何時間前に現場に行けばいいのだろう」
「屋上なんて小さなとこだし、入れなかったらどうしよう。新宿参戦も視野に入れた方がいいんだろうか」
「ってか渋谷怖い!!」
不安に包まれながら当日を迎える。
埼玉県民らしく、池袋で東京に身体を慣らし、渋谷へ降り立つ。
タワレコの場所を確認し、7Fまで上がり、9Fへ直接行けないことを確認して一旦去る。
「16時の販売開始になったらエレベーターで上がれるようになるんだろう」
納得して、コナンの聖地巡りに興ずるバカ二人。
韓国アイドルのイベントがあるらしく、小奇麗な女の子たちがいたるところで進路妨害をしている。
アキバっぽい人たちはそんなに見かけない。
がっつかなくても大丈夫そうだ。
15分ぐらい前まであちこち練り歩き、タワレコへ戻る。
1Fエレベーター前で立ち尽くす二人。
16時を過ぎても9Fへ行く気配はない。
試しに乗ってみるが、9Fのボタンは反応しない。
仕方なく7Fで降りる。
店内を2周しても上へ移動する手段は見つからない。出来の悪いファミコンをやっている気分になりながら彷徨い歩き、意を決して店員に聞く。
「あーあっちに階段があるから並んでください」
女子トイレの近くで、女の子がたくさんおったのでノーマークだった場所にたたずむ階段とたくさんの人。
上がってみると、黄色い服を着た人が増えていく。
階段の上下を繰り返し、やっとこ最後尾らしきところを見つけ並ぶ。
いくつかのイベント列が交差してわかりづらい…。もうちょっとなんとかならないものだろうか。
並び始めてすぐ、大人しそうな女性に声をかけられる。
「この列って…?」
なんて答えればいいんだろう??
(でんぱ組…は卒業してるし、えいたそ…で通じるの??成瀬瑛美さんって答える?え、でも違う人だったらわかんないよね?)
同居人に丸投げしようと突っつくが、やはりフリーズしている。
「あっ…で…んぱ組の……えいたそ…の……」
通じたようで、後ろに並んでくれた。
コミュ障で非常に申し訳ない。
のんびりのんびりと列は進み、長い時間をかけて販売ブースにたどり着く。
生まれて初めて同じCDを2枚購入し、無事チケットと特典引換券を手に入れる。ここまで長かった…。
入場順は、僕が70番台、同居人が120番台と相変わらず引きが悪い。
少ない時間をまんだらけなどのヲタ活に充て、30分前にタワレコの隠し階段へ戻る。
時間ちょっと押して屋上へ到達。
想像より小さいスペースに、想像よりかなり小さい舞台。集まった観客は100人前後だろうか。
番号が読み上げられていくが、該当する人が少ない。かなり多めに抽選券を用意する仕組みなのか、予想以上に人が集まらなかったのかどちらだろう…。
後ろの番号でならば一緒に入場していいとのことなので、120番台の番号で入るつもりだったが、同居人がそわそわしている。
一般人よりかなり小さい同居人は、大きな男の人が続々と入場しているのを見て、フラットな会場に不安になっているようだ。
70番台のチケットを渡し、先に入るよう促す。
番号が呼ばれ、ワナから解き放たれた野生動物のように、何度かこちらを振り返りながら会場に入る同居人。
1列間をあけて入場する僕。
所在なさげにきょろきょろと落ち着かない。
男性陣は田村ゆかり嬢のライブより、少々若い人が多い印象。まぁほとんど変わらん。
僕を含め、どこの秋葉原にお出ししても恥ずかしくない出で立ちだ。
女性陣は、田村ゆかり嬢のライブとだいぶ異なり、サブカルっぽい子が多い印象。女性陣の方が圧倒的にお洒落に気を使っているように見えるのはどちらも同じだろうか。
黄色い衣装を着たえいたそが、会場端っこの非常階段から身体を小さく屈ませて控室?に消え去る。
ちらっとこっちを見た笑顔が印象的。
会場内の音楽が一瞬大きくなり、消える。
アナウンスがあり、えいたそが小走りでステージに上がる。
なんとなく聞いたことがある曲が流れる。多分youtubeで数回聴いた新曲なんだろう。
元気いっぱい歌い踊るえいたそ。
当たり前のようで当たり前じゃないことのようだが、非常に歌が上手い。
で、「歯並びキレイだなぁ」と思えるほど近い。
大歓声で迎えられると思っていたし、声が出そうになったが、誰もが声を出さず、大きな拍手でえいたそを迎える。
黙食!!
ってそこら中に張り出されている飲食店よりよっぽど行儀がいい。
ゆかりんのライブの時も思ったが、好きな場所を守るためにしっかりガマンできる姿はとても美しい。生えいたそも相まって涙が出そうになる。
余談だが、同居人は登場した瞬間に号泣していたようだ。
1曲目、全体的に大人しい感じで終わり、元気なMCが始まる。
「寒かったら、みんな身体動かしてあったかくするんだよぉ!」
と、一番寒そうなえいたそがみんなに元気を配る。
渋谷だから渋谷系のこの曲をーと「強い気持ち強い愛」が流れる。
若い時ににはみ出るほど聴いた大好きな小沢健二。
ライブDVDで上手にカバーしていることを知り、ハマるきっかけになったと言っていい「強い気持ち強い愛」。
「卒業したらでんぱ組の歌って歌えるのかな?」
「でも歌えなかったら歌う曲ねぇな?」
「そもそも一人で歌えるようなもんじゃないな?」
いろんな不安を吹き飛ばす選曲に再度涙ぐむ。
大好きな曲だ。
歌詞なくたって全部歌える。
一緒に歌いたい気持ちをこらえながら、周りの人を見ながらマネして手を振る。
「みんなこんな気持ちを抑えて、黙って静かに声援を送ってるんだ」
よく知った曲を聴いて初めて、ゆかりんのライブや今回のライブのみんなの気持ちを知れたような気がする。
えいたその謎の渋谷愛や渋谷ディスを挟みながら、4曲を堪能。
最後の曲は、でんぱ組の時のソロ曲なのかな?最後の曲にふさわしいかふさわしくないかはわからないが愉快な曲だった。
30分ほどの短いライブが終わり、えいたそも一旦捌けて、サイン会の準備が始まる。
CD2枚購入の特典で、サインかチェキか選べる。
そんなのほとんどの人がチェキを選ぶんじゃないかな?と思っていたが、意外にも3割ぐらいの人がサインの列に並んだ。
えいたそが再登場し、サイン会が始まる。
一人一人に予想以上の時間を費やし、おしゃべりをして楽しそうにサインをする。
サインをもらった人たちは、そのまま楽しそうにチェキ待ちの群れに合流する。
ですよね。4枚買いますよね。
隣を見ると同居人が、まだ残っている販売ブースをチラチラ見ている。
もう2枚買い足そうか迷っているようだが、お財布と相談して断念した様子。
むちゃくちゃ寒そうな格好で笑顔で会話を続けるえいたそ。
「足をずっと閉じてるのは大変そうだなぁ。アイドルってやっぱり大変だ」
なんてロクでもないことを考えている間にチェキ撮影に変わる。
いつだって、美味しいことは同居人が先。
だが、様子がおかしいので、少々強引に僕を先にしてもらう。
数人前から、撮影する人をジロジロ観察する。
「荷物はそこに置くのね」
「ポーズは話合って決めるのね」
「撮影前にちょっと話せて、撮影終わった後にも話せるのね」
絶対飛ぶ。全部真っ白になる。
自信があったので、ひたすらシミュレーションを繰り返す。行動を全部ルーチン化させないと…。
前の人の撮影が始まり、わたわたと荷物を置く。
あっという間に撮影は終わり、おぼつかない足取りでえいたそに近づく。
えいたそ以外なにも見えなくなったステージ上で、必死に声を絞り出す。
「初めて来ました。今日はありがとうございました」
「初めてきてくれたんだー!ありがとー!!」
嬉しそうな声は聞こえるが、どんな表情をしてくれていたかは全く頭に残っていない。
よくわからないが、指でハートを作り撮影する。
多分、無意識にハートを手で作ろうとして、えいたそが合わせてくれた気がする。
(最推しじゃなくてごめんなさい)
(にわかでごめんなさい)
(すごい楽しかったです)
(元気もらえました)
全部言葉にならない。
「…次の子、むちゃくちゃ緊張してるから、多分なにも話せなくなってます。優しくしてあげてください」
これだけは伝えなきゃと精一杯絞り出した声は、よっぽどボソボソとしていたのだろう。
耳に手を当てて、思いっきり近づいて(多分)優しい表情で聞いてくれた。
頭を下げ、係の人からチェキを奪い取りステージを降りる。
振り返ると、同居人がSIRENの屍人のようにフラフラとえいたそに近づいて、プリキュアのラバストを付けたクマのぬいぐるみを突き付けていた。
うつむいたままで。
僕以上にフラフラとした足取りで戻ってきた同居人は、案の定大号泣をしていた。
すっかり暗くなった屋上で、まだぼんやりとしか映っていないチェキを眺め、「よかったね」「楽しかったね」「よかったね」壊れたレコードのように繰り返しながら階段を下りていった。
会場に着いた時、人数の少なさにビックリした。
小さいステージからスタートし、大きなステージの大観衆を知っているこの人は、この規模をどう思うんだろうと不安になった。
でも、えいたそはDVDで観た姿と同じく、ツイッターと同じく、元気いっぱいで、会場のみんなや僕に元気を分けてくれていた。
初めての参戦で、こんなに身近に感じることができたのは本当に幸せな経験だったと思う。
今度は、大きなステージの中の小さな存在として、えいたそを応援したい。
アイノカタチを知っている人と接することが出来て幸せだった。
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