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あなたは今の仕事に満足しているか?悪意の創造主に造られた職業選択の自由がない世界の魔王討伐譚『役職物語』。「おまえは一生”腋(わき)魔道士”だ」と言われたらどうする?

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)
※リンクでご紹介しているのは、『役職物語』を原作にしたリメイク版です。(編集部)

【レビュアー/ 新里裕人

現在、お仕事に就かれている方。

あなたは今のお仕事に満足していますか?

「ぜんぜん満足してねーよ!」

多くの方はそう思っているのではないでしょうか?

「まさに天職!100%何の不満も感じてない。毎日働くのが楽しい♪」

という幸運な方はごくわずかで、大半の方々は今の仕事に何らかの不満を抱えながら、それでもさまざまな条件と折り合いをつけながら、日々頑張っているのだと思います。

その折り合いがつかなくなって「転職」を考えてる方、もしくはすでに「転職」された方も、大勢いらっしゃると思います。
何にせよ、みなさんには自分の職業を「選択」する権利が与えられています。

しかし『役職物語』の登場人物にはそれがありません。

”自分の「役職」を知ったとき、落胆したさ”

『役職物語』はWeb漫画で無料公開されているダークファンタジーです。
http://endelta.jp/gesellschaft/

人々に生まれつき割り当てられた「役職(ジョブ)」を全うする事が運命付けられた世界。

4年に1度出現する「魔王」と、唯一魔王を倒す力を持った「討伐士」との戦いが繰り広げられています。

七階層(レイヤー)に分けられたステージや、ダメージが999とかデジタル表示されるところを見ても、この世界が作為的に造られた仮想空間であることがわかります。

問題は、この世界の「創造主=神」に悪意しか感じられない、という事。

デジタル世界の癖にコンティニューはない。

蘇生の魔法もアイテムもなく、攻撃を受ければ血が吹き出す。

もぎ取られた腕からは骨がはみ出し、内臓がこぼれるグロテスク仕様。

そして、断末魔の一言は……「うんこ」。

愛する人のため命を捧げても、正義のためこの身を盾にしても……。

どんなイケメンも美少女も、賢者も、勇者も……。

「うんこ」とつぶやいて死んでいく。

そういうシステムが組まれているのです。

創造主にとって、この世界の住人はみな「うんこ」に過ぎない……そういう事なのでしょう。

こんな救いのない世界なのに、彼らはログアウトもできない。

ただ自分に割り当てられた役割を演じ続けるしかないのです。

それは「魔王」すらも同じ。

ある日、突然「魔王」認定され、世界を滅ぼすことを義務付けられます。

”難しいですねぇ…「魔王」というものは。悪とは、シンプルでいて実に複雑だ”

そして主人公は「討伐士」。

この役職には大きな秘密が隠されています。

”魔王を倒す人って普通「勇者」って呼ばれるじゃない?どうして「討伐士」なんて呼ばれるの?”

”…勇ましくないから、だよ”

救われない世界にふさわしい、救われない能力を持った主人公の魔王討伐譚、ぜひ読んでみてください。

現在第5章まで公開中。無料で全部読めます!

http://endelta.jp/gesellschaft/

補足1:
表題に書いた「腋(わき)魔道士」は、本編に登場するジョブの一つ。
最大攻撃魔法は「ワキーガ」です。ブルードラゴンは「ワキーガ」でしか倒せません。(どうでもいい)

補足2:
本作の商業誌版に『役職ディストピアリ』があります。
かなり絵が綺麗になっていますが、内容がマイルドになってしまって毒が薄れているのでここは「原典」をオススメしておきます。