一ヶ月間、毎日小説を投稿してみたまとめ

※これは個人メモのようなものです

実は、というほどでもないですが、ちょうど先月、9月1日から9月30日までカクヨムさんに以下の小説を投稿していました。

作中時間でも恋をした9月1日から恋が終わる9月30日まで1日ずつ進むという構成になっていて、ちょうど30日で完結させるという目標で毎日投稿していました。

実は、9月1日の時点で書き溜めていたストックは僅か3日分で、大まかな全体の流れの構想はあったものの、何日に何を描くかはほとんど決まっていない状況での見切り発車でした。そこから1日におよそ3000字~4000字の一話完結のエピソードを描きながらクライマックスへ向かっていくという、自分としてはかなりむちゃくちゃな強行軍をやっていたのですが、なんとか30日間、なんとか隙間なく走り切って無事完結させることができました。その物量、1ヶ月で約11万5千字。普段5000字程度のノート書くのにすら、2週間たっぷり使っている自堕落遅筆野郎としてはかなり頑張りました。

ちなみにその間、特に本業を休んでいたということはなく、普通に日中は本業にいそしんでいたわけですが、さすがに無影響とはいかずも、せいぜい若干の支障をきたしたというレベルで抑えられたので、その点もよかったと思います。

以下、このチャレンジをやってみた背景だったり、やってみてできたこと、できなかったことなどの振り返りをやってい聞きたいと思います。

何でやろうと思ったのか

自分はとにかく創作物における失恋描写が好きで、noteでもたびたび失恋シーンについて語ったり、負けヒロインについて考察していたりしているのですが、いつか自分で失恋への想いを詰め込んだ物語を描きたいという野望がありました。実際、これまで短編だったり二次創作だったりを書いてきたことはあるのですが、いつか長編、しかも一次創作でひとつの失恋をじっくり描いてみたかったのです。

しかし、先にもいったように自分は大変に自堕落で物事を後回しがちな癖がある上に、自己批判が激しくて、すぐに思考が袋小路に迷い込む性質があったため、大抵はやろうという痕跡だけ残して放置……という結果になるのが関の山でした。

さらには別に創作に命を懸けている身ではなく普通に本業がある身ですし、普段は古今東西あらゆるジャンルの失恋作品を追うという大義名分(?)もあったため、やらない言い訳も無限にあった状況でした。

でも、そうやって足踏みばかりしていては一生進歩しないわけで。このまま野心だけ拗らせてモンスターになるのも嫌だし、そもそも一作目で満足ができるものなんてできるはずもないし、実際にやってみなければ得られないこともあるはずだし――ということで、そんな自分の状況を変えたいと思って、絶対に自分が逃げられない状況に追い込むことを目指しました。

そうして出てきたアイデアが、期限を決めて毎日投稿に挑戦してみるというものでした。1人の少女が失恋に至るまでの30日を毎日描くというシナリオの骨子は、こんな打算的なモチベから来ています。

やってみてよかったこと

時間内に作業を終える能力が上がった

普段は自分のペースで書きたいものを書いているので、締め切りなんてものとは無縁なのですが(同人作業はやったことないです)今回の設定では毎日20時に投稿しなければならないという強烈な制約が入ります。

なので、そこまでに話の内容を考えて、起承転結の構成をしっかりまとめて、最後に描きたいテーマを決めて、文章に起こすという作業を終えなければなりません。たとえ話全体の骨子が決まってようが、面白いオチを思いついていようが、全シーンの全行動をちゃんと決めて、情景描写まで含めたディテール部分まで描ききらなければ意味がないのです。

とはいえ、普通に本業もあったし人と会う約束もあったし、なんならTRPGのGMを一回やるというイベントもはさんでいたので、全ての時間を執筆に使えるわけではなかったのですが、それゆえに空いている時間を効率的に作業に充てる必要がありました。日によっては全く小説に割けない日もあったのですが、そこはスケジュールをうまく前倒しして先の部分まで書いたり、予定を見据えて作業するという部分も上手くなったように思います。これまではPCでしか執筆作業はしてこなかったのですが、ちょっとした移動時間にスマホで執筆するという芸当も今更身につけました。

とにかく考えがちな性格なので、全てのシーンをしっかり緻密に考えて書こうしてしまう性質があるのですが、そんなことをしていては絶対に終わりません。登場人物の思考の深い部分のような、考えないとやれない部分と、設定などの背景の描写や考えなくてもできる部分を切り分けて、効率よく作業を進めるということも、かなりできるようになったと思います。

とはいえ、当然、考えなくてもやれそうな部分であっても、考えなしに書くと推敲必須な粗末な仕上がりになります。なので、最終的には意識のはっきりした状態でしっかりとシーンを振り返る必要があるのですが、そのための雛形を無理矢理にでも創っておくだけで、再構成の効率が段違いでした。とにかく手を動かして形だけでもそろえておくというプロセスをうまく活用できたのが、自分の中ではかなり大きく得られたものでした。

ごちゃごちゃ考えずにとにかく形にするという、今回自分がやりたかったことはかなり上手くやれるようになったなという気がしています。

描きたいと思ったものは全部描けた

この企画を始めた時には、全体のふんわりした構成と、最後の数日の展開だけが決まっているという状態で始まりました。見切り発車もいいところですね。

それでも、なんとなく入れたいと思っていたシーンや展開は当然あって、それは事前のメモに「描きたいもの」として入れていたのですが、そこで描こうと思っていたものは全て詰め込めたかなと思っています。

また、全体のメインテーマである「片想いゆえの痛さ、切なさ、狂気」については特に後半部分にたっぷりと詰め込むことができて、自分としてやりたかったテーマは余すことなく消化できたと思っています。

もっとも、それらが整理されてひとつの物語として完成していたかは別の話で、それは後の反省点にもつながっていくのですが、それでも自分がやりたいと思っていたことを完遂できたという点ではよかったと思っています。

やりきったという自信が手に入った

ぶっちゃけ、これが一番大きい。

自分は基本的に後ろ向きな人間なので、何かする時に「でも、失敗したらどうしよう」というネガティブな仮定から入ります。そんな身としては「でも、一ヶ月毎日3000字書くという作業をやろうと思えばやれた」という成功体験を手に入れられたことは非常に価値がありました。

今後、何か創作したいとなった時にも、一度でも11万字の物語を完結させたという経験があることは、大きな力になると思っています。

読んでくれる人への感謝

まだ長編を書いたことのない人間が手探りで、それも突貫工事で始めている作品なので、評価されることはありませんでしたし、感想も全くと言っていいほどもらえませんでした。そこについては、初めから上手くいくわけがないと割り切っていましたし、今回はとにかく自分の中に成功体験を作るという箇所に目標を据えていたので、特に凹むということはなかったです。このあたりの目標設定を無駄にハードルを上げなかったのも、最後まで続けられた理由の一つかもしれません。

とはいえ、さすがに一ヶ月毎日書いてると心が折れかけることというか、諦めたくなることがありました。一日ぐらい抜けてもいいんじゃないかと思うことも何度もありました。

でも、こんな自分の手探りの未熟な小説に毎日アクセスして読んでくれる人がいたんですよね。特別感想をくれたり話題にしてくれたわけでもないのですが、アクセス履歴を見ると、更新のたびに毎日読んでくれている人が数人いたんですよね。

1日3000字以上のボリュームとなると、書く方も大変ですが読む方も時間とエネルギーを使うはずで、自分の作品にわざわざ人生の一部を割いてくれる人がいるという事実が嬉しかったですし、その人たちを裏切れないという部分が、ギリギリのところで自分を踏みとどまらせる大きま原動力になりました。

顔も名前もわからないですが、深く深く感謝しています。

やってみた反省点

ここからは割と内容に踏み込んだ話になります。ここをちゃんと振り返らないとやった意味がないと思いますし、この反省を踏まえて次はもっと良いものが作れるようになるといいなと願っています。

序盤の動きがなさすぎる

全体の構成の話になります。

この作品はおよそ一週間ごとに話のフェーズが変わっていくようにできていたのですが、「片想いをしてから、最初に声をかけるまで」「声をかけてから普通に会話できる仲になるまで」「顔見知りから友達と呼べるようになるまで」「相手に想い人がいるとわかって失恋するまで」という4つの流れになっています。

シンプルに最初の2週間いる? という話ですね。登場人物がそもそも多くない中、声もかけられない相手に独り相撲しているところに1週間使っているのは、絵としてあまりに動きがないし、さすがに間延びがひどい。個々のエピソードで何かしら動きはあるよう意識はしていたのですが、大筋が進まないのではあまり意味がないと言った感じ。

特に長編の序盤という、読者が作品の方向性を見定めていく段階で動きがないのは致命的だったと思います。普段、キャラ付けの部分を他にぶん投げて済ませてしまう二次創作との一番の違いだと思います。

あと、序盤は「普通の少女の普通の日常」という、シンプルに特徴がない物語を描こうとしているため、濃いキャラ付けで話を面白おかしくするのにも限度があるし、とにかく絵が地味なんですよね。この内容で面白くするというのは、自分の現在の力量を見据えても無茶なことしているなと思います。「平凡」にこだわりすぎて、文化祭の実行委員(ヒラ)というあまりに地味な境遇なのもさすがにメリハリがなさすぎなたなと思う次第。

この設定の縮こまり方は、個々のエピソードを考えていくうえでもものすごく足を引っ張りました。

コンセプトがぶれた

この作品は「片想いしている少女の日常を描く」という部分と「叶わない恋をして失恋に至るまで、負けヒロインとしての生き様」とという2つ大きなコンセプトがありました。……と言うと聞こえはよいですが、振り返ってみるとこの2つのコンセプトの間でふらついて中途半端になってしまった印象があります。具体的に言えば、彼女の恋を「普通の人の普通の素朴な恋」として描くのか「絶対的な運命を前にして決して届かない悲恋」として描くのか、という部分が迷走した印象があります。

前半は「とるにたらない普通の恋」を描くという部分に重きを置いていて、「彼」も普通の人として描こうとしていますし、惚れたきっかけも些細なもの。。そのため、食べたものの話や日常のくだらない話も織り交ぜつつ、軽妙なノリで「普通の物語」を描くことに力を入れています。先に触れた、序盤の展開の動きの少なさもここに起因しています。

一方で、後半は「彼」との関係が深まる中で、彼の特別性を際立たせて、叶わない恋であるがゆえの切ない慟哭や狂気的な衝動など、痛くも美しい部分に焦点が当たっていました。負けヒロインーーすなわち「特別な物語の脇役」として主人公を描こうとしています。つまり、片想いに対するスタンスが全く異なっているんですよね。

前半と後半でテイストが変わること自体は、物語の構造としてよくあると思うのですが、この2つに全く連携がないのが悪い。後半に力点を置いた「片想いの慟哭」に焦点を当てるのであれば、前半は前半で「脇役であること」にしっかりと光を当てていくべきで、彼の存在を希釈して日常にばかり目を向けていくのは、話の目的が異なっています。

作品を書き始めた時には後半の詳細までは決めていなかったという点はあるのですが、それでもラストの展開は決まったいたのだから、そこに至るように「何を描きたいのか」の部分はちゃんと見据えて全体を作っていかなければならなかったと思っています。

普段、短編を書いている時は「中盤→終盤→前盤」の順番で話を書いていくことが多く、見せ場から話を逆算していくやり方が好きなのですが、今回の形式だとその順番で話を描くことはできません。(個々のエピソードはそういった順番で作られています)長編でその話づくりをやるのであれば、もっとテーマを見据えて計画的に行うが必要があると実感させられました。

登場人物の名前について

これは一番のやらかし。

この作品は「どこにでもいる少女の物語」にしたいと思って、登場人物に名前を敢えて出さないという作りにしようとしていたのですが、これがかえってぼやけた話の作りになってしまったと思っています。固有名詞がなさ過ぎてもなんだか他人事みたいになってしまうなと、途中になって気が付きました。

古来より登場人物の俗人性を希釈するために「名字だけを設定する」というよく知られた手法があるのだから、それに乗っかればよかったのです。さらに悪いことに、中途半端に名前を出したり隠したりと露骨に迷走した部分は、もう明確な反省点です。

推敲の不十分さ

これは自分の能力の限界というところもあったのですが、一話一話はある程度推敲もちゃんとして一話の中では矛盾がないように話の筋を整えていたのですが、過去の話まで見返している余裕はありませんでした。それもあって、一日ごとに細かく設定の矛盾やキャラ設定のぶれがあったりしています。

これは、途中からほぼ毎日アドリブでエピソードを考えていた余裕のなさも含めて、自分の計画性のなさが招いた部分でもあるので、反省点です。全体の構成をぼんやりとしたまま考えていて文章化していなかったので、細かな設定や伏線について手軽に確認できるようドキュメント化しておく必要を感じました。

兎にも角にも、長編は短編と違って全体を見ながら微調整と言うことはできないので、もうちょっと広い視点を持って計画的にプランを練る必要があるなという学びがありました。

まとめ

1か月間1つの物語に向き合い続けるという挑戦は、自分としてもかなり大きなもので、体力と精神をかなり削り取るものではありましたが、その分、それを乗り越えたということが大きな自信になりましたし、内容面についても様々な学びがありました。

次、何か創作をするときはここで得た自信と反省を活かして、もっと面白いと思ってもらえるものを届けられるはずなので、もし、どこかで見かけたら、チラッとでも見てもらえたら嬉しいです。

失恋や負けヒロインに対する考察も、引き続き精力的にやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

とりあえず、9月の間完全に視聴が滞っていた夏アニメを一気に見て、失恋シーンの考察に入りたいと思います。

この文章も本来なら2週間とかかかるはずだったけど、昨日イースをクリアしてから1日で書き終えられました。成長!

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