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素人が田村ゆかり嬢のライブに行ってみた
30年近く前だろうか。
東京パフォーマンスドールのライブに行ったことがある。
友人に誘われて行った初めてのライブは、横浜アリーナの2階席(?)の一番前。遠くの遠くの方にステージが見える席だった。
照明が消え、音楽が鳴り響き、TPDが登場する。
ライブは立つ物だと思っていたが、周りは微動だにしない。
少し離れた席で、教本通りのような細いヲタクの少年が立ち上がった。
「え??みんな立たないんですか????」
少年は叫んだ。
その後ろから、
「見えねぇよ!!」
とおっさんの声が響いた。
驚きに満ちた顔で座る少年の顔が忘れられない。
彼はあのトラウマを克服して元気にやっているだろうか。
7月1日、「田村ゆかり嬢のライブの一般発売が取れそうだから一緒に行かないか。」と連絡が来る。
どうせ取れないだろうと適当に返事をする。
取れたようだ。
かくして、2018年秋のゆかりっくフェス以来となる田村ゆかり嬢のライブに参加することになった。
TPD、ゆかりっくフェス、今回と、誘われてなんとなくついて行く。
あまりライブに興味がないのだ。
行けば楽しいのだが、安くない金額を払って遠くまで行って、待ち時間も長くて…となるとどうしても尻込みしてしまう。
同行者の影響でゆかり嬢のことはそれなりに知っている。楽曲も多数聴いているし、なんならカラオケで歌える曲も数曲あるが、いかんせん声優にあまり興味がない。
神谷といったら明だったはずが、いつの間にか浩史になっていた。それぐらいの知識だ。
好きな声優はと聞かれたら、散々迷った挙句に関俊彦さんと答えるだろう。
それも無責任艦長タイラーのル・バラバ・ドムの声がステキだったからだ。他の役は寡聞にして存じない。
会場となる東京ガーデンシアターのキャパは約8,000人とのこと。
ライブというと数万人規模のイメージしかないので、きっと小さいところなのだろう。
40をだいぶ過ぎた17歳の、やる気なさそうなのに声だけは大きいMCと、やるかどうかわからないyoutuberちゅぱりんに会うのを楽しみに、そして日曜の夜に遠くまで出かける憂鬱さを胸に当日まで過ごした。
ライブ当日。
ゆりかもめの中で豪雨に遭遇し、有明に到着。幸い雨は止んでくれた。
電車の中や、昼間うろついていた秋葉原にライブTシャツを着た王国民を見かけなかったので、本当にやるのか不安だったが、改札を出ると王国民だらけだった。どうやらりんかい線利用がメインだったようだ。
曇天模様の空の下そぞろ歩く王国民たち。
フェスの時も感じたが、総じて高めの年齢層。御髪も少々寂しくなった方も少なくない。
女性陣は大好きな姫に会えるからだろう。精一杯オシャレをしている。同行者曰く、ロリータファッションの人がかなり減ったそうだ。
曇天のせいか、ファンの高齢化によるものなのかはわからない。
一般入場口の場所がわからずかなり時間を使って入場。物販列に並ぶ同行者について行く。
ぼんやりしていたら、物販待機列から販売列に切り替わる際に、同行者と別々にされる。
特になにも買わない予定でいたが、そのまま出ていくのも恐縮なのでTシャツを購入。せっかくだからピンクにするつもりだったが、XLが売り切れなので紺を購入。
久米田康治氏が言うところの「着れるやつ」だ。どうせなら着れないやつの方がよかった。
並びながら座席の場所を確認する。
チケットを見て唖然。5F第3バルコニー。
5階??ライブなんてあっても3階ぐらいじゃないの??
東京ガーデンシアターのサイトを確認。
おぉ一番上だ。
で、13列13列……、おぉ後ろから2番目だ。
開園時間ギリギリで席に到着。
後ろの1列以外は全て見渡せる環境。全てのファンを見ることが出来る。
ただ、ゆかりんの表情を確認するのはむつかしそうだ。
同行者にペンライトを借り、つけたり消したりしながら待つ。
開園前の場内には男性ボーカルの曲が流れている。
なんとなく本人の曲が流れると思っていたので違和感。そういうものなの??
疑問に思いながら開園前の注意事項が始まる。
「声を出しての声援、ひとりごと等はおやめください」
ひとりごと…。
ブツブツ言うのを想像したが、おそらくゆかりんのMCに返事するなっていうことだろう。多分。きっと。
場内が暗くなり、ステージに光が集まる。
拍手をしながら皆立ち上がる。大歓声がないのが不思議な気分。
ペンライトの振り方は前の人のマネをすれば大丈夫だろう。フェスでもそうだったし。
振り方わからないけど、参加するならちゃんと振りたい。
ステージ上のゆかり嬢から、こんな後方の上方の末席なんてどうせ見えないとは思う。
でも一生懸命楽しませてくれる人に対して、こちらも精一杯楽しんでいる姿は見てほしい。
ぼんやり突っ立っている姿はお見せしたくない。
前の人のマネをすれば大丈夫だろう。フェスでもそうだったし。
聴いたことのある曲が流れる。みんなペンライトを振っている。僕もぎこちなくペンライトを振る。
ここで大問題発生。
二つ前の席の方の動きが他の方と違うのだ。
ヲタクダンスなのだ。
生で初めて見た。
これをマネするわけにはいかないし、そもそもマネできそうもない。
もっと遠くだ。もっと遠くを観なければ。
……その前の人もおかしい。
ゆかりんの踊りを完コピしているのだ。
踊りが無い時はひたすらジャンプしながら手を振っている。
そのジャンプ力がものすごい。
おそらく40cmぐらいの高さになるだろう。後ろの席のダンサーと同じ高さまでくる。それを延々と繰り返すのだ。
フンフンディフェンスを実写化したらこんな感じになるのだろう。
慌てて回りを見まわす。
アリーナ席から近くまで見渡す。
が、いない。
前の席2人のような人は全体を見渡してもいないのだ。
ジャンプしている人はちょこちょこいるようだが、ジャンプというより屈伸に近い感じに見受けられる。遠いからそう見えるのかとも目を凝らすが、やはり高さはなさそうだ。
オタクダンスに関しては、一切それっぽい方は見受けられない。
オンリーワンにしてナンバーワンだ。
別に一切合切迷惑は被ってない。
むしろ、それだけ楽しめている姿がうらやましくもある。
が、ゆかりんを見ると、特大のワイプのように視界の1/4を二人が占めるのだ。強烈に意識を持っていかれるのだ。
ゆかり嬢を観ているのか二人を見ているのか判然としないまま曲は進む。MCもちゅぱりんも楽しく大満足。
手拍子(クラップっていうの?)だけで曲に合わせていくのがすごい楽しい。
コールの一体感も聞いてて楽しい物だったが、ゆかりんの声が余すことなく耳に入ってくるのが非常に心地いい。
それにしても、なぜ皆一様にクラップできるのか不思議。一斉に立ったり座ったりできるのかも不思議。教本でもあるの??
「嘘」という曲、だんだんゆかり嬢の声が震えてくる。
泣きながら歌ってる?
後で同行者に聞いたら、よく泣きながら歌っているそうだ。
"私を好きじゃないあなたでもいいから
もう会えないよなんて言わないでね"
”あなたを好きじゃない私になれるなら
サヨナラの言葉も怖くないのに”
気持ちが籠る様々な経験がおありなのだろうか。涙声も相まって非常にいい曲だった。
途中から、急遽用意してくれたというモニターも出てきて、ゆかりんの表情も見えるようになった。
ゆかりんさ、上ばっかり見てるの。
MCでも会場の高さにビックリしたと言っていたが、一番奥の席までしっかりと届けたいと思ってくれているのだろうか。本当に上ばっかり見てるの。
こういう優しさと、愚痴は言うけどファンには甘えない姿勢が、年齢以上の年月を姫として君臨し続けられる理由なのかなと、素人なりに考えてみた。
ライブも終盤に差し掛かり、知っている曲が続く。
無言なのに大盛り上がりの会場、盛り上がりすぎて視界の1/3を占めるまでになった前の席の二人。たまに動きがシンクロする。壮観。ゆかりんに伝わってるといいね。苦笑いしそうだけど。
最後の曲が終わり、暗くなるステージ。
予定調和のアンコールが始まる。クラップで。
これがさ、アンコールって聞こえるのよ。
手拍子なのに。
しかもさ、アンコールまで予定に入ってるじゃん。基本的に。
アンコールあるのわかってるじゃん。みんな。
なのにさ、薄暗いステージ上で人影が動き出すと、手拍子がどんどん早くなっていくの。もうアンコールって聞こえないの。
みんな大好きじゃんね。姫のこと。
ステージに明かりが灯り、総立ちでアンコールが始まる。
みんな大興奮で、でも声援送れなくて、拍手しなきゃだけどペンライトも振らなきゃで、初めて会場が乱れるの。
一つじゃないみんなの姿。めっちゃ愛を感じた。
アンコールも終わり、バンドの皆さんもダンサーの皆さんもはけて、ゆかりんが会場に手を振る。
20以上もあるブロック、4つの階層全てに手を振る。
手でライトを遮って、目を細めて一番遠くまでしっかり視認して手を振ってくれる。
「東京は緊張するからイヤだー!」
なんて言っていたのに、笑顔も忘れてしかめっ面で各ブロックを見てくれるゆかりんがとってもいとおしかったし、そんな彼女を長い間見続けてきたファンがうらやましかった。
恥ずかしかったけど、頑張って手を振った。1画素でいいから彼女の視界に入っていたらいいなと思う。
また追加公演で皆様とゆかり姫に会えるといいな。
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