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【負けヒロイン】2023年秋アニメ失恋シーンまとめ

こんにちは。
年末年始とバタバタして機会を逃してしまっていましたが、2023年冬アニメの失恋シーンの振り返りになります。
……といっても、自分の範囲で見つけられたのが1つだけだったのですが。
それでも、素晴らしい演出と物語の片想いの終着点が描かれていました。

ここに載っているもの以外で、自分が見逃している作品などありましたら是非お知らせください。
ではやっていきましょう!

『アンデッド・アンラック』4話より ジーナ・チェルシー

アンデッド・アンラックはジャンプで連載されているバトル漫画のアニメ化作品。
不死の能力を持つアンディと不幸の能力を持つ出雲風子が、とびっきりの不幸でアンディに死をもたらすために様々な困難と闘っていくバトルアクション漫画です。
作品の中心となるのは「不死」「不幸」などの何かを否定する形で発言する否定能力とそれを保有する否定者と呼ばれる存在。そして、その否定者で構成されるユニオンと呼ばれる組織です。

ジーナはユニオンの一員であり、アンディと風子が定員のあるユニオンに入るために殺さなければならないと指定されたターゲットです。
そんな彼女ですが、日本のJKの制服のようなデザインの服に身を包んだ、見た目相応の少女のようなキャラクターとして、アンディと別行動をしていた風子の前に登場します。

「変わらないものが好き」と言って、水彩絵具で風景画を描いていた彼女。彼女が絵を描くのは、目の前の景色を永遠に変わらないものとして残すためでした。
そして、意気投合した風子に「変わるものと変わらないもの、どっちが好き?」という問いかけを行います。
それに対して、風子は長年の引きこもり生活から連れ出してくれたアンディへの困惑と愚痴、そして感謝を語りながら「変わっていくものが好き」と答えます。
二人のスタンスの違いを絵を通じて語る印象的なシーンですね。負けヒロインとはいつだって対比です。

風子の言葉を聞いたジーナは「若くって青くって甘い言葉……そんな言葉なのに正しく聞こえるのは、私が老けたからかな?」と言いながら、湖の上に立ち、自らの正体を明らかにします。
彼女は不変-unchange-の能力を持った否定者で、アンディと共に追いかけていたターゲットその人でした。

風子のピンチにアンディも駆けつけます。
アンディはジーナのことを知っているようでした。
というのも、ジーナは50年前にアンディを捉えた「見えない壁を作る能力者」その人だったのです。

アンディを捕らえたのは16の時であり、実年齢は66……それなのに彼女の外見は50年前から変わらぬ若々しいものです。
本人は「永遠の16歳」と自称していますが、これは組織のアンチエイジングと能力で固めた厚化粧など、本人の努力によるものです(不変の能力は自分自身には適用できない)
その姿は、彼女の変化に対する恐怖心の表れとも言えます

あいさつ代わりに一撃を交わし合ったアンディとジーナ。
ジーナは風子に「デッドちんを先に好きになったのは私」と宣戦布告をします。

50年前にアンディを捕らえたジーナ。
牢屋の中に幽閉されるアンディに罪悪感を抱く彼女でしたが、アンディはそのことを気にも留めず「ここに居たら色んな死に方を試せる」と悠然としています。
そして、「ここを出たらまたやろう、その時は俺が勝つからよ」と啖呵を切る彼の姿にすっかり惚れ込んでしまいました。

彼女がアンディのどこに惹かれたのかははっきりとは語られませんが、閉塞的な毎日の中で希望を持って変化をし続けようとしている姿が、諦観に満ちた彼女の不変な毎日に光を与えたからではないでしょうか。

そして、10年後に彼が脱走してから40年。
ようやく再会できたアンディに対して、ジーナは再び首を捕らえ、今度こそ永遠に自分の側にいてほしいと想いを打ち明けます。

「胸でアンディを誘惑している」と風子に対し嫉妬し、自身の不変な胸を誇る一幕もありつつも、彼女は「空気の変化を否定し見えない壁を作る」という攻防一体の能力で二人を追い詰めます。
そして、風子に向かって、再び「変化しないもの」への想いを語ります。

「私は変わりたくない。ずっとあの時のままでいたい。ずっと好きな人と一緒にいたい。どれだけ他の人を傷つけても、組織に居座ってずっと彼を追いかけていたい」

彼女の心は、50年前、牢屋ごしに過ごしたあの時間のまま止まっていました。
捕らえたアンディに謝罪していたことや風子に組織に入る覚悟を問い正していることからもわかる通り、彼女は過酷な任務を強いられ殺人も平気で行うような組織の在り方とは全く相容れない、心優しい女性です。
どれだけ心を殺して働いても変わらない世界に絶望した彼女は、唯一平穏を感じられたアンディとの一時に救いを求めていたのかもしれません。
自らの心が諦念や絶望に染まっていくという灰色の変化を止めてくれる存在が、アンディとの想い出だったのです。

「最大の変化は死、変わりたいなら勝手に変わって」といって風子にとどめを刺そうとするジーナに対して、アンディは「死」という変化の良さを認めつつ「だがその死はオレのだ」といって風子の攻撃を止めます。
変化の果てにある死という存在に対するスタンスのすれ違いもまた切なさを加速させます。
風子を惚れさせて抱いて、最大の不運で死ぬという夢を語るアンディ。いつだってアンディは死という変化のために前を向き続けていました

変化のために楽観的に戦い続けるアンディと、世界に絶望し変化を諦めて過去にすがるジーナ。
心のどこかで「変化」という救いを求めていたジーナが、アンディに惹かれたのはそう言った部分なのではないでしょうか

呼吸するための穴という空気のバリアの弱点を突かれ、そのまま風子の不運の力でレーザー攻撃を食らうジーナ。空気のバリアは光もまた弱点でした。
そしてジーナは敗北し致命傷を負います。
彼女の能力が解けて、変わらない若さを生み出していた厚化粧にもヒビが入ります。

そんな彼女に対し、アンディは「楽しかったぜ、またな」と声をかけます。
あれほど変化を嫌っていたジーナでしたが、死という変化へと向かっていく彼女の表情は晴れやかなものでした。

「ずっと変わりたかった」と本音を吐露するジーナ。
目を背けていた世界が開けていくかのように、彼女の顔を月明かりが照らします。
殺戮の日々とそれでも変わらない世界を前に、「変わらないという正義」を信じこむことで彼女は自身を保っていました。
そんな彼女が、変化する世界の希望を見せてくれた風子に敗れたことは、彼女の気持ちを氷解させます。

変化を受け入れても、乙女心は複雑なもの。
アンチエイジングが解け醜くなっている私を見ないでとジーナは懇願しますが、アンディはそんな彼女を抱きとめ、「シワの数でお前の魅力は変わらない」と伝えます。
ジーナはその言葉を聞くと満足げな表情で、恋心と共に走り続けたその生涯を終えるのでした。
最愛の人に自身の変化を受け入れてもらえたことが、彼女の救いだったことで祖父。

ジーナの当初の「二人で不変の日々を歩みたい」という願いは届くことはありませんでした。
しかし、それは変化を恐れ永遠を望んだ彼女の願いです。
ジーナは未来に希望を抱いて、変化を恐れないアンディの姿に惹かれていました。
その意味するところは、本心では彼女は変わりたかったし、変わりゆく世界で瞬く星空を彼と共に見たかったのではないでしょうか。
それこそ、風子が絵に描いたように。

アンディはそんな彼女の本心を引きずり出したうえで受け止めてくれました。
それは、彼女の願いを背負って歩んでくれるというサインでもあります。
共に歩むことはできない、叶わぬ恋ではありましたが、それでも幸せな恋だったのかもしれません。

なお、実は原作では色々とあって、ここで死亡したと思われるジーナにも色々と起こるのですが、それはまた別の話。
ともあれ、このジーナの物語は、この形で美しいなあと思うのでした。


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