「総合的な探究の時間」において生成AIをファシリテーターとして用い、「テーマの設定」「問いを深める」「仮説を立てる」という3つのステップをサポートさせる授業を実践しました。
「テーマ」と「問い」を設定しなおす
生徒たちは前週の時間で一度「テーマ」と「問い」、「仮説」を設定していて、5W1H法やグループワークで問いを深めるという作業を行っています。
テーマがつまらない、広がらない
領域を「環境問題」に設定したため、出てくるテーマは「地球温暖化」「海洋汚染」「マイクロプラスチック」「生物多様性」あたりで8割り超える感じで、「問い」もありきたりなものになりがちでした。
生成AIと対話しながら「テーマ」を再考する
そこで今回の授業では、生成AIの「会話をシェア」機能を用いてこちらで用意したプロンプトを生徒がコピーすることで会話をスタートすることから始めました。
まずテーマに広がりを持たせるため、生成AIの問いかけに返答しながら「自分の好きなこと・興味あること」を書き出し、それを環境問題に繋げていくというアプローチを取りました。
シェアしたプロンプト
以下のプロンプトを「会話をシェア」する機能を用いて生徒に配布します。
テーマの広がり
このプロセスをへることによって、「スポーツイベントが環境に与える影響とその対策」「ファッションと環境問題」といった、自分の興味範囲で主体的に”調べてみたい”と思えるテーマが多く見られるようになりました。
実習2:「問い」を深める
テーマが決まったら、次のプロンプトで「問い」を立て、深めていきます。
このプロンプトに含まれる、分からなければ「アドバイスが欲しい」と聞くよう促す生成AIに対し、実際にアドバイスをもらう生徒もちらほら見られました。
実際の授業の様子
生成AIのトラブル
今回、作業にあたり生成AIの反応が重く会話が進まないという状況が発生してしまいました。
350人程度の同時アクセス(後に他校で300人程度ほぼ同時に使用していたことが判明したので600人以上の同時アクセス)ですが、「会話をシェア」機能を使って長いプロンプトを多くの生徒が同時に投げることになってしまい、1分当たりのトークン数が上限を超えたのが大きな原因のようです。
「研究校」として、どこに限界があるか探ることも役割の一つと思っていますので、ある程度しょうがないことではありますが、やはりそこで集中力を切らしてしまう生徒が多くなってしまったのは残念なところです。
アンケートの結果
システムの不具合はありましたが、全体としては楽しそうに取り組んでいました。
授業後のアンケートでは、8割以上の生徒が「生成AIがテーマ決めや問いを深めることに役立った」と回答しています。
また、自由記述欄でも約8割の生徒がポジティブな回答をしています。
代表的なコメントとしては
・生成AIが新しい視点を提供し、視野が広がった。
・生成AIとの対話で思考が深まり、理解が深まった。
・生成AIで知らなかったことや深い情報を得られた。
という記述が多く見られ、これに類する回答だけで6割近くになりました。生徒自身が学習に有効なツールであるという認識を持ったことが見て取れます。
逆にネガティブな回答として「生成AIは便利だが、使いすぎると思考力が低下する恐れがある」という趣旨の回答が数件、ハルシネーションにかかわる内容も10件程度見られました。
実践的「教員研修」としての意味合い
一年生の「総合的な探究の時間」は、担任の他にもう一名担当が各クラスに配置されています。9クラスに2名の担当がいるので18名、本校教員の約3分の1の教員が関わることになります。
授業の流れや提示用のパワポ、生徒に使わせるプロンプトなどは私が作成しましたが、事前にプロンプトを試したり、生徒への指示や個別のアドバイスしたりという行為を通して、先生方が生成AIに対する理解を深める機会にもなりました。
自身の授業での使い方を検討し始める先生もいて、この面でもある程度狙い通りの効果が得られたと思っています。
会話の実践例(私が試した会話)
実習1:「テーマ」の再考 実施例
実習2:「問い」を深める 実施例(会話の続き)