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なぜ日本では妊婦に葉酸サプリが普及しないのか?

妊娠を計画したら、葉酸サプリを飲み始めるべきです。
アメリカでは1996年より小麦粉、パン、シリアルなどの穀物製品に「葉酸」と「鉄分」の添加を義務付ける法的葉酸強化を開始し、最も多い先天障害の一つである神経管閉鎖障害を、わずか2年で年間1,000件も減少させる成果を上げています。

この法的葉酸強化は現在では世界80カ国に広がっており、いずれの国でも胎児の先天障害である神経管閉鎖障害の減少が見られます。

一方、先進国の中で唯一、神経管閉鎖障害の発生率が一向に減少しないのが我が日本です。
葉酸強化を採用していないだけでなく、妊婦への葉酸サプリ普及も未だ進まず、重大な先天障害を抱えて生まれる子どもが減少しません。

なぜ日本では葉酸サプリが普及しないのか?法律的な問題を考えてみたいと思います。

妊娠する前から葉酸サプリは飲むべき

2017年、日本先天異常学会は「神経管閉鎖障害に関する声明文」を発表し、葉酸サプリメントの摂取により、神経管閉鎖障害のリスクを減らしましょうと訴えました。
全文はコチラ

この声明文によると、2016年時点で妊娠した女性の葉酸サプリ摂取率は10~20%に留まっており、これが日本が先進国の中で唯一、神経管閉鎖障害を減らせていない原因の一つとなっているとされています。

葉酸サプリと神経管閉鎖障害の関係については、以下の動画で解説しました。

葉酸サプリの普及を妨げる薬機法

日本での葉酸サプリの普及を妨げている要因の一つとして、「薬機法(旧薬事法)による制約」があると、私は考えています。

日本の法律では、口に入れるものは「食品」「医薬品」のどちらかだけです。
葉酸サプリは医薬品ではないので、「食品」という事になります。

薬機法は「医薬品」に関する法律ですので、「食品」である葉酸サプリには関係ないはず。しかし実際には葉酸サプリが薬機法による制約を受けることがあるのです。
それは、「食品」である葉酸サプリが、「医薬品」の領域に入ってくる事を防ぐためです。

日本の法律においては、「食品は食品の領域から一切出てはいけない。医薬品の領域に一切入ってはいけない」という厳格な線引があります。
具体的には「食品(サプリメント)は、医薬品的な効能効果を標榜してはいけない。医薬品的な用法用量を表示してはいけない。」という事です。

一方厚生労働省は、神経管閉鎖障害の予防を目的として2000年に以下の通知を発表しています。

これまでの疫学研究においては、葉酸摂取量が1日0.36~5mgの範囲で、いわゆる栄養補助食品を用いた摂取方法による神経管閉鎖障害の発症リスクの低減がみられている。また、主要国の葉酸摂取の勧告では1日0.4~5mgとなっている。疫学研究において、葉酸摂取量の増加に伴い大きな低減がみられるという関係は認められていないことから、発症リスクの低減に有効である最小摂取量を概ね1日0.4mgであると考え、食事に加え、いわゆる栄養補助食品による1日0.4mgの葉酸摂取の情報提供を行うこととした。
神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性
等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について

厚生労働省みずからが、「神経管閉鎖障害の予防のために1日0.4mg(400μg)の葉酸サプリを摂取しましょう」と通知しているのにも関わらず、葉酸サプリの広告にこれを書くと薬機法違反となります。

葉酸サプリは「食品」であるため、「神経管閉鎖障害の予防」は医薬品的な効能効果の標榜にあたり、「1日0.4mg」は医薬品的な用法用量の表示にあたるからです。

一般に広く周知しようと思ったら、一般企業の力を借りるのが最も効率的です。企業に儲けさせて広告を打ってもらうのが、最も効果的な情報拡散だというのは当然ですよね。

しかし厚生労働省みずからが、その道を断ってしまっているのです。

ちなみに日本ではサプリメントは「食品」ですが、アメリカでは「食品と医薬品の中間」と明確に位置づけられており、カナダやオーストラリアでは「補助的医薬品」と位置づけられています。

日本でも製薬会社の利権を守ることばかり考えていないで、本当に国民の健康を思うのなら、医薬品よりも手軽に摂取しやすいサプリメントの有用性をもう少し認めても良いのでは無いでしょうか。

もちろん明らかな誇大広告で消費者を騙す悪質サプリメントは取り締まる必要がありますが、それに巻き込まれてキチンと根拠の有る有用なサプリメントまで規制されてしまうのは、とても残念な現状ですね。

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