なにものにもなれないわたしから愛をこめて
わたしは、なりたかった職に就けなかった。
なりたいものはあったけど、実現できないと早々に見切りをつけて諦めた。早い話が逃げたのだ。
いろんな理由をつけられるけど、楽をしたかったからというのが多分大部分を占める。
突然だが、わたしの就職活動を中々に難航した。
今まで適当に流れるままに生きてきたからそのツケだろうか。そんな楽をしたがるわたしを面接官の皆さまは、見抜いていたのだろうか。わからないけれど、受けたところは尽く落ちた。なりたいものになるには難しいのだと、初めて現実を目の当たりにした気分だった。
行きたかった職種の会社はそれこそ100近く受けた気がするけれど、最終面接でみんな落ちた。そもそもなんで面接が何度もあるんだ!1回目の面接は大体通るのに!と文句のように独りごちたのも数え切れないほど。
周りの子たちが就職先を決めていく中、全て手からこぼれ落ちていくようになにも引っかからないわたしは当時ノイローゼ気味だったし、どうしようもない焦りを覚えていた。
「空から内定降ってこないかな」
なんて非現実的なセリフが口癖になるくらいにはヤバかった。
もういいや、と見切りをつけたのは大学4年の夏休みだったと思う。
親に言われて、選んだのは所謂お堅い職種と呼ばれる部類。そもそも、親からは、わたしのなりたいものより給料などが安定している職に就いてほしい、という希望をずっと聞かされていた。
就職活動の路線を変えてから、抱えきれない程度には内定をもらえた。なりたいものではなかったけど、ホッとした自分もいた。焦りは消えていたし、漠然とこの先も生きていけるなぁ、と思ったのを覚えている。
でも、どこかで燻っているものはあった。
ところで、これは持論だけど、最終的に自分で決めたくせに、誰かの意見を取り入れて決めた道はその誰かのせいにしやすい。やっぱり親に言われて決めた職種だから、なんてよく言い訳にした。
わたし自身ペラペラであちこち流れるままに生きてきていたので、お堅い職種って柄じゃないのは薄々感じていたけど、働きだしてより実感した。仕事ってこんなにも楽しくなくて充実感もなくて達成感もないものなの?
わたしは学生時代バイトをめちゃくちゃ掛け持ちしていたので多少なりとも働くことへの楽しさや、充実感、達成感を知っているつもりだった。もしかして、これがバイトと正社員の違い?なんて思ったけど心持ちの違いだと思う。
バイトはバイトで全部自分のやりたいことだったし、勿論その中にはやりたくない業務もあったけれど、やり遂げたらそれなりに達成感を感じた。
働きだして何年か経ったけど、未だにそういったものは得られない。
そのひとつに、服装がある。というか、先程までのは全部長過ぎる前置きで、ここからが本題なのだが、わたしは服装で割と個性を出すことに喜びを感じるタイプの人間である。
個性と言ってもとびきり奇抜な服を着るとか、世界でひとつだけの服を着るとかではなく、自分の好きなものを好きなように着るという意味を指すのだけど。
働きだして、服装を指定されるのは正直1番と言っても過言ではないくらい苦痛である。スーツとか、オフィスカジュアルとか、やれロングスカートはダメだの、色が派手すぎるのでダメだの、ワンピースはよろしくないだの。面接のとき服装は業務に支障をきたさなければある程度自由です。と言われたはずなのに自由とは?という気持ちである。
個性が殺された。
そう感じざるを得ない環境にいた。欲しくもない服を買って、着たくもない服を着て、あーあ、このまま1週間のうち5日間はこういう日々を過ごすのか……地獄だな、なんて漠然と考えて生きていたら、残りの2日も別にいいや、という気になってしまった。クローゼットが好きでもない服で占拠されていくというのは、割と心が死ぬということを知った。
休みの日が、パジャマで1日過ごしてゴロゴロしながらスマホいじってたら終わる。そんな日々が続く。あぁ、わたしめちゃくちゃ毎日無駄にして生きているな、と実感してもなにかを行動にうつすわけでもなく。
そうして、運命の日が来るわけである。
別に運命の日と言ってもなにか特別なことをしていたわけではなく、その日もパジャマでゴロゴロしながらTwitterをいじっていただけだ。しかし、TLでとんでもない衝撃の出会いをしてしまう。
フォロワーがRTしたfoufouの服である。
衝撃的だった。
絶対に欲しい。着たい。そう思ったのはもしかしたらわたしの人生で初めてだったかもしれない。
心が生き返った気がした。そして、突然パジャマでいることに嫌気が差した。わたしの制服はパジャマではなく、この服にしたい。そんな気持ちが湧いてきたのだ。
それからわたしはfoufouを通してteshioniというサイトに出会う。もしかして、ここは夢の国か?
知らない人は1度覗いてみてほしいのだけど、幸せが詰まった世界を目に見える形にしたと言っても過言ではない。
買うと決めてから、わたしはそもそも試着をしないと服が買えないタイプ(体型的に)の人間なのだが、着られる服ではなく着たい服を買いたいという強い感情に突き動かされて人生で初めてメジャーを片手に自分のサイズを図り、サイトのサイズ表とにらめっこして購入に至ったわけだ。ここ数年で1番充実した時間を送ったことを報告しておく。
届いたteshioniの文字が入ったダンボールにはどうしようもないくらい愛おしさを感じた。
オンラインで服を買ったのは初めてだったので、緊張気味に箱を開けると、幸せが詰まっていた。
「あ〜好き」
興奮冷めやらぬまま、とりあえず着て、回ってみると広がる裾にトキメキがあふれる。なりたいものにはなれなかったけど着たい服を着たらなりたい自分になれた気がした。
全然話がまとまらないけど、人生なにがあるかわからないよね。
ちなみにわたしは5桁する服を買ったのは初めてなのに気づいたら6桁は注ぎ込んでいて、こうして今の安定職で働く理由を見出したわけだ。
今日も好きなものの為に働くぞ。
これはRe:porisの服🌾